今年も最新の「最低賃金」が適用される日が近づいてきました。毎年ニュースにも大きく取り上げられる、企業・労働者ともに関心の高い話題です。とはいえ、制度の仕組みがよくわからないままに、「とりあえず自社で最も低い賃金だけを見直している」という企業もあるかもしれません。そこで今回は、最低賃金の基礎知識、最低賃金に対応する際の注意点を解説していきます。
「最低賃金」が今年も全国で約30円引き上げ。最低賃金の種類・定義と“引き上げ対応の注意点”を知ろう

「最低賃金」の種類と定義とは

「最低賃金」とは、使用者が労働者に支払わなければならない賃金の最低額を定めたもので、「最低賃金法」という法律で定められています。最低賃金には、「地域別最低賃金」と「特定(産業別)最低賃金」の2種類があります。「地域別最低賃金」は各都道府県で1つ、「特定(産業別)最低賃金」は特定の産業で設定されています。もし、地域別と特定(産業別)のどちらの最低賃金も適用される場合には、高い方の最低賃金が適用されます。

地域別最低賃金は毎年見直されるため、ニュースになりやすく認知度も高い一方で、特定(産業別)最低賃金はあまり知られていないかもしれません。自社に特定(産業別)最低賃金が適用されているのかどうか、知らない方はまずは確認してみてください。

最低賃金を上回っているかどうかは、各種手当も含めた賃金総額で判断されるわけではありません。実際に支払われる賃金から以下のものを除外した額で判断します。

【最低賃金の対象外の賃金】
●臨時に支払われる賃金(例:結婚手当、災害見舞金など)
●1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金(例:賞与など)
●所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(例:時間外割増賃金など)
●所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金(例:休日割増賃金など)
●午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(例:深夜割増賃金など)
●精皆勤手当、通勤手当、家族手当


つまり、「残業代や通勤手当を含めれば最低賃金を上回る」というケースは認められません。また、「精皆勤手当」、「通勤手当」、「家族手当」などは、これらの名称と完全に同一でなくとも、実態として同じ意味合いの手当であれば対象外です。

「地域別最低賃金」はどの地域のものが適用されるのか

本社だけでなく、各地に拠点がある企業では、事業所のある都道府県の「地域別最低賃金」が適用されます。例えば、本社が東京、支社が大阪にある企業では、東京本社の従業員には東京の最低賃金が、大阪支社の従業員には大阪の最低賃金が適用されるということです。

近年、テレワークを導入する企業も増えてきました。この場合、テレワークを行う場所がどこであれ、その従業員が所属する事業場がある都道府県の最低賃金が適用されます。例えば、北海道在住の方が東京の企業に採用され、完全テレワークで働くようなケースでは、東京の最低賃金が適用されます。また、派遣労働者については派遣先の事業場の最低賃金が適用されます。

多様な働き方が広がっている今、前述のようなケースで「どの都道府県の最低賃金が適用されるのか」は、ぜひ押さえておきたいところです。

毎年の「最低賃金見直し」対応時の注意点

●時給制ではない従業員の賃金

最低賃金は時給で公表されます。そのため、月給制や年俸制の方の賃金が最低賃金を上回っているかを把握するためには、「時間当たりの給与」を計算する必要があります。計算のひと手間を挟むため、直感的に最低賃金との比較がしにくいことから、意識的に見直さなければ危険です。

●各割増賃金

最低賃金の引き上げによって支給する賃金が変わる場合、時間外や深夜、休日の割増賃金の計算の基礎となる賃金が変わります。また、固定残業代を導入している企業では、その金額が最低賃金を下回った金額になっていないかも確認する必要があるでしょう。

●求人時の賃金

最低賃金ギリギリで求人を出している場合、出した当時は問題がなくとも、その間に新しい最低賃金が適用されてしまうと、違法な賃金で求人を出していることになってしまいます。また、求人を出してから入社までに最低賃金が引き上げられた場合、求人時に提示していた賃金を支払うと最低賃金を下回ってしまうこともあり得ます。

●他の従業員とのバランス

最低賃金の改定に対応するために該当の従業員の賃金だけを上げていると、他の従業員との賃金差がなくなってしまうことにも注意したいです。法律上の問題はありませんが、他の従業員のモチベーションは低下しかねません。最低賃金を下回らない対応だけをするのではなく、全体のバランスを確認することも大切です。

「地域別最低賃金」は年に1回見直され、毎年10月を目安に最新の制度が施行されています。毎年きちんと情報収集を行い、知らないうちに最低賃金を下回っていることがないよう対応していきましょう。

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