「文系のコミュ力、理系の論理力」は過去の話?

学生は自身の強みをどのように捉えているのでしょうか。就職活動でアピールしたいと考える能力について、複数選択で回答してもらった結果が[図表12]です。

最も多かったのは「コミュニケーション能力」で、文系・理系ともに58%と6割近い学生が選択しています。次いで、「チームで働く力」が多く、文系で57%、理系でも54%と半数を超えています。順位こそ異なりますが、上位2項目は前年調査と変わりません。

そのほか、文系では「適応力」(34%)、「論理的思考力」(31%)が3割以上となり、「目標達成指向」(28%)、「リーダーシップ」「調整力」(ともに27%)、「考え抜く力」(26%)がそれに続きます。「論理的思考力」は、例年理系では上位になるものの、文系では上位にランクインすることはなく、例えば前年調査では14%で11位でした。今回、「論理的思考力」が3割以上の学生から選択されたことに驚きを隠せません。また、「リーダーシップ」も前年より10ポイント増加しています。

一方、理系では「論理的思考力」(39%)、「目標達成指向」(35%)が3割以上となり、「基礎的な学力」(28%)、「適応力」(27%)、「前に踏み出す力」(27%)がそれに続きます。理系の変化で最も注目すべきは、1位の「コミュニケーション能力」でしょう。前年調査でも同率2位ではあったものの、得票率は32%でしたから26ポイントも増加していることになります。「文系のコミュ力、理系の論理力」と称されたのは過去の話となるのか、今後の動向を注視していきたいと思います。

前回、「異文化への理解力」で文系が12ポイント上回っていましたが、今回その差は6ポイントに減少してしまったことで、今回ついに文系が理系よりも10ポイント以上上回っている項目はなくなりました。逆に、理系が大きく上回っているのは、「基礎的な学力」(16ポイント差)、「専攻学問の専門知識」(13ポイント差)、「プログラミングスキル」(11ポイント差)の3項目あります。前回は「論理的思考力」(18ポイント差)、「データ解析能力」(12ポイント差)もありましたので、これでも項目数としては減少しているのです。それにしても、文系の「専攻学問の専門知識」がわずか6%というのは、寂しい限りです。とても専攻分野と紐(ひも)づけた就職先探しは望めそうにありません。
[図表12]就職活動でアピールしたい自分の能力(複数回答)
次に、将来どのポジションまで昇進することを希望するかを聞いたところ、「社長(起業含む)」と回答した割合は、文系4%、理系6%にとどまりました[図表13]。しかし、同じ経営層の「取締役・執行役員」は文系20%、理系19%と2割程度が希望し、文系・理系ともに2位となっています。経営層には憧れるものの、トップとして社内外の矢面に立つことは避けたいということなのでしょうか。

最も希望割合が高かったのは、「事業部長・部長」で文系41%、理系42%と4割を超えています。前年調査からはどちらも10ポイント以上増加しています。「次長・課長(マネジャー)」は、文系では前年から6ポイント減の16%、理系も文系とほぼ同じ17%となるなど、今回の調査では文系と理系での意識の差はあまり見られませんでした。

前年調査では「役職には就きたくない」が文系21%、理系15%もありましたが、今回はそれぞれ7%、1%へと大きく減少しています。管理職を敬遠する傾向に変化が表れ始めたのかもしれません。
[図表13]将来就きたいポジション

8割以上の学生が初任給額を重視

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