生産年齢人口の減少によって人材獲得競争が激化する昨今、多くの企業が「優秀な人材が採れない」「内定・選考辞退が相次いでいる」などの悩みを抱えています。そうした中、注目を集めているのが、候補者に対して企業が魅力的な選考体験を設計・提供する「採用CX」や、適性検査などを用いたデータ分析です。これらを採用プロセスの中に効果的に組み込むことで、選考のミスマッチや選考・内定辞退などの課題解決につなげることができます。

そこで今回は、採用活動を科学的にアプローチする「採用学」を提唱されている神戸大学大学院経営学研究科の服部 泰宏教授と、人的資産研究所 代表取締役の進藤 竜也氏が対談し、採用CX向上に取り組む意義やデータ活用の有用性などについて語っていただきました。(以下敬称略)

【出演者プロフィール】


  • 服部 泰宏氏

    ■服部 泰宏氏
    神戸大学大学院経営学研究科 教授

    国立大学法人滋賀大学専任講師、同准教授、国立大学法人横浜国立大学准教授、国立大学法人神戸大学准教授を経て、 2023年4月より現職。 日本企業における組織と個人の関わりあいや、経営学的な学びと知識の普及に関する研究、人材の採用・評価・育成・配置に関する研究に従事。近年は企業内で圧倒的な成果をあげる「スター社員」に関する研究も行っている。 2010年および2022年に組織学会高宮賞、 2014年に人材育成学会論文賞、2020年に日本労務学会学術賞などを受賞。

  • 進藤 竜也氏

    ■進藤 竜也氏
    株式会社人的資産研究所 代表取締役

    2011年、株式会社セプテーニ・ホールディングスに新卒入社。採用・育成・配置の分野にアナリティクスの技術支援を行う。グループ内研究機関である人的資産研究所の所長を経て、2021年よりHRテクノロジー事業を開始。一般社団法人ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会 上席研究員 / 個人情報保護士。

神戸大学 服部先生、人的資産研究所進藤氏1

求職者の満足度を高める5つのファクターとは?

神戸大学 服部先生、人的資産研究所進藤氏
進藤 まずは、弊社が企業の人事担当者を対象に行ったアンケート調査をもとにお話ができればと思います。このアンケート調査の中で、「中途採用における人材の充足度」について質問したところ、半数以上が「充足していない」と回答し、さらに採用のプロセスに課題を感じている企業は74%にも上りました。

【図表1】中途採用(キャリア採用)における必要な人材の充足度(全体)

【図表1】中途採用(キャリア採用)における必要な人材の充足度(全体)

【図表2】中途採用プロセスにおいて、どの程度課題を感じているか(全体)

【図表2】中途採用プロセスにおいて、どの程度課題を感じているか(全体)
具体的な課題としては、「採用要件に合致する人材を見つけにくい」「応募者数が不足している」「応募者の質に課題がある」といった声が寄せられており、やはり母集団形成のところで悩まれている企業様が多いのかなという印象です。また、近年は人材紹介会社のCMや広告をよく見かけます。私の仮説ですが、転職を希望する顕在層の人材が人材紹介会社によって一気に獲得され、企業の直接採用に回りにくくなっているのではないかと感じています。服部先生はこの調査結果について、どのようにお考えになられますか?

【図表3】中途採用プロセスにおいて、具体的にどのような課題があると感じているか(全体)

【図表3】中途採用プロセスにおいて、具体的にどのような課題があると感じているか(全体)
服部 私の教え子たちは一般の事業会社と人材紹介会社のどちらにもいるので、それぞれの立場から話を聞くことができるのですが、そこで耳にする意見はまさしくこの調査結果に近い内容で、本当に実感に合うデータだと感じました。進藤さんがおっしゃられた通り、企業が抱えている課題はやはり人を集めるところなんですね。

例えば、研究会などで「今日は適性検査について議論しましょう」と言っても、結局は「そもそも人が採れない」「本当に人っているの?」という会話になってしまいます。最近では文系の大学の研究室にも企業から直接オファーが届くケースが増えているのですが、それくらいピンポイントで探さないと採用ができなくなってきているという現状を反映した結果だと思います。

進藤 さらにアンケート調査では中途採用におけるCX向上の取り組みについても聞いているのですが、約半数にあたる49%の企業が「注力している」と回答しています。また実際に効果があった取り組みとしては、「選考時~入社前のコミュニケーション」「自己理解や企業理解につながるフィードバック」「自社に関する情報提供や関係構築といった入社前のフォロー」などが挙げられました。こうした採用CX向上の取り組みにおいて、意識すべき点や注意点がございましたらお聞かせください。

【図表4】中途採用において候補者の満足度(CX)向上にどの程度注力しているか(全体/企業規模別)

【図表4】中途採用において候補者の満足度(CX)向上にどの程度注力しているか(全体/企業規模別)
服部 私はこの数年間、候補者体験に関するヒアリング調査を継続して行ってきました。その結果から、実際にどのような体験が候補者の満足度につながるのかを分析しましたので、簡単にご紹介させていただきますと、CX向上のファクターは大きく5つ挙げられます。

協力:株式会社人的資産研究所


この後、下記のトピックが続きます。
続きは、記事をダウンロードしてご覧ください。

●候補者の満足度向上につながる「5つのファクター」
●変わりつつある「適性検査の役割」選考・内定辞退防止に効果的な理由とは
●企業と候補者のマッチングに強みを発揮する適性検査
●「働く人が会社を選ぶ時代」となった今、企業が持つべき意識とは
●服部教授が語る、データ分析・活用の有用性

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