社会の流れに敏感な企業選択時の価値観

ここからは、学生の会社・仕事選びの価値観を見てみましょう。まずは、「仕事の魅力」で最も重視しているのは、文系・理系ともに「仕事が面白そう」で、それぞれ40%、39%と4割程度を占めています[図表9]。次いで「スキルが身に付く」(文系17%、理系20%)、「勤務地を選べる」(文系17%、理系18%)が続きます。六つの選択肢の中で最も低い割合だったのは「海外で働ける」で、文系で2%、理系ではさらに少ない1%となっています。

この質問を同じ選択肢で初めて聞いた、2022年新卒学生を対象として2021年3月に実施した調査(以下、22卒調査)の結果では、1位は今回と同じく文系・理系ともに「仕事が面白そう」(それぞれ35%、38%)でしたが、次いで多かったのは、文系では「スキルが身に付く」(18%)、理系では「希望する職種に就ける」(21%)でした。ジョブ型採用や職種別採用が5年前よりもかなり浸透してきているにもかかわらず、「希望する職種に就ける」は理系で8ポイント、文系でも2ポイント減少しています。文系では、22卒調査でも「海外で働ける」が最もポイントが低かったとはいえ7%あり、「勤務地を選べる」が文系で2ポイント、理系では6ポイントも増加したことと合わせて、「勤務地」が企業選択でより大きなファクターになっていることがうかがえます。
[図表9]最も重視する「仕事の魅力」
次に、「会社の魅力」について見てみましょう。最も多かったのは文系・理系ともに「安定している」で、文系46%、理系32%となっています[図表10]。次いで、文系では「経営者・ビジョンに共感」(22%)、「成長性が高い」(18%)が多く、理系では「技術力・サービスが優れている」(30%)、「経営者・ビジョンに共感」(13%)が多くなっています。「新規事業に熱心」は文系ではわずか1%、理系でも2%にとどまり、学生にあまり評価されていないことがうかがえます。

22卒調査との比較では、文系・理系ともに「安定している」がさらに増加した半面、「成長性が高い」は7~8ポイントも減少するなど、より安定志向が強くなっています。また、文系では「経営者・ビジョン」に、理系では「技術力・サービス」に関心が高い傾向にあることは変わらないようです。
[図表10]最も重視する「会社の魅力」
「雇用の魅力」では、文系・理系ともに「福利厚生がしっかりしている」がトップで、文系34%、理系33%といずれも3分の1程度を占めています[図表11]。次いで、文系では「社風・居心地が良い」(24%)、「年収が高い」(20%)が続き、理系でも「社風・居心地が良い」と「年収が高い」(ともに25%)が続きます。

22卒調査との比較では、「福利厚生がしっかりしている」は依然として高い割合であるものの、理系では7ポイント減少しています。逆に、「年収が高い」は文系で10ポイント、理系でも8ポイント増加しており、価値観が「福利厚生」から「年収」に移行しつつあるようです。また、「働き方改革」の影響で、働き方の多様化が年々進んできたためか、かえって「多様な働き方ができる」は文系で13ポイントも減少しています。一方、終身雇用が崩壊し、雇用の流動化を考えるようになると、「雇用を守る(解雇しない)」が文系で6ポイント増加するなど、再評価されてきているようです。「人的資本経営」が叫ばれる中、人材への投資が話題になることが増え、「教育研修に熱心」についても注目され、文系・理系ともに11%へとポイントを伸ばしています。
[図表11]最も重視する「雇用の魅力」

「文系のコミュ力、理系の論理力」は過去の話?

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