HR総合調査研究所(HRプロ)が実施した「人事のキャリアに関する」アンケート調査を基にした人事のキャリア観の第2回リポートをお届けする。前回は人事自身がどのようなキャリアで現職に就いたか、人事という職種についてどのように感じているか、そして日々の研鑽状況にフォーカスした。今回は人事の抱える課題と、人事の役割変化に対する意識にフォーカスしてみたい。

規模が大きいほど担当者育成上の課題を持つ割合が高くなる

「人事部門の担当者育成上の課題」の有無を聞いたところ、課題が「ある」と回答したのは「1001名以上」の企業が73%、「301~1000名」の企業が70%、「1~300名」の企業が63%と、規模が小さいほど課題を抱える割合は低くなっている。
 どんな課題を抱えているのか、回答者のコメントからいくつか紹介しておこう。

「部員の経験不足」
「本人の志向や興味と必要とされるスキル知識が必ずしも一致しないこと。例えば、本人はペイロールなど実務業務に興味あるが、その上の人事管理・労務管理などにはあまり興味を示さないことがある。特に女性の場合にその傾向があると感じている」
「人事に関する専門的知識や振る舞いができるメンタルの育成が必要」
「明確な育成計画が確立されていない」
「他業務のウエイトが高く、外部での研修やセミナーの参加が物理的に厳しい」
「人事部門での経験がまだ浅いのに単独部署となっているので、専門性が高い労務相談から単純な人事関連事務まで、すべてにおいて気軽な相談相手がいない」
「人事としてのキャリアマップがない」
「“人”に関わるだけにフレキシブル対応が多いので、完全マニュアル化は難しく、センスは教えようがない」
「育成予算(営業社員向けはあるが、人事向けは無い)」

 経験面、予算面、キャリアマップなど多彩な課題があるようだ。

「人事のキャリアに関するアンケート調査」結果報告【2】

重要な能力の1位と2位は「コミュニケーション力」と「社内人脈」

人事部の業務に必要な能力を問うたところ、1位は「コミュニケーション能力」で、93%と圧倒的だ。2位は「社内人脈」で72%。社内の人間関係で動くことが多いようだ。続いて「企画・戦略立案力」64%、「専門知識の高さ」62%、「情報感度」61%と続く。
 意外なほど低いのは「語学力」8%だ。語学力が必要になる日本企業は多いはずだが、人事自体のグローバル化は進んでいないようだ。「ダイバーシティへの理解」も25%にとどまっている。「リーダーシップ」は32%と低めだが、他部署に比べ調整の色彩が強いからだろう。後述するように、「管理」部門としての意識が強いといえる。

「人事のキャリアに関するアンケート調査」結果報告【2】

人事部門の役割とは何か

人事担当者が自らの役割をどのように考えているのだろうか。ディビッド・ウルリッチが、著書『HRチャンピオン』(邦題:MBAの人材戦略)の中で述べている人事の4つの機能を選択として掲げ、1つを選んでもらった。
 企業規模により若干の違いはあるが、「人材管理のエキスパート」が半数近くを占めていること、「従業員のチャンピオン」はほとんどゼロに近いことは共通している。これだけ激しい環境変化の中、人事部門は労務サービスを提供する「管理」部門ではなく、「戦略パートナー」あるいは「変革エージェント」としての役割が大きくなっていくべきなのに、現状ではまだそういう役回りになっていないということのようだ。
 規模による違いを見ると、「1001名以上」では「ビジネス戦略のパートナー」とする割合(29%)が、「組織・風土変革のエージェント」(24%)より高くなっていること。「301~1000名」と「1~300名」で目立つのは「その他」だ。ともに12%ある。「その他」のコメントを読んでみると、規模が小さい企業では人事政策機能がなく、事務処理のみの企業があるようだ。いくつかを紹介する。

「人事部門が存在しない」
「新卒採用のみを行う事務部門という印象」
「事務処理係」
「何でも解決するサポーター」
「問題対応・解決。"予防"意識が無いため」
「目的が明確でないので、人事と総務との境目もなにもかも不明瞭」
「トラブル対応要員・事務作業員」
「支援部門としての位置づけが色濃い」

「人事のキャリアに関するアンケート調査」結果報告【2】

人事部門の役割変化を過半数が実感

「人事部門全体の役割の変化」の結果が興味深い。過半数が「強く感じる」「感じる」としている。「301~1000名」が特に多く72%に達している。
 「あまり感じない」「全く感じない」は、どの企業規模でも少数派で10%前後にすぎない。多くの人事が役割の変化を実感しているようだ。

「人事のキャリアに関するアンケート調査」結果報告【2】

今後重要になるのは「人事戦略」と「教育・研修」

今後重要になる人事業務についての設問では、「人事戦略(制度企画、要員計画)」が1位で68%、続いて「教育・研修」63%、「人事管理(考課、昇進・昇格、異動、給与)」が51%だ。人員計画と制度にかかわる戦略を立案し、戦略に基づいて人を育成し、適切に処遇していくことに重きを置いているということだろう。また「人事戦略」については、企業規模が大きいほど重要性が高まると予想している。
 人事の重要な業務であるはずの「新卒採用」は44%にとどまっている。ただし、「今後重要になる人事業務」という設問なので、新卒採用の重要性が減じるという意味ではないだろう。
 「福利厚生」が9%と低いが、既存の制度があるからだろう。「海外人事」は全体平均で21%だが、少ないのではなく、5社に1社以上が「海外人事」を重要になると認識していることに注目すべきだろう。「海外人事」は事業展開によって、その機能が存在しない企業も多く、企業規模で明確な違いがある。「1~300名」では11%にすぎないが、「301~1000名」では27%と増え、「1001名以上」では40%とかなり高い。グローバル展開している企業においては、「海外人事」を挙げている企業は極めて多いことが推測される。

「人事のキャリアに関するアンケート調査」結果報告【2】

次に担当したい人事業務は「人事戦略」と「教育・研修」

前回に報告したように、今回のアンケート対象者が就いている人事業務は、「新卒採用」が最も多く77%、続いて「教育・研修」71%、「中途採用」が70%だ。
 ところが「次に担当したい人事業務」について問うたところ、「新卒採用」と「中途採用」の人気は低い。特に「中途採用」の人気はなく、数%にすぎない。「新卒採用」も十数%にとどまっている。
 最も人気のあるのは「人事戦略」だ。どの企業規模でも30%台と高い。続いて多いのは「教育・研修」の20%前後だ。「海外人事」については「1~300名」の企業では7%にすぎないが、「301~1000名」と「1~300名」では10%台だ。こちらは前述したように、その業務自体がまだない企業も多く、他と同等に見るわけにはいかないだろう。
 一人も支持しなかったのは「契約・派遣・アルバイト採用」で0だ。「福利厚生」と「中途採用」は全体平均で3%。「労務」は6%、「人事管理」は7%。オペレーション業務の人気が低いことがわかる。

「人事のキャリアに関するアンケート調査」結果報告【2】

【調査概要】

調査主体:HR総合調査研究所(HRプロ株式会社)
調査対象:上場および未上場企業の人事担当者
調査方法:WEBアンケート
調査期間:2012年3月2日~2012年3月15日
回答者数:292名

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