企業の将来を担う若手社員の育成は、組織全体の活性化にもつながる企業成長の大きな鍵であり、多くの企業にとって重要な取り組み課題であると言える。
一つの企業に定年まで勤めるというキャリアがかつてよりも描きづらくなった昨今において、会社と自身のキャリアとの距離感に対する若手社員の意識も大きく変化している。そのような中で、優秀な若手社員を育成し社内にとどまってもらうためには、仕事のスキル向上だけでなく、個々人の仕事に対するモチベーションの状態をこまめに把握することや、一人ひとりのキャリア観に沿ったキャリア支援を行うといったきめ細やかな取り組みが重要性を増している。
HR総研は、研修やキャリア支援等、各企業の若手社員育成への取り組み実態と課題について最新動向を調査した。調査結果をフリーコメントも含めて以下に報告する。

<概要>
●若手社員の育成計画の期間、中小企業では「1年未満」が5割
●若手社員が優れているスキル「デジタルリテラシー・スキル」が最多で4割
●若手社員向け研修「オンライン形式で実施しているものはない」が4割以上
●若手社員の離職防止の施策「定期サーベイの実施」が最多で4割以上
●若手社員育成の課題「育成効果の見える化」が最多で5割
●若手社員の育成の方向性、「社員が主導で決定」は2割にとどまる
●若手社員の育成に関する自由意見

●若手社員の育成計画の期間、中小企業では「1年未満」が5割

まず、「若手社員に対する育成計画の作成有無」ついて見てみる。
企業規模別に見てみると、「作成している」について、従業員数1,001名以上の大企業では73%、301~1,000名の中堅企業では72%と、いずれも7割を上回っている。一方で300名以下の中小企業では、「作成している」は58%となっており、大企業・中堅企業に比べて、若手社員の育成計画を作成している企業は少なくなっている(図表1-1)。

【図表1-1】企業規模別 若手社員に対する育成計画の作成有無

HR総研:若手社員の育成に関するアンケート 結果報告

「育成計画を作成している」企業を対象に、育成計画の期間を聞いたところ、大企業では「2年以上3年未満」が最多で38%、「3年以上」(「3年以上4年未満」~「5年以上」の割合の合計)は28%となっている。中堅企業でも「2年以上3年未満」が最多で26%、「3年以上」は22%となっている。一方で中小企業では「1年未満」が最多で50%となっており、大企業・中堅企業に比べて育成期間が顕著に短いことが分かる(図表1-2)。

【図表1-2】企業規模別 若手社員の育成期間

HR総研:若手社員の育成に関するアンケート 結果報告

●若手社員が優れているスキル「デジタルリテラシー・スキル」が最多で4割

次に、近年の若手社員の性格特性やスキルに関する傾向について見ていく。
まず、近年の若手社員の仕事に対する姿勢や特性について7つの項目で聞いたところ、「あてはまる」の割合を見てみると、「真面目である」については97%と7つの項目の中で最も高くなっており、次いで「協調性がある」は88%と9割近くに上っている。これに次いで「柔軟性がある」は58%となっている。一方、「チャレンジ精神が旺盛である」、「アイディア豊富で創造的である」については、ともに「あてはまる」が43%となっており、これらの傾向を感じているとの回答が少数派となった。「受け身にならず自発的である」については「あてはまる」は33%と3割にとどまり、「ストレス耐性が高い」については「あてはまる」が32%と、全項目の中で最も低い結果となった。全体としては、真面目で和を重んじるが、やや受け身でストレスの影響を強く受けやすいという若手社員像が見てとれる(図表2-1)。

【図表2-1】近年の若手社員の仕事に対する姿勢や特性の傾向

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スキル面での傾向について見てみると、「近年の若手社員について優れていると感じるスキル」については、「デジタルリテラシー・スキル」が最多で36%、次いで「適応力」「コミュニケーション力」がともに29%などとなっている(図表2-2)。やはり、近年の若手社員は、生まれた時から身近にインターネットがあるデジタルネイティブ世代であり、「デジタルリテラシー・スキル」がトップという結果もうなずける。

【図表2-2】近年の若手社員について優れていると感じるスキル

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逆に、「近年の若手社員について物足りないと感じるスキル」については、「ストレスマネジメント」が最多で45%、次いで「リーダーシップ」が38%、「課題解決力」が36%などとなっている(図表2-3)。仕事に対する姿勢や特性に関する設問(図表2-1)でも、「ストレス耐性が高い」については「あてはまらない」との回答が68%と7割近くに上っていたが、若手社員がストレスの影響を強く受けやすい要因としては、個人の性格特性だけではなく、ストレスに対処する術を身に付けていないということもありそうだ。もちろん、個人の性格特性にあわせたマネジメントは重要だが、単に「打たれ弱い」ととらえるのではなく、「ストレスマネジメントのスキルが十分に身に付いていない」ととらえると、育成施策の中で対応する余地もありそうだ。

【図表2-3】近年の若手社員について物足りないと感じるスキル

HR総研:若手社員の育成に関するアンケート 結果報告

次に、企業がどこに重点を置いて若手社員の育成を行っているかを見ていく。「若手社員の育成において重視しているスキル」については、「コミュニケーション力」が最多で50%、次いで「業務の専門知識・技術」が44%、「課題解決力」が37%などとなっている(図表2-4)。個人として仕事をまわしていくための「業務の専門知識・技術」や「課題解決力」に加え、上司や取引先、同僚といった関係者との良好な信頼関係を築きながら仕事をしていくための「コミュニケーション力」が現場で戦力となるためのベーススキルであり、若手社員の育成において重視している企業が多いことが分かる。

【図表2-4】若手社員の育成において重視しているスキル

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●若手社員向け研修「オンライン形式で実施しているものはない」が4割以上

続いて、若手社員の育成に関する、企業の具体的な取り組みについて見ていく。「若手社員の育成のために取り組んでいる施策」については、「座学での研修」が最多で69%、次いで「育成担当をつけてのOJT」が55%、「自己啓発・資格取得支援」が53%などとなっている(図表3-1)。OJTの実施自体はもっと割合が高いと考えられるが、育成担当を明確にしてOJTを実施している企業は5割台にとどまった。

【図表3-1】若手社員育成のために取り組んでいる施策

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図表3-1より、7割の企業で育成施策として「座学での研修」を取り入れていることが分かったが、具体的にどのようなプログラムで研修を実施しているのだろうか。
「若手社員向けに実施している研修」については、「ビジネスマナー研修」が最多で57%、次いで「業務の専門知識・技術に関する研修」が54%、「会社の仕組み・ルール」が53%などとなっている(図表3-2)。「ビジネスマナー」「会社の仕組み・ルール」等は、新入社員研修の中に組み込んで、一律で実施している企業も多いものと思われる。ストレスマネジメントに関しては、物足りないと感じている企業が多い(図表2-3)ものの、研修プログラムとして組み込んでいる企業は2割にとどまった。

【図表3-2】若手社員向けに実施している研修

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「オンラインで実施している若手社員向け研修」については、実施している研修の種類としては、「コンプライアンス研修」が最多で29%、次いで「業務の専門知識・技術に関する研修」が24%、「ビジネスマナー研修」が20%などとなっている。コンプライアンス研修は、比較的受講者間や講師と受講者との間のコミュニケーションの必要性が低い研修内容であり、オンライン形式での実施が多いものと思われる。また、「オンライン形式で実施したものはない」も44%と、4割以上に上っている(図表3-3)。


【図表3-3】オンラインで実施している若手社員向け研修

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HRプロとは

【調査概要】

アンケート名称:【HR総研】「若手社員の育成」に関するアンケート
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査期間:2022年8月15~23日
調査方法:WEBアンケート
調査対象:企業の人事責任者・担当者
有効回答:193件

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1)出典の明記:「ProFuture株式会社/HR総研」
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Eメール:souken@hrpro.co.jp

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詳細につきましては、上記メールアドレスまでお問合せください。

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