2014年3月19日、「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングが、国内店舗で働く約3万人のパートタイマーやアルバイトのうち約1万6000人を、地域限定の正社員に転換する計画があることがわかった。多様な働き方のまま正社員化するという。
「限定正社員」~多様化する働き方への対応~

 2月には、スターバックスジャパンが、約800人の契約社員のほぼすべてを4月1日から正社員にすることが明らかにされている。2社とも出店拡大の計画があり、店長ができる人材の育成も狙いにあるという。中小企業の人材確保は難しいと言われるが、有名企業であっても、優秀な人材の確保は重要な経営課題なのだということの表れともいえよう。

 ユニクロの今回の正社員化は地域限定正社員だそうだが、「限定正社員」といえば、昨年アベノミクスの成長戦略のひとつとして注目された。地域、仕事内容、勤務時間などを限定する働き方で、育児や介護などで労働条件に制約がある人の受け皿としても期待されている。2014年4月の労働契約法の改正で、有期労働契約が繰り返し更新されて通算5年を超えた有期労働契約者は、希望すれば無期労働契約へ転換できることになったが、限定正社員は、その行き先のひとつとしても考えられている。ただし、この限定正社員という雇用形態自体は決して新しいものではなく、転勤などがない、いわゆる一般職採用や、専門職のための職種限定の正社員採用は、以前から行われていた。

 2011年に厚生労働省から発表された「『多様な形態による正社員』に関する研究会」のアンケートによると、多様な正社員区分がある企業数は、どの規模の企業でも約50%。正社員に複数の雇用区分を設ける主な目的は「優秀な人材を確保するため」「従業員の定着を図るため」「仕事と育児や介護の両立支援のため」となり、「賃金の節約のため」が続く。こうなると、いわゆる従来型の正社員との処遇差が気になるところだが、アンケートでは、賃金は従来型の正社員に比べて80~90%未満が最も多く、昇進できる管理的ポジションの上限や教育訓練方針も差がある企業が多い。限定正社員への不安として、職種や勤務地限定社員の場合、その職種が不要になったときや、その事業所が閉鎖になったときに、解雇の対象にされやすいのではないかという問題もある。

 パートタイマーの方でも動きがある。今通常国会ではパートタイム労働法の改正法案が提出される。その改正の中心は、パートタイマーへの差別的取扱いの禁止の範囲拡大で、これまで正社員と同視すべきパートタイマーの条件は、(1)職務(仕事の内容や責任)が同じ、(2)人材活用の仕組み(人事異動の有無や範囲)が全雇用期間を通じて同じ、(3)契約期間が実質的に無期契約、の3つだったが、この(3)が廃止されている。つまり、有期契約のパートタイマーであっても、(1)(2)条件が正社員と同じなら、給与を含めてすべての待遇を正社員と同じにしなければならない。

 では、働き方の多様化に、企業はどう対応すべきか。
まず、正社員・限定正社員だけでなく、無期契約社員・有期契約社員やパートタイマーの職務内容や待遇も含めて、従業員の構成や役割を再検討してみてはどうだろうか。自社に最も合った構成にすることで、優秀な人材の確保や従業員の定着、ひいては業績向上も期待できるかもしれない。新しい従業員構成を作ったら、それに対応するための新しい人事制度・評価制度や、無限定正社員への転換制度、雇用形態に合わせた就業規則・社内規程も、早いうちから整備しておいた方がよい。多様な雇用形態が、なんとなく増えてしまってからの整備は、難しいことが多いのである。まして、正社員以外の就業規則がなく、雇用契約書も何もないというのは、法令順守の問題だけにとどまらず、非常にリスクが高い。

 これらの動きをするために活用できる助成金もある。キャリアアップ助成金の正規雇用等転換コースである。有期契約社員を無期契約社員または正社員にする際に、一定の条件を満たすと受給できる。以前は1人当たり最大40万円だったが、平成26年3月1日から期間限定で増額され、最大50万円が支給されることになった。1年度1事業所あたり15人まで使える。手続きが比較的簡単なこともあり、中小企業でも活用しやすいので、お勧めである。


社会保険労務士法人日本人事 織田 純代

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