生成AIの急速な普及は、企業の採用活動にも大きな変化をもたらしている。マイナビの調査によれば、2026年3月卒業予定の大学生・大学院生の67%が「就職活動で生成AIを利用した経験がある」と回答しており、特にエントリーシート(以下「ES」と表記する)の作成が主な利用目的のようである。この調査結果は、就職活動において生成AIの利活用がすでに一般化している現実を示していると言えよう。
26卒の約7割がAI利用。一歩先を行く「主体性や思考力の見極め力」と採用選考の再設計

採用選考のパラダイムシフト

一方、企業側からは「ESの内容が画一的になり、個性や思考力を見極めにくくなった」という声が聞かれる。その結果、書類選考を廃止し、応募者全員と面接を行う企業も現れてきている。しかし、採用業務の効率性や公平性を考えると、単に従来のプロセスを放棄するだけでは、持続可能な採用活動になるとは言い難い。今後は、生成AIの利活用を前提とした採用活動の再設計が不可欠であろう。

生成AI利活用を「禁止」ではなく「前提」にする視点

まず重要なのは、生成AIの利活用を否定的に捉えない姿勢を持つことである。実務の現場では、資料作成、情報収集整理、企画立案など、生成AIを利活用する場面が今後さらに増えていくことが予想できる。そのため、生成AIを使えること自体は、むしろ業務遂行能力の一部とポジティブに評価すべきである。

採用活動においては、「生成AIを使ったか否か」ではなく、「どのように使い、最終的な成果にどのような工夫や判断を加えたか」を評価軸に据える必要がある。たとえばESにおいても、「生成AIを使って作成した場合、その内容をどのように修正・補足したか」、「自分の経験や価値観をどのように反映させたか」を説明させる設問を設けることで、主体性や思考力を確認することが可能となる。

面接における「人間性」の見極め方

生成AIでは代替しにくい領域こそが、人それぞれが持つ人間性である。具体的には、価値観、倫理観、対人関係能力、感情の扱い方などが挙げられよう。これらを見極めるためには、従来型の一問一答式の面接では不十分であり、より対話型・深掘り型の面接が必要となるだろう。

例えば、「学生時代に直面した失敗経験」について、事実関係だけでなく、そのときの感情の動きや、周囲との関係性、自身の行動をどのように振り返っているかを丁寧に掘り下げることで、誠実さや内省力を確認することができる。また、想定外の質問に対する反応を見ることで、マニュアルに依存しない柔軟性や思考のプロセスを把握することも有効となるだろう。

生成AI活用スキルと基礎学力の確認方法

AI時代においても、基礎的な学力や論理的思考力が不要になるわけではない。むしろ、生成AIの出力を正しく評価し、活用するためには、一定の知識と判断力がこれまで以上に必要となる。そのため、採用プロセスの中で、簡易なケーススタディや課題解決型の試験を取り入れることが考えられよう。

例えば、業務に近しいテーマを設定し、「生成AIを使っても使わなくてもよい」という前提で短時間のアウトプットを求め、その後に「どのような考えで結論に至ったか」、「生成AIを使った場合、どの部分を参考にし、どこを疑ったか」を説明させる。このようなプロセスを経ることにより、生成AI利活用スキル、論理性、主体的判断力を同時に評価することが可能となるだろう。

今後の採用活動に求められる姿勢

生成AIの普及は、採用活動における「見極め力」を企業側に強く求めている。形式的な書類や表面的な受け答えではなく、思考の過程、人との向き合い方、学び続ける姿勢を多面的に評価することが重要となるであろう。

今後、企業が求める人材は「生成AIを使わない人」ではなく、「生成AIが出した80点の回答を、自らのスキルで100点に昇華させ、他者の心を動かせる人」である。採用活動においては、以下の3軸を統合した評価が必要となってくるに違いない。

1.AIリテラシー: AIを道具として使いこなし、生産性を高める力
2.メタ認知能力: 自らの思考やAIの出力を客観視し、批判的に検証する力
3.エンパシー(共感力): 画面の向こう側にいる顧客や同僚の感情を理解し、信頼関係を築く力
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