日本電気株式会社(以下、NEC)は、2024年度からジョブ型人材マネジメントを本格的に導入している。目的は、事業成長と企業競争力の強化に向け、会社と社員が対等な「選び、選ばれる関係」を築くことだ。この新しい関係性の実現で不可欠となるのが、社員一人ひとりの「キャリア自律」である。同社は2025年度から、社員の自律的なキャリア形成を支援する新たな施策として、生成AIを活用した「NEC AIキャリアトーク」と、リアルな現場体験を提供する「NEC ジョブシャドウイング」を開始した。このデジタルとリアルという異なるアプローチを組み合わせた「両輪」の施策は、社員の主体的なキャリア形成とどのように結びついているのだろうか。そこで今回、取り組みを主導する日本電気株式会社 人材組織開発統括部の小野田 千紗氏と、NECライフキャリア株式会社 キャリアコンサルティングユニットの松岡 猛氏に、仕組みの具体的な内容や運用面での工夫のほか、人事施策に生成AIを活用するうえでのポイントや社員の主体性を育むための大事な考え方などを伺った。

プロフィール

  • 小野田 千紗 氏

    小野田 千紗 氏

    日本電気株式会社
    人材組織開発統括部
    ワークフォース&キャリアディベロップメントグループ
    シニアプロフェッショナル

    2004年に新卒入社後、複数の事業・組織にてビジネス人事を経験。現在は人材組織開発統括部においてキャリア開発支援や組織開発等の企画・推進を通じて、社員が自ら学び成長する基盤づくりに従事。

  • 松岡 猛 氏

    松岡 猛 氏

    NECライフキャリア株式会社
    キャリアコンサルティングユニット
    ユニット長

    大学卒業後、NEC入社。国内の人事管理に加え、中国北京駐在を経てグローバル人事管理、経営企画などを経験。現在は、企業内キャリア支援会社にてキャリア研修の企画・運営およびキャリア相談活動のマネジメントに携わる。法政大学大学院経営学研究科・人材組織マネジメントコース修了。日本キャリアデザイン学会理事兼広報委員長。国家資格2級キャリアコンサルティング技能士。趣味は釣り、太極拳など。

NECが挑む「生成AI」×「キャリア自律」の取り組み――社員の主体的なキャリア形成に重要な「ムーブメント」と「場ときっかけの用意」

社員の主体的なキャリア形成に向けた「NEC AIキャリアトーク」と「NEC ジョブシャドウイング」の具体的な仕組み

――まずは、NECが展開している社員の「キャリア自律」に向けた2つの施策について、推進体制から教えてください。

小野田氏:
私は全社的なキャリア形成支援の制度設計や今日お話しさせていただく「NEC ジョブシャドウイング」の企画・運営などを担当しています。

松岡氏:「NEC AIキャリアトーク」については、対人支援の専門的な知見を持つグループ会社のNECライフキャリアで私が開発と実務を主導しています。

――それぞれの施策について詳しくお伺いしたいのですが、はじめに「AIキャリアトーク」の仕組みについて教えていただけますでしょうか。

松岡氏:
NEC独自のセキュアな生成AI環境「NEC Generative AI Service」を基盤としたキャリア相談ツールです。最大の特徴は、国家資格を持つキャリアコンサルタントの知見や、NEC独自の社内制度・規定をAIに学習させている点です。一般的なChatGPTやGeminiなどを利用するのとは異なり、キャリア理論に基づいた傾聴や、当社の制度に即した回答ができるようチューニングされています。人事としても、一般的なAIでは社内制度と乖離した回答が返ってくることへの懸念があったため、そこは特に重視しました。

――具体的に、社員の方はどのようなシーンで活用されているのでしょうか。

松岡氏:
現時点では、特に大きく2つの利用シーンで効果を発揮しています。1つ目は、社内公募(異動)への応募時です。職務経歴書を作成する際、自分の経験をどうアピールすれば良いか悩む社員は少なくありません。そこでAIを壁打ち相手にすることで、自身のキャリアをポジティブな言葉で言語化してもらい、応募書類のたたき台を作成することができます。この結果、応募への心理的ハードルを大きく下げる効果が生まれています。

2つ目は、上司との1on1ミーティング前の準備です。漠然とした悩みを抱えたまま面談に臨むのではなく、事前にAIと対話して思考を整理しておく。そうすることで、上司との限られた時間をより本質的な対話に使うことができるようになります。
NECが挑む「生成AI」×「キャリア自律」の取り組み――社員の主体的なキャリア形成に重要な「ムーブメント」と「場ときっかけの用意」

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