この状況を打破するため、同社は現場と人事が連携。その上で、株式会社人的資産研究所が提供する「HaKaSe診断」のデータを活用し、客観的な事実に基づく育成改革を進めています。感覚的な指導から、データを用いた科学的なアプローチへ。現場発のボトムアップで始まった本プロジェクトは、組織にどのような変化をもたらしているのでしょうか。
今回、現場で育成改革に取り組むプロジェクト推進部の小宮めぐみ氏と、全社的な若手中心の育成を担うHR戦略推進部の中村彩氏、データ活用を支援した人的資産研究所の平岩力氏にお集まりいただき、取り組みの背景や具体的な変化、データ活用がもたらす組織の未来について語っていただきました。(以下敬称略)
【出演者】

■小宮めぐみ氏
1991年、コクヨ株式会社に新卒入社。営業部門に所属し、活躍。その後、オフィス営業の新人育成を専門とするグローバルワークプレイス事業本部 顧客ソリューション統括本部 プロジェクト推進部に異動し、現場社員の育成に尽力している。
コクヨ株式会社
グローバルワークプレイス事業本部 顧客ソリューション統括本部 プロジェクト推進部

■中村 彩氏
2018年、コクヨ株式会社に新卒入社。働き方のコンサルティングや新人研修企画などの業務を経て、2024年に人事に異動。現在はHR戦略推進部 新卒採用ユニットに所属し、新卒採用・HRBPを兼任している。
コクヨ株式会社
ヒューマン&カルチャー本部 HR戦略推進部 新卒採用ユニット

■平岩 力氏
2007年、セプテーニ・ホールディングスに新卒入社。人事採用担当、広告営業の経験を経て、2015年に事業会社Septeni Japan社のHRBPを立ち上げる。同時に子会社であるFLINTERS社の取締役を兼務し、採用・人事制度周りを管掌。2022年1月よりセプテーニ・ホールディングスの一組織として発足した、株式会社人的資産研究所へ参画。現在は取締役として事業全体を管掌している。共著に『トップ企業の人材育成力』。
株式会社人的資産研究所
取締役
※本記事の内容は、取材時(2025年12月)の情報に基づいています。

「優しさ」が仇となる。「教えすぎ」が生む育成のジレンマ
――まず今回のプロジェクトが発足する以前、現場と人事それぞれの立場からどのような課題を感じていらしたか、お聞かせください。小宮 プロジェクト推進部は、営業部門の新人育成を専門的に担っています。新入社員を大切に育てたいという思いから、営業の中でも特に面倒見の良い、優しいベテランを集めてチームを構成していました。

中村 人事の視点では、採用と配属後の連携に課題がありました。採用時にはSPIなどのデータを見ていますが、育成フェーズでは、個人の特性データを十分に活用しているとは言えないのが実情でした。「採用したら、後は現場任せ」となりがちで、現場に対して「この新人はこういう特性があるから、こう育てると良い」など具体的なデータの引継ぎができていなかったのです。新入社員の数が増えるに従って、感覚的なマッチングだけでは不十分で、定量的な根拠を持って配属や育成支援を行う必要を感じていました。

「養育的」なカルチャーの功罪
――こうしたコクヨ様の状況について、数多くの組織を見てこられた平岩さんはどのように分析されましたか。平岩 コクヨ様の風土は、多くの企業が抱える課題とは反対で、非常にユニークだと受け止めました。一般的には新入社員を現場に配属した後、忙しさにかまけて放置してしまう「現場任せ」や「人間関係の希薄化」が問題になります。
ところが、コクヨ様の場合、社員の方々が非常に「養育的」で「共感的」な特性をお持ちです。これは素晴らしい企業文化である一方で、育成ではマイナスに作用するという悩みにつながっていました。良かれと思って行っている指導だからこそ、「なぜ育たないのか」「何が問題なのか」と戸惑う構造があったのだと想像されます。
――強みであるはずの面倒見の良さが、時として成長の阻害要因になっていたというのは興味深い逆説です。
平岩 背景には、時代の変化によるマネジメントの難しさもあると考えられます。かつてのように全員がオフィスに集まり、わいわいがやがやと仕事をしていた時代であれば、上司や先輩社員の背中を見て学ぶ育成が成立しました。しかし現在は、リモートワークや働き方改革が広まり、同じ空間で長い時間を共有することが難しくなっています。

限られた時間の中で、業務の質と量を担保しながら、新入社員の育成もしなければならない。かつてのように、長い時間を一緒に過ごすことで生まれる、独特の信頼関係のようなものには頼れなくなっています。その結果、育成やチームビルディングに携わるマネージャーは、どのようにメンバーと接すれば良いか、最適解が見つけられずにいたのだと思います。
平岩 今のマネージャーは、短時間で「ビジネス(業績)」と「キャリア(育成)」の両方を求められ、疲弊しています。従来の経験則や感覚だけに頼った指導では対応しきれない環境だからこそ、データを活用し、効率的かつ効果的にコミュニケーションを取ることが不可欠になると考えられます。
協力:株式会社人的資産研究所
この後、下記のトピックが続きます。
続きは、記事をダウンロードしてご覧ください。
●現場と人事、それぞれが感じていた育成課題
●従来の経験則や感覚だけに頼らない、データ活用の必要性
●若手社員の採用と育成をつなぎ合わせた「データの力」
●客観的根拠がもたらした「指導」における重要な気づきとは?
●「人が育つ会社」へ歩みを進めるコクヨの次なるビジョン
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