
判断が求められる「シニア活用」の選択肢
企業がシニア社員の活用を考えた場合、具体的にはどのような選択肢があるだろうか。はじめに、高年齢者雇用安定法に定められた「65歳までの雇用機会確保」の義務に対応するには、以下の3つの選択肢が挙げられる。
(2)定年制を廃止する。
(3)定年年齢は65歳未満に据え置き、65歳までの継続雇用制度を導入する。
また、「70歳までの就業機会確保」の努力義務に対応する場合は、次のような選択肢がある。
(2)定年制を廃止する。
(3)定年年齢は70歳未満に据え置き、以下のいずれかの制度を導入する。
●70歳までの継続雇用制度
●70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度
●70歳まで継続的に社会貢献事業に従事できる制度
シニア社員の活用施策を立案するに当たっては、上記からいずれかの方法を選択することになる。
65歳までは「継続雇用制度」が3分の2
現実に各企業はどのような対応を講じているだろうか。厚生労働省の2024年12月20日付プレスリリース『令和6年「高年齢者雇用状況等報告」の集計結果を公表します』によると、「65歳までの雇用機会確保」の義務に対する各企業の対応状況は「継続雇用制度」を導入しているケースが約3分の2の67.4%と最も多い。また、その内の94.5%が継続雇用先を自社のみに限定しており、子会社や関連会社を継続雇用先とするケースは非常に少ない。
一方、「定年年齢の引上げ」を実施しているケースは28.7%であり、定年制自体を廃止したケースは3.9%とごくわずかである。

「65歳までの雇用機会確保」、「70歳までの就業機会確保」のいずれについても、継続雇用制度を導入することが主要な対応のようである。
見直しが必要な「4つの社内制度」
高齢の社員に高いモチベーションを保持した上で、持てる能力・経験を大いに発揮してもらうには、シニアならではの特性を踏まえた社内制度の構築・運用が必須になる。一般的には、以下の各制度を見直すことが必要だろう。(2)職務分掌制度
(3)評価・賃金制度
(4)研修・能力開発制度
●勤務制度
シニア社員の場合、必ずしもそれまでと同様の勤務スケジュールで働き続けることを望む人材ばかりではない。体力面・健康面などの制約により、他の一般社員と同じ勤務体系で働き続けることが困難なケースも少なくないものだ。また、体力的な問題が顕在化していない場合でも、「勤務日数・時間数に余裕を持ちたい」など柔軟な勤務体系にニーズを持つ人材が多い傾向にある。従って、「短時間勤務制度」や「フレックスタイム制度」を導入するなど、高齢の社員が自身のペースで働き続けられる勤務制度を設けることが必要といえる。
●職務分掌制度
独立行政法人労働政策研究・研修機構が2020年に発表した『高年齢者の雇用に関する調査(企業調査)』の結果によると、60代前半の継続雇用者の仕事内容は「定年前とまったく同じ仕事」とする企業が44.2%で最も多い。また、「定年前と同じ仕事であるが、責任の重さが軽くなる」とする企業が38.4%で、それに続いている。
●評価・賃金制度
新しい勤務体系が整備され、職務分掌が整理されたのであれば、それらの制度と連動した人事評価の実施や賃金の支払いが必要となる。前述の調査結果では、継続雇用された60代前半のシニア社員が平均的な賃金水準で勤務している場合、賞与を含んだ1年間の賃金水準は60歳を境に4分の3ほどに減少しているという。役割などの変更に適切に対応した、シニア社員の納得度が高い人事評価、賃金支払いを制度化することが重要となる。
●研修・能力開発制度
研修などの実施に際しては、シニア社員の特性を踏まえたメニュー設計が鍵になる。例えば、デジタルスキルの習得を目的としてリスキリング環境を整備するなど、能力向上支援施策を制度化することが求められるだろう。また、「加齢に伴う健康管理」、「年金と公的医療保険」などをテーマとする研修を実施するなど、ライフプラン支援を実施することもシニア社員には不可欠である。
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以上のような制度整備を高齢の社員との十分な事前協議のもとで実施すれば、実効性の高いシニア活用施策となるであろう。ただし、新しい施策の実施は企業側に相応の負担を強いるのが通常である。そこで、次回の第3回はシニア社員の活用に利用できる「公的支援の仕組み」について整理してみよう。
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