
人材確保の困難化に繋がる人口減少
現在、人手不足に頭を抱える企業は数多い。最大の理由は、わが国の人口減少が著しいことにある。日本の出生数は第1次ベビーブーム中の1949年に2,696,638人でピークを迎え、その後に低下が始まった(令和6年(2024)人口動態統計(確定数)の概況/厚生労働省)。近年でも低下傾向には歯止めがかからず、2024年には686,173人にまで減少している(同概況)。実にピーク時の4分の1程度にまで下がった計算だ。

新卒採用者の早期離職で人手不足に
人手不足感が強い原因には、若年人材の早期離職が顕著な点も上げられる。学卒新入社員が入社3年以内に離職する割合は、最終学歴の相違にかかわらずかなり以前から高い傾向にあった(学歴別就職後3年以内離職率の推移/厚生労働省)。この傾向は近年も継続しており、一貫して3割以上の若者が入社から3年以内に勤務継続を断念している(同推移)。

法規制で企業には「70歳までの就業機会確保」の努力義務が
労働力人口の減少傾向などを踏まえ、企業は高齢期の社員に就業機会を提供することが法律で要求されている。具体的には、「高年齢者雇用安定法」が改正され、2006年4月からは「65歳までの雇用確保」が企業に義務化された。さらにその後、2021年4月からは「70歳までの就業機会確保」が努力義務とされ、現在に至っている。
企業側が上記義務を履行しない場合、行政機関から指導や助言を受けることがある。それでも違反状態などが改善されなければ、「65歳までの雇用確保」の措置を講じるよう勧告が行われたり、「70歳までの就業機会確保」の実施に関する計画作成の勧告が行われたりすることもある。
これらの法規制に対応する観点からも、企業には高齢になった社員に引き続き活躍の場を設けることが必要といえる。
メリットが多いシニア人材の活用
企業が人材確保面・法令遵守面の要請から高齢社員を活用した場合、どのようなメリット・効果を享受できるのだろうか。実際に高齢社員の積極活用を行う企業の事例を見ると、さまざまなメリットを得ている事実が確認できる。代表的な事項は次のとおりである。
人材の量的確保
最大のメリットは「人材の量的確保」が可能になる点である。シニア人材に現役時代と同様または類似の活躍を求めることにより、人材確保が困難な現在の状況に対応している企業は少なくない。新卒社員の早期離職が散見される中で、シニア人材が「若手の代替要員」として活躍しているケースもあるようだ。人材の質的確保
2番目のメリットは「人材の質的確保」が実現できる点であろう。シニア人材の中には、若年社員では持ち得ない経験や技術、知識、専門性を保有しているケースも少なくない。そのため、現役時代に培った経験などを大いに発揮することにより、高齢になっても企業に貢献し続ける事例が数多く確認されている。教育研修機能の充実
さらに、「後輩社員の教育研修機能の充実」も見逃せないメリットといえる。現役時代に培った経験などは自身で発揮することに加え、後輩社員の指導・育成に活用することで企業全体の業務品質の維持・向上が可能になる。専門技術・技能の喪失回避
専門性の高い技術・技能を保有する企業の中には、高齢社員の退職に伴う高度専門技術などの喪失・弱体化に頭を悩ませるケースが少なくない。しかしながら、専門性の高い高齢社員による教育研修により、これらの技術・技能を後輩社員に継承することが可能になる。その結果、競争力の源泉である技術力や暗黙知の喪失を回避することが期待できる。後輩社員の離職削減
高齢社員に活躍の場が提供されていれば、後輩社員に「わが社は長く活躍できる会社である」とのプラス感情を醸成することが可能になる。安心して働ける職場であるとの認識から、離職の削減効果も期待できる。*
以上のように、企業が「シニア人材の活用」に取り組むことは、環境変化に対応して持続的成長・発展を実現するために経営的価値の高い取り組みといえる。ただし、円滑なシニア活用には課題がないわけではない。そこで、次回の第2回では「シニア活用に必要な制度の見直し」について整理をしてみよう。
●厚生労働省:高年齢者雇用・就業対策
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