「ポテンシャル採用」とは、未経験であっても潜在的な能力を秘めた人材を積極的に迎え入れようとする採用手法だ。採用競争が激化し若手社員が各企業で不足していくなか、優秀な若手人材を確保するうえで効果的とされている。今回はそんな「ポテンシャル採用」のメリット・デメリットのほか、面接でのポイントや企業事例などを解説していく。

「ポテンシャル採用」の意味や注目されている背景とは

「ポテンシャル採用」とは、現状の経験やスキルではなく、人柄や素養・資質などの潜在的な能力や将来性・可能性といったポテンシャルを評価する採用方法だ。即戦力人材の採用ではないため、入社後には能力開発の機会を設けることが前提となってくる。当然ながら、ポテンシャルをどう定義するかは、それぞれの企業によって異なるが、ターゲットとなる層は20代〜30代前半の若手人材が中心といえる。

「ポテンシャル採用」の目的は、優秀な若手人材の獲得だ。採用の間口を絞り込んでしまうと、どうしても同じような人材しか採用しなくなってしまう。間口を広げ、新たな層を掘り起こしていくのが狙いだ。

●「ポテンシャル採用」が注目されている背景について

なぜ、「ポテンシャル採用」が注目されているか。背景としては若手社員の不足と採用競争の激化の二点が挙げられる。

若手人材の採用を手控えていた企業では今、若手社員の不足が深刻化している。年齢構成のバランスが大きく偏っており、社内を見渡すとベテラン社員が大半であったりすることも珍しくない。年齢構成のバランスを考えると、若手社員の獲得は必須となる。ただ、新卒採用も中途採用も競争が激化しており、人材を確保することは容易ではない。特に慢性的に人材が不足しているエンジニアは難易度が高い。それだけに、経験を問わずに自社に迎え入れ、育成することを前提とする「ポテンシャル採用」が注目を集めている。

人事担当者がおさえておきたい「ポテンシャル採用」のメリットとデメリット

「ポテンシャル採用」が自社の採用課題の解決に役立つかどうかを検討するためにも、どんなメリット・デメリットがあるのかをしっかりと理解しておきたい。

●メリット

・優秀な若手の採用
「ポテンシャル採用」では応募のハードルを低く設定するので、対象者の範囲が広がる。その分、応募者の増加が期待でき、優秀な若手人材に出会える可能性は高くなる。近年、若手人材は転職に対して、全く抵抗を感じなくなっている。特に成長意欲にあふれ、仕事に対して高いモチベーションを持つ若手社員は、大手企業を飛び出し中小企業やベンチャー企業に転身するケースが多々見られる。中小企業にとっては、これまで応募してもらえなかったような優秀な若手人材を獲得できるチャンスがあるというわけだ。

・すでにビジネスマナーが身についたうえでの採用
「ポテンシャル採用」で入社した社員は、すでに社会人としての基本的な心構えやスキル・一般常識を身につけている。研修の回数が少ない分、コストや時間は新卒採用よりも遥かに抑えることができる。

・若手の応募を集めやすい
厳しい人材獲得競争の時代だけに、採用基準を高く設定すればするほど応募のハードルは高くなってしまい、母集団を形成しにくくなる。逆に、経験やスキルではなく、意欲や人間性を評価するということになれば、門戸が広がるので若手は応募しやすくなる。

・企業内の高齢化を防ぐことができる
少子化が進む日本では、企業における社員の高齢化が進んでいる。特に顕著なのは、中小企業だ。企業が安定的に成長していくためにも、若手人材を確保していかなくてはいけない。「ポテンシャル採用」の導入は、そうした人材の獲得に有効となってくる。

・ダイバーシティやイノベーションへの期待
応募の間口を広げることで、幅広い業種・宿主から応募を集めることができる。それだけに、既存の社員にはない、さまざまな経験や考え方を持った人材と出会える可能性が高くなる。結果的に社内に多様性が生まれると同時に新たなアイデアや知見も得られ、イノベーションを加速させていくことができる。

●デメリット

・育成コスト
「ポテンシャル採用」で迎えられた社員は、社会人としての基礎的なマナーやスキルを持ち合わせていたとしても、実務経験はない。入社してすぐに戦力として活躍できるわけでないため、必要な業務知識・スキルを習得するための教育・研修を実施する必要がある。特にエンジニアの場合には、専門性がかなり要求されるので他の職種と比較して育成コストが高くなりがちだ。

・早期の離職リスク
一度でも転職を経験している人は、転職に対する抵抗感が薄れるので入社後に早期離職する可能性もありえる。特に、「辞め癖」のある人は要注意だ。「自分に合わない」と思うと躊躇なく会社に見切りを付けてしまう傾向がある。

・前職のやり方に対する固執
前職での仕事の進め方やルールが染みついていて、新たな職場のやり方に対応できなくなってしまうことだけは避けたい。これでは、ミスやトラブルが起きる可能性が高いだけでなく、周囲のメンバーとも馴染めなくなってしまう。選考の際に、素直さや柔軟性を持ち合わせているかを見極めるのはもちろん、教育・研修の場で自社のスタイルに早く慣れてもらえるよう働きかけていくのが良いだろう。

採用成功に向けた「ポテンシャル採用」のポイント

●育成が前提という認識を持つ

「ポテンシャル採用」でターゲットとなるのは、業界未経験または職種未経験といった人材だ。当然ながら、人材育成を前提とした採用になってくるため、必ず教育・研修の機会を持たなければいけない。そこまで踏み込んだ採用計画を立案するとともに、認識のずれがないよう、配属部署と理解を共有しておく必要があるだろう。

●研修の準備をしっかり整える

「ポテンシャル採用」で迎えた社員を戦力化していくためには、しっかりとしたサポート体制を構築しなければならない。できれば専任の育成担当者を配置し、スキルアップに向けた研修を実施したい。社内だけだと体制的に困難だという場合には、オンラインによる外部研修を活用するのも良いアイデアだ。

●あらかじめ採用基準を明確にする

ポテンシャル重視と言っても、企業によって判断基準に違いが出る。そこで、求職者がイメージできるよう、あらかじめ採用基準を明確にし、開示することが欠かせない。ミスマッチを減らすためにも、「どんな人材を求めているのか」、「どのような素養や資質、人間性を評価するのか」、少なくともこの二点は固めておきたい。

●キャリアビジョンをすり合わせる

面談や採用面接の場で行っておくべきことの一つに、キャリアビジョンのすり合わせがある。「入社後にどんなキャリアビジョンを望んでいるのか」、「それが実現できる環境であるのか」を相互に確認しておけば、ミスマッチは防げるはずだ。

応募者に面接や選考で確認しておきたい6つのコト

「ポテンシャル採用」で面接や選考で何を確認すれば良いのか。以下の6つを提示したい。

(1)具体的な入社後のキャリアビジョン

入社後のキャリアビジョンを持っているかどうかはぜひとも確認しておきたい。中長期でどんなキャリア目標を掲げているのか、その実現のためにいつまでにどんなスキルを身につけたいと考えているのか。どのような役割や役職を担いたいかなどを一つひとつヒアリングしていこう。

(2)仕事に対する関心や成長への意欲

「ポテンシャル採用」で迎える人材には、業務に関する経験や知識はほぼないと思っていい。志望動機や前職の退職理由などに加えて、会社の事業内容や業務にどれだけ興味を持っているかも確認しておきたい。仕事に対する熱意や成長意欲があるかを把握できるからだ。例えば第二新卒向けには、学生時代の経験を聞き出すのも良いかもしれない。

(3)社会人としての基本的なスキル

言葉遣いやマナーなど社会人としての基本的なスキルを持ち合わせているかも確認しておく必要がある。身だしなみや振る舞い、会話のやりとりである程度は見抜けるはずだ。もちろん、それらが少しでも不足していたら採用しない方が良いということではない。将来性がある人材なら、少し足りない点があっても教育・研修を通じて補うようにしたい。

(4)人物面

素直さや柔軟性、コミュニケーション力があるかといった人物面も確認しておこう。いずれも、良好な人間関係を構築したり、新しい環境にスピーディーに適応したりするためには不可欠な要素になってくるからだ。こうした性格の社員は、上司や先輩のアドバイスにもしっかりと耳を傾けていけるので、成長スピードも早い。

(5)社風とのマッチング

「既存の社員と仲良くやっていけそうか」、「会社の経営理念に共感してもらえるか」など社風とのマッチングも抑えておこう。いずれも、面接などで確認しよう。

(6)前職の退職理由と今回の転職理由

前職を辞めた理由や今回の転職理由もぜひ確認しよう。退職理由からは、本人が何に不満を抱いていたのかがわかり、妥当性があったかも判断できる。そのやりとりを聞いていれば、「辞め癖がありそうか」、「セルフマネジメントができそうか」もある程度は見極められるはずだ。また、今回の転職理由からは、今後どんな仕事をしていきたいのか、そのためにどのようなスキルを身につけたいのかといったキャリア形成に向けた考え方が見えてくるので必ず聞くようにしたい。

気になる「ポテンシャル採用」の企業事例

●ヤフー

ヤフーでは、2016年10月から新卒一括採用を廃止している。新卒、既卒、第二新卒も「ポテンシャル採用」という同じ土俵で採用をしている。年齢制限は設けられており、入社時18歳以上、応募時30歳以下だ。

ヤフーが「ポテンシャル採用」を導入したのは、「第二新卒や既卒の選考機会を増やしたい」、「海外留学者や博士号取得者などを含めて、応募者の多様化に対応していけるよう柔軟な枠組みで採用を行いたい」といった理由に基づく。現在はエンジニアだけでなく、デザイナー、営業やコーポレート部門などあらゆる職種で導入されている。

●サイボウズ

サイボウズでも「ポテンシャル採用」を行っている。サイボウズに興味があれば、必要なスキルを持ち合わせていなくても応募ができる。あくまでも、一人ひとりの「やりたい」、「できる」という気持ちを最大限に評価している。既に営業やカスタマーサービス、人事などで「ポテンシャル採用」での入社実績がある。
人材の獲得競争が激しいなかで、母集団を増やすことで優秀な人材に出会える確率を高めていける「ポテンシャル採用」。もちろん、メリットだけでなくデメリットもあるが、「自社にフィットしているのでは」と判断できるならば、導入する価値は大いにあるだろう。人材不足の解消、年齢バランスの是正、将来の幹部候補採用にもつながるだけに、採用成功に向けた一つのヒントにしてもらいたい。
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