今回は前回に引き続き長時間労働の対策について、掘り下げてみる。

長時間労働を原因とする過労死・過労自殺、特にメンタルヘルス不全等による労災請求は増加の一途であり、サービス残業(賃金不払残業)に対する労働基準監督署からの是正勧告も年々増えているのは既知の事実である。
単に制度面を変えても根本解決には至らず、苦慮している企業が多いのが現実だ。
第8回 長時間労働(後編)
さて、昨年度、様々な業種の企業の方に参加をいただいて、会議の仕方を変えて長時間労働を是正するといった面白い研究をした。私はその研究チームのリーダーを務めたのだが、会議にかかわる時間(事前準備・会議・事後作業)に着目し、無駄な会議の排除、会議の効率化、会議の質の向上、会議のIT化と言う4つのテーマで労働時間の削減をするというものだ。

皆さんは1週間のうち、会議に関連する時間にどれくらいを費やしているだろうか。
研究対象の企業によると、中間管理職は会議関連の業務に週の2/3ほどの時間を費やしており、部下も会議に必要な資料の作成や会議室の調整、議事録の作成など、週の1/3ほどの時間を拘束されている状況だった。

その問題を解決するために、例えば会議の議事録は自動的に枠組みができるツールを活用する。このツールは会議の開催通知を出席者に送り、アジェンダを入れてもらうことで、自動的に議事録の枠組みができ、見出しに沿って入力をすれば会議内に議事録を作成することができる。これでアジェンダを送信したり、議事録の枠組みを作成したり、会議後に議事録をまとめたりと無駄な作業を省くことができ、効率化がはかれる。

また、会議自体の在り方として、報告だけの会議は削減することはもちろん、会議室が予約できないから会議が出来ないなどの非生産的な会議は、オープンスペースという共有の空間を「会議の場」にすることで、いつでも会議ができ、意志決定のスピードをあげ生産性を向上させることができるだろう。

さらに、最近ではWeb会議に変わる新たなツールを活用することもできる。会議室が使えない、オープンスペースも確保できない、といった場合でも、コラボレーションツールを使うことにより、仮想の空間で必要な時に横断的な組織で集まり、新しいものを作り上げることができる。こういったツールを使えば、どこで働いているかは問題にならないため、在宅でもモバイルワークでも生産性を上げることが可能なのである。

テレビ会議やWeb会議はワークスタイル変革、コラボレーションツールは働き方改革と位置付けられている。

これらのツール導入による無駄な時間削減は劇的なものであり、残業時間削減方法の一つとして考慮すべき対策だ。その中でも、特に無駄な会議を診断できるチェックシートを使ったツールは、意味がないと思っている会議に対して、「辞めるための根拠」を欲していた管理職には好評である。しかも、会議を辞めることで、家賃や光熱費、会議参加者の時給換算をして削減費用を計算すれば、年間でかなりのコストが削減できる。

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