初任給引き上げの波は大企業から中堅企業へ

前掲の内定辞退理由のフリーコメントにもありましたように、「初任勤務地」「配属先」は近時の学生の大きな関心事となっています。入社後の初期配属は「配属ガチャ」と称されている中、自分が希望しない配属は「ハズレ」と捉えられ、内定辞退や早期退職の原因にもなっています。近年は、本人に配属先を伝えるタイミングを早める企業が増える傾向にありますが、2026年卒採用ではどうだったのでしょうか。配属先を伝える時期について確認したところ、全体では、「選考途上」が23%(前回29%)で最も多く、「年内」(「選考途上」~「内定式(または10月1日)後、年内」の合計)は40%でした[図表12]。「年内」に「年明けから入社式までの間」を加えた「入社前」は56%と、6割近くになります。

従業員規模別で見ると、前回調査で「選考途上」が30%となっていた大企業は18%に減少し、代わりに「年明けから入社式までの間」と「新入社員研修終了時」がどちらも21%で最多となりました。「年内」は39%で全体とほぼ同じ割合となっている一方、「入社前」は60%に上り、こちらは全体より高い割合となっています。

中堅企業では、「選考途上」と「新入社員研修終了時」がどちらも20%で最多となり、「入社前」が51%と約半数となっています。一方、中小企業では、「選考途上」が29%と3割程度で最多となっており、「年内」が45%と、他の規模よりも高い割合となっています。配属先を当人に伝え、納得してもらった状態で選考をしている企業が多いようです。[図表5]の内定辞退率「0%」は、中小企業が29%で最も高い割合となっていましたが、この配属先を伝える時期も影響しているのかもしれません。
[図表12]2026年卒採用の配属先を伝える時期
新卒採用社員のオンボーディングについての課題の有無を確認したところ、全体では「課題を感じている」(「ある程度感じている」と「強く感じている」の合計)が42%で、「課題を感じていない」(「まったく感じていない」と「あまり感じていない」の合計)の19%の2倍以上となっています[図表13]

従業員規模別で見ると、大企業では「課題を感じている」36%に対して「課題を感じていない」は27%と、その差は10ポイントもない一方、中堅企業では「課題を感じている」46%に対して「課題を感じていない」は21%と25ポイント差、中小企業に至っては「課題を感じている」44%に対して「課題を感じていない」は15%と、29ポイントもの差があります。中堅・中小企業では、採用時に苦戦しているだけでなく、入社後の早期離職にも課題を抱えている企業が多いことがうかがえます。
[図表13]新卒採用社員のオンボーディングについての課題
最後に、ここ数年、企業の新卒初任給の引き上げ合戦が展開されていますが、2026年4月入社者(大学学部卒)の初任給の引き上げについてはどう考えているのかを聞いてみました。本調査の回答期限が12月初旬ということもあり、全体では「未定」が29%と3割近くありましたが、それを除くと「据え置き」が22%で最多となりました[図表14]。引き上げ幅としては、「5千円以上~1万円未満」(17%)が最も多く、次いで「2千円以上、5千円未満」(14%)が多くなっています。中には、「5万円以上」も1%ながらありました。

従業員規模別で見ると、意外にも「未定」の割合は大企業が最も高く、39%と4割程度、中堅企業と中小企業はともに25%となっています。「据え置き」とする割合は、大企業と中小企業ではそれぞれ24%、25%と4分の1程度で最も多くなっていますが、中堅企業だけは18%と2割を下回り、代わりに「5千円以上~1万円未満」が23%で最多となっています。「5千円以上」(「5千円以上~1万円未満」~「5万円以上」の合計)で比較すると、大企業は18%で最も少なく、中堅企業44%、中小企業25%と、中堅企業が最も高くなっています。ここ数年の初任給引き上げは大企業を中心に動いていましたが、その動きが一段落して、中堅企業の初任給引き上げ合戦が本格化してきている感があります。

また、大企業における「据え置き」の多さから見ると、毎年コンスタントに数千円ずつ引き上げていた昭和時代のような考え方ではなく、ある程度引き上げたらそれ以降の数年間はしばらく据え置くという企業が少なくないのかもしれません。その代わり、引き上げる時は数千円単位ではなく、数万円単位で一気に引き上げるという考え方です。
[図表14]2026年4月入社者(大学学部卒)の初任給の引き上げ幅
ところで、最近の企業の動きを見ていると、「転勤の有無」により基本給に差をつける考え方が見直されてきているようです。その背景には、「転勤あり」コースで採用され、「転勤なし」コースよりも高い基本給が設定されていたとしても、結果的に転勤がなかった場合には「転勤なし」コースの社員と同じ待遇であるべきなのに、当初の設定どおりの高い基本給を受給していたのは不平等ではないかという考え方があります。それを避ける方法として増えてきているのが、実際に転勤した人にのみ割り増し基本給を付与しようという考え方です。確かに、理にかなった考え方だと思います。

次回は、「2026年&2027年新卒採用動向調査」の中から、2027年卒採用に関する調査結果を紹介します。

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