伊豆高原の澄み切った空気と柔らかな温泉の湯気に包まれながら、企業理念と人の成長について語り合う2日間。11月8日(土)から9日(日)にかけて実施されたProFuture主催の第1回「企業視察ツアー」では、全国430店舗のパチンコホールを展開する株式会社ダイナムの社内研修「人生大学」をテーマに、他社の人事担当者が集い、理念伝承とエンゲージメント向上の仕組みを学んだ。非日常の環境の中で心身ともにリフレッシュしながら、組織文化の浸透や従業員の主体性醸成について深く考える時間となった。本稿では、その模様と同社の「人生大学」についてお伝えしよう。
研修

喧騒から離れ、日々の疲労を癒しながら情報交換をする有意義な機会に

ProFuture株式会社は11月8日(土)から9日(日)にかけて、1泊2日の研修合宿「企業視察ツアー」を実施した。記念すべき第1回目は、全国約430店舗のパチンコホールを展開する株式会社ダイナム(以下、ダイナム)で、30年間実施され続けている企業文化伝承プログラム「人生大学」の視察だ。

『企業視察ツアー~株式会社ダイナム社内研修に学ぶ』と銘打った今回の企画では、株式会社HRファーブラ 代表取締役の山本紳也氏を講師に招き、ダイナムの「人生大学」という企業理念伝承と従業員の主体性醸成のための研修プログラムを軸とし、12名の参加者(他社の人事担当者)が企業理念や文化の浸透について深いディスカッションを重ねた。

さらに、今回はダイナムのご協力により、同社の保養所である「天麗301伊豆高原保養所」にて開催。喧騒から離れた伊豆高原の自然の中で、健康的な食事や露天風呂つきの温泉、ゆったりできる和室、図書館や健康増進コーナーつきの素晴らしい施設の中で日々の疲労を癒しながら、他社の人事と交流を深め合いつつ情報交換をする、非常に有意義な経験となった。

なお、ダイナムの「天麗301伊豆高原保養所」は、同社の福利厚生としてダイナム社員とその家族も利用が可能で、さらに地域貢献として近隣企業および市民サークルの方を対象に研修室のレンタルもしているという。

1日目の講義は和やかな空気の中で始まったが、ディスカッションに移ると一変。3つのテーブルそれぞれで意見が飛び交い、笑いや頷きが絶えない様子がうかがえ、話すたびに新たなアイデアや気づきが生まれるような、会場全体が前向きな熱気に包まれていた。

講義を終える頃には、参加者の表情に充実感が滲んでいたのが印象的だった。その後も、食堂で食事を共にしながら情報交換が続き、お待ちかねの夜の懇親会ではさらに打ち解けた様子で親交を深めていた。

2日目には、前日の「人生大学」の講義からの学びを各グループ内で共有した後、グループごとに全体共有するとともに、参加者それぞれが自社の理念浸透に向けた取り組みを振り返りつつ、今回の学びをどう自社で生かしていけるかを一人ひとりが発表して、講義が締め括られた。目的を「理念浸透を推進する」ことにした場合、ストレートに企業理念の解説から入ってしまう研修を行いがちであるが、それがいかに意味のない方法であるのかを考えさせる、貴重な機会となったのではないだろうか。
研修

株式会社HRファーブラ 代表取締役 山本紳也 氏のファシリテートのもとで講義が進行した

集合型研修「人生大学」の理念伝承とエンゲージメント向上の仕組み

今回のメインテーマとなったダイナムの「人生大学」とは、従業員一人ひとりが自らの人生を見つめ直し、主体的にキャリアを築いていくための研修プログラムで、同社の人財育成における根幹を成し、同社の象徴ともいえる取り組みだ。1997年から約30年間続き、時代の移り変わりと共に内容や主目的が変わってきた。
人生大学とは

資料:株式会社ダイナム

1997年の開講当時は、創業者である佐藤洋治氏が直接会社の方向性を語り、従業員の意識統一を図っていた。ところが、創業者が第一線から退いた後、新たな課題に気づかされたのだという。それが、経営層の強い責任感ゆえの従業員の「ただ指示に従っていればよい」という会社依存の体質や当事者意識の欠如、エンゲージメントの低下である。

そうした課題に対し、現在は「心と身体の健康の回復」「自身の人生を見つめ直す時間の提供」「従業員のキャリア自律とウェルビーイングの促進」の3つを主な目的として、「人生大学」は実施されている。その目的の先にあるのが、「企業理念伝承」「主体性醸成」「持続的成長」という、人事・教育の責任部門としての3つの使命だ。

現在の内容は、全階層・全世代参画型の3泊4日の合宿形式。参加者は階層や年齢、職種を問わず、役員も毎回誰かが参加し、全社員が4~5年ごとに必ず参加する。非日常の環境に身を置きながら、ウォーキング・瞑想・読書・食生活の見直しを通じて、心と身体をリフレッシュし、自分自身のキャリアや生き方を深く考える時間を持つ。会場となる「天麗301伊豆高原保養所」には、健康的な食事や温泉、図書館、健康増進コーナーなど、心身のウェルビーイングを支える環境が整っているのも魅力だ。

同社の人事部 部長 神林信也氏は、「広い年代の人たちがともに過ごすことになる。そうすると、知らず知らずのうちに、後輩が役員や先輩の背中を見たり、発言を聞いたりする中で、キャリアについて考える素地が作られていく」と、集合合宿型研修の価値を語る。
人生大学とは

株式会社ダイナム 人事部 部長 神林信也 氏

カリキュラムの中心となるのは、「自分の人生をどう生きるか」というテーマに基づく対話と学びの時間である。ダイナムでは、「人生大学」の講師を外部から呼んだことはなく、「企業文化伝承の民主化」を行っている。研修運営・講師・エヴァンジェリスト・スポットプログラム講師は、すべて従業員から選出されるのだ。

このカリキュラムでは、先輩社員が語り部となり、自らの体験や葛藤を共有する。生の経験談を耳にすることで、従業員にはより身近でリアルな学びが生まれ、「自分自身が会社の歴史を作る当事者である」という当事者意識が芽生えるのだそうだ。一方で、語り部を務める社員も、「自分の話で会社の何かが変わる、誰かが変わる」といった経験をすることで、『自分がロールモデルである』という意識が生まれ、後進に良い背中を見せていき、自分自身の視座を上げるといった姿勢の変化が期待できる。
施策①企業文化伝承の民主化

資料:株式会社ダイナム

さらに、2023年からは「対話式グループワーク」を導入。「座談会」と称して、社長をはじめとする役員がグループワークに参加し、NGワードなしの率直な対話を行う。従業員が会社の方向性について意見を交わし、経営者から直接フィードバックを得ることで、会社の方向性を共有しながら、従業員が自分事として会社について考える。それにより「自分たちで会社を作っていく」というキャリアオーナーシップを育むことを狙いとしている。
施策②未来を共創する役員対話式アプローチ

資料:株式会社ダイナム

実際に「人生大学」の効果は、エンゲージメント指標の飛躍的向上に見て取れる。受講後は『ダイナムで働くことに誇りを感じている』『ダイナムの経営理念やビジョンへの誇り』『今の仕事にやりがいを感じている』といった項目が軒並み約120%上昇。また、「自分が会社の歴史を作る当事者意識が生まれました」「以前はただ仕事をしていましたが、現在は自分のキャリアを自分で決める意識があります」「健康増進コーナーを活用し、毎日少しずつ動く習慣ができ、それが仕事への集中力向上につながりました」といったポジティブな声も聞かれるそうだ。

取締役の望月晴子氏は、「人生大学に参加すること自体が、ダイナムの企業文化に触れるということ。“ダイナムってこういう会社なんだ”ともう一度見つめ直す機会になり、企業理念も自然に腹落ちする。だからエンゲージメントが上がっていく、そういう設計になっています」と、その構造を説明する。
施策②未来を共創する役員対話式アプローチ

株式会社ダイナム 取締役 望月晴子 氏

さらに、定性面と定量面で満足度を分析し、毎年丁寧に振り返ることで、翌年の研修設計を改善しているのだという。今後は「人生100年時代」を見据え、キャリアだけでなく、健康・お金・介護など人生全体をテーマにした講座も拡充予定だそうだ。

「人生大学」は、創業者の理念を受け継ぎながら、時代の変遷に相応しい形で進化を続けてきた。そこに流れる根幹の理念は、「人の成長こそが企業の成長を実現する源泉だ」という考え方だ。従業員一人ひとりが自らの人生を主体的に描き、会社とともに未来を創る——。その姿勢こそが、ダイナムの「信頼と夢を育む100年の挑戦」を支える原動力になっている。

参加者の声とまとめ

今回の企業視察ツアーは、単なる他社事例の見学に留まらず、自社の課題や新たな研修施策のヒントを持ち帰る絶好の機会となったはずだ。参加した他社の人事担当者の満足度は総じて高く、以下のような感想が聞かれた。

「人生大学は単なるキャリア教育と思いきや、理念継承やエンゲージメント向上につなげておられ、そういうやり方があるんだという気づきになった。研修施設でのホスピタリティについても素晴らしく、研修参加以後、まさにダイナムファンになった」

「広いお部屋、温泉、美味しい食事、研修室の靴を脱ぐスタイル&床暖、緑に囲まれた環境など、体験したすべてが『日常を離れて自分を見つめるために』設計されていることに感動した。従業員に圧をかけるのではなく、自然と内省に向かわせるための仕組み・設計は見習うところばかりだった」

「日頃せわしなく働いているせいか、今回のようなゆるりとしたプログラムが絶妙に心地よく感じた」

「多くの学びと気づきをいただいた。また、とても良い環境の中、リラックスして受講することができたこともあり、よいディスカッションをすることができた」

「見ず知らずの方々と一泊2日で過ごし企業理念を考えるということがスリリングだった」

「各社人事が抱える課題は、持ち寄ることで、社内だけのリソースで考えるよりも数多くの気づきが得られる」

「『経営理念の浸透』という共通課題を通じて、参加者の一体感の醸成(研修内容、懇親会含む)が図れ、充実した研修に結びつけられた」

今回の企業視察ツアーのメインとなったダイナムの「人生大学」は、単なる研修という枠を超えて、人を中心とした企業経営そのものを体現している。自社の人財育成における象徴と言える「人生大学」を大事に育て、紡いでいることが従業員にも伝播し、それが自然な形で理念伝承やエンゲージメント向上につながっているのだろう。研修内容の設計も重要だが、いかに人と人が響き合う場を作るか――それが企業文化浸透のための鍵と言える。
施策②未来を共創する役員対話式アプローチ

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