マーサージャパン株式会社は2022年10月26日、「キャリア自律」に関する意識調査の結果を発表した。調査期間は2022年7月29日~8月2日で、従業員100人以上の民間企業および官公庁に勤める20歳~50歳代の正社員・正職員の3,646名から回答を得た。調査から、キャリア自律度が高い層の特徴や、キャリア自律を高めるための施策などが明らかとなった。
ジョブ型雇用に必要な“キャリア自律度”の高い層は全体の1割程度にとどまる。有効施策は「上司のビジョン・戦略共有」など

「キャリア自律度」の高い層の割合や職種とは?

国内企業では近年、企業が提示する“ジョブ”について、求職者と合意の上で雇用関係を結ぶ「ジョブ型雇用」が増加している。ジョブ型雇用は、「職務」に見合った報酬を提供する取引ベースの雇用形態だ。ジョブ型雇用を成功させるには、ビジネスパーソン個人が自身のキャリア選択と構築に責任をもつ「キャリア自律」が重要と考えられる。そうした中、マーサージャパンは、企業経営の視点から「キャリア自律」に関する実態を調査し、結果の分析を行っている。

まず同社は、「キャリア自律度に応じたグルーピングと構成比」を分析した。その結果、「キャリア自律度が高い層」(キャリアを自己選択し、キャリアの構築を自身の責任と考える人材)は全体の11%にとどまった。

また、キャリア自律度の高い人材は主に、企画・マーケティング・インターネット・ゲーム・仕業等の専門職に出現する割合が高かったという。
ジョブ型雇用に必要な“キャリア自律度”の高い層は全体の1割程度にとどまる。有効施策は「上司のビジョン・戦略共有」など

「キャリア自律度の高さ」が年収にも影響か

続いて同社は、「従業員5,000人規模の日系企業勤務」、「営業の主任・係長クラス」、「35歳の男性(勤続13年)」、「大卒・東京都在住」に属性を絞り、キャリア自律と個人年収の関連性を分析している。すると、「キャリア自律度が高い層」の平均年収は744万円、「キャリア自律度が低い層」の平均年収は689万円だった。
ジョブ型雇用に必要な“キャリア自律度”の高い層は全体の1割程度にとどまる。有効施策は「上司のビジョン・戦略共有」など

キャリア自律度が高い層は「理念・パーパスへの共感」や「成長機会」を求める傾向に

最後に同社は、「働くうえで、特に大切にしているもの」を尋ねた。すると、「キャリア自律度の高い層」は「理念・パーパスへの共感」や「成長機会」、「達成感のある仕事」を重視する傾向が明らかとなった。一方で、「キャリア自律度の低い層」は「雇用の安定性」や「働く仲間との関係性」を重視する傾向にあった。

また、「キャリア自律度が高い層/低い層」が共通して重視しているものは「ワークライフバランス」や「満足いく報酬水準」だった。
ジョブ型雇用に必要な“キャリア自律度”の高い層は全体の1割程度にとどまる。有効施策は「上司のビジョン・戦略共有」など

“キャリア自律を高める施策”として「上司のビジョン・戦略共有」が有効か

また、同社が「キャリア自律を高めるために有効なもの」を尋ねたところ、“ソフト施策”では「上司のビジョン・戦略共有」や「丁寧なコミュニケーションおよびフィードバック」があがったという。一方、ハード施策では「キャリア機会の公開や拡張(ポジション公開、副業)」、「能力・キャリア開発支援」があがっている。
近年、「ジョブ型雇用」が人材マネジメント改革において重要なテーマとなっている。しかし「ジョブ型雇用」において必要とされる「キャリア自律度が高い」とされる人材は、全体の1割程度にとどまる実態が明らかとなった。VUCA時代においては、従業員の「キャリア自律」を促すような施策を講じることで、企業価値を高めていけるのではないだろうか。

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