「有期契約社員なら、正社員より簡単に辞めてもらえる」と考えていないでしょうか。私傷病による長期欠勤が続き、勤務を再開しても車の運転は難しい。このような社員を、元の仕事ができないとして契約期間の途中で解雇することには、正社員の場合とは異なる慎重さが求められます。有期契約の途中解雇に必要な「やむを得ない事由」とは何か。経営者・人事担当者が、解雇を決める前に確認すべきポイントを、具体例から解説します。

長期欠勤する有期契約社員を契約途中で解雇できる? 契約途中の解雇に必要な「やむを得ない事由」の判断基準

「有期だから切りやすい」はむしろ逆

「正社員ではなく有期契約社員だから、問題があれば契約の途中でも辞めてもらいやすい」。経営者や人事担当者から、このような話を聞くことがあります。しかし、この理解には少々注意が必要です。

労働契約法第17条は、「やむを得ない事由」がなければ、契約期間の途中で解雇できないと定めています。そして、この「やむを得ない事由」は、正社員など期間の定めのない社員を解雇する場合よりも厳しく判断されます。

なぜなら、有期労働契約は、会社と社員が「この期間は雇用を続ける」と約束した契約だからです。そのため、会社は、原則として契約期間が満了するまで雇用を継続しなければならないのです。

また、30日前に解雇を予告すれば解雇できる、という理解も注意が必要です。解雇予告は手続上のルールにすぎません。途中解雇を行う会社は、契約満了を待てないほどの事情があることを説明できなければなりません。

「車の運転はできない」だけで解雇できるのか

例えば、私傷病によって長期欠勤していた有期契約社員から、勤務を再開したいとの申出があったとします。主治医の意見書には、「勤務は可能だが、車の運転は避けること」と書かれています。会社は、従来の仕事をすべて行えないとして、途中解雇できるのでしょうか。

この場合、単に「従来の仕事を100%できない」というだけで、「やむを得ない事由」があるとして勤務再開を認めず、直ちに解雇するという判断をするべきではありません。

まず確認するのは、運転が契約上どの程度重要な業務なのかという点です。運転手として採用した社員と、営業先への移動手段として車を使っていた社員とでは、同じ運転制限でも意味が異なります。労働条件通知書や労働契約書に記載された業務内容とその変更範囲、実際の担当業務、本人の能力や経験、社内の配置状況も確認します。

けがや病気による制限が障害者雇用促進法上の障害に当たる場合には、会社の過重な負担とならない範囲で合理的配慮を検討する必要があります。ただし、会社に存在しない仕事を新しく作ることまで、当然に求められるものではありません。

もちろん判断には医学的な情報が重要です。本人の同意を得たうえで、勤務時間、担当業務、運転や機械操作の有無などを主治医に伝え、具体的な意見を求める必要もあるでしょう。なぜなら、主治医は患者の治療を担う一方、必ずしも職場の実情を把握し、契約上求められる仕事を遂行できるかまで判断する立場にはないことが多いからです。そのため、「勤務可能」という結論だけでなく、何ができ、何を避けるべきかを具体的に確認することが大切です。また、産業医を選任している会社は、産業医の意見も聞くようにします。

本当に契約満了まで待てないのか

以上の結果、安全に担当できる業務がなく、勤務の再開を認めることは難しい、となった場合でも、本当に契約期間の途中で解雇しなければならないのか、最後にこの点を検討します。

例えば、欠勤扱いのまま契約期間満了まで雇用する場合、欠勤中が無給であっても会社にとっては、社会保険料の事業主負担分や在籍管理の手間が生じ、代替要員を暫定的に確保し続けなければならない場合もあります。

このような要素も考慮し、残りの契約期間がどの程度あるのか、契約期間中での回復の見込みがあるのか、欠勤によって業務にどのような支障が生じるのかを具体的に確認します。

契約の残存期間が短く、会社の負担も限定的であれば、「契約満了まで待てない」と説明することは難しいかもしれません。

裁判例では、私傷病による休業が約1年8か月に及び、契約期間中の回復も見込めない一方、会社が特例の有給欠勤や別の事業所での復帰を検討していた事案で、途中解雇が有効とされました(東京地裁令和4年9月12日判決)。これに対し、歯科医長を医療安全上の問題などから途中解雇した事案では、問題とされた行為の多くが証明されず、十分な注意・指導などもなかったとして、「やむを得ない事由」が否定されています(東京高裁平成29年8月30日判決)。

このように、有期契約の途中解雇では、解雇理由となる事実が実際にあるか、それが契約満了を待てないほど重大なものか、解雇を避けるための検討を行ったかが問われます。今回のような事例でも、「長期欠勤だから」「運転できないから」と結論を急いではいけません。欠勤期間、回復の見込み、契約満了日、担当可能な業務、会社が検討した配慮、欠勤継続による負担などを整理し、「やむを得ない事由」があるかを慎重に判断しましょう。

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