「人材開発支援助成金」は、従業員の人材育成やスキルアップを図る企業を支援する助成金です。“職務に関連する専門的な知識や技能を習得させるための教育訓練等”を行った場合に、訓練に従事した時間分の賃金や訓練にかかった経費の一部が助成されます。2025(令和7)年度は、訓練の種類などによって異なる6つのコースが用意されており、中でも幅広い企業で活用できるのが「人材育成支援コース」です。この記事では、人材育成支援コースを中心に、昨年度からの変更点も交えて、制度の概要と申請の流れについて解説します。
2025年度(令和7)の「人材開発支援助成金(人材育成支援コース)」について昨年からの変更点を交えて解説

「人材開発支援助成金(人材育成支援コース)」の概要

人材育成支援コースでは、計画に沿って職務に関連する次のいずれかの教育訓練等を実施した場合に、助成が受けられます。

●人材育成訓練:10時間以上のOFF-JT
●認定実習併用職業訓練:新卒者等のために行う、OJTとOFF-JTを組み合わせた訓練
●有期実習型訓練:有期契約労働者の正社員化を目的とした、OJTとOFF-JTを組み合わせた訓練


助成額と助成率は次のとおりとなっています。
「人材開発支援助成金(人材育成支援コース)」の助成額と助成率
訓練修了後に5%以上の賃上げなどを実施した場合には、賃金助成・経費助成ともに加算が受けられます。「認定実習併用職業訓練」と「有期実習型訓練」の場合は、OJTの実施に対する助成もあります。支給額は次のとおりです。
認定実習併用職業訓練と有期実習型訓練の場合の、OJTの実施に対する助成
申請には訓練と労働者それぞれに複数の要件がありますが、主なものは次のとおりです。

●職務に関連した専門的な知識および技能を習得させるための訓練であること
●訓練ごとに規定された時間以上の訓練を行っていること

・人材育成訓練:1コース10時間以上
・認定実習併用職業訓練:総訓練時間数が1年当たりの時間数に換算して850時間以上
・有期実習型訓練:総訓練時間数が6ヵ月当たりの時間数に換算して425時間以上
●対象となる従業員が次の期間に雇用保険の被保険者であること
・人材育成訓練、認定実習併用職業訓練:訓練実施期間中において
・有期実習型訓練:訓練の終了日または支給申請日において
●対象者の訓練受講時間が規定の割合以上であること

申請に必要な訓練と労働者それぞれの要件
なお、人材育成支援コースの各訓練を修了後に正社員転換した場合は、「キャリアアップ助成金(正社員化コース)」の申請も可能となります。

2025年度の人材育成支援コースの変更点

2025年4月より、次のような改正が行われています。

(1)賃金助成額の拡充

最低賃金の引き上げなど昨今の賃金上昇を踏まえ、賃金助成額が引き上げられました。
引き上げ前/引き上げ後の賃金助成額

(2)有期契約労働者等に対するメニューの整理・重点化と経費助成率の見直し

これまで、「人材育成訓練」と「有期実習型訓練」では、有期契約労働者等を正社員化した場合としなかった場合で経費助成率が分かれていました。しかし2025年4月以降は、「有期実習型訓練」において、訓練修了後に対象者を正社員化することが支給の要件となっています。
有期契約労働者等に対するメニューの整理・重点化と経費助成率の見直し
ただし、有期実習型訓練を行ったものの、結果として正社員化が実施されなかった場合でも、支給決定時までに「職業能力開発推進者の選任」など指定の要件を満たせば、人材育成訓練の方で助成対象となる可能性があります。

(3)申請手続き・申請書類・添付書類の簡素化

訓練計画届の提出に関して、これまで「訓練開始日の1ヵ月まで」が期限でしたが、「訓練開始日から起算して6ヵ月前から1ヵ月前までの間」に変更されました。

また、申請様式は共通化するなどの簡素化がなされ、これまで計画届提出時と支給申請時に重複していた添付書類は、支給申請時にのみ提出すればよいこととされています。

人材開発支援助成金(人材育成支援コース)の申請の流れ

人材育成支援コースの申請は、次のような流れで行います。

(1)訓練開始日の6ヵ月前から1ヵ月前までの間に「職業訓練実施計画届」を作成、提出
(2)OFF-JTもしくは、OFF-JTとOJTを組み合わせた訓練を規定の時間以上行う
(3)従業員に適正に賃金を支給、支給申請日までに企業が訓練経費を全額負担する
(4)訓練終了日の翌日から2ヵ月以内に支給申請手続きを行う


計画書の提出時には、訓練カリキュラムなども提出します。申請時には支給申請書のほか、訓練対象者の雇用契約書や賃金台帳、出勤簿などの添付書類も必要となります。申請期限が過ぎると一切受理されないので、申請スケジュールはしっかりと管理してください。

今回の改正で、労働局による計画届の訓練前の確認がなくなり、受付のみとなりました。これにより、支給・不支給の審査は支給申請時に一括して実施されることになります。

そのため、実施する訓練が助成金の対象となるかどうかを、事前に社労士などの専門家に相談することをおすすめします。
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