
「キャリアアップ助成金(正社員化コース)」の概要
この助成金は、非正規雇用労働者の処遇改善を目的として、「有期雇用労働者や派遣社員等を正社員化した企業に一定の助成金を支給する制度」です。申請には企業および労働者それぞれに複数の要件がありますが、主なものは次のとおりです。●就業規則や労働協約に規定した制度に基づき、有期雇用労働者等を正社員化すること
●正社員転換後の6ヵ月間の賃金が、転換前の6ヵ月間より3%以上増額していること
●「賞与または退職金の制度」と「昇給」がある正社員に転換すること
●「賃金の額または計算方法が正社員と異なる雇用区分の就業規則等」の適用を6ヵ月以上受けて雇用される非正規雇用労働者であること
自社雇用の契約社員、パート・アルバイト等を正社員化するほか、派遣労働者を自社の正社員として直接雇用する場合にも活用できます。
2025年度の「正社員化コース」の変更点
2025年4月より、支給対象となる労働者の範囲および助成額が変更になりました。2024(令和6)年度の改正で、「正社員化コース」の申請は2期制となりました。しかし2025年度は、2期目の申請は「重点支援対象者」に限られ、それ以外は1期のみの申請に変更されています。
「重点支援対象者」とは、次のA~Cのいずれかに該当する人です。
A:雇い入れから3年以上の有期雇用労働者
B:雇い入れから3年未満の有期雇用労働者で、次のいずれにも該当する人
●過去5年間に正社員であった期間が合計1年以下
●過去1年間に正社員として雇用されていない
C:派遣労働者、母子家庭の母等または父子家庭の父、人材開発支援助成金の特定の訓練修了者
派遣労働者、母子家庭の母等または父子家庭の父、人材開発支援助成金の特定の訓練修了者については、2024年度は助成額の加算対象でしたが、2025年度からは重点支援対象者となり、2期分の申請対象となります。
助成額は、下記の表のとおりです。

また、新卒の非正規雇用労働者は入社から1年間は助成金の対象外となりました。
次の場合には、加算も受けられます。

「キャリアアップ助成金 正社員化コース」の申請の流れ
「正社員化コース」の申請は、次のような流れで行います。(1)事前に「キャリアアップ計画書」を作成、提出する
キャリアアップ助成金を申請するには、非正規雇用労働者を正社員に転換する前日までに、対象者や目標、期間などを記載した「キャリアアップ計画書」を作成し、労働局に提出する必要があります。これまではキャリアアップ計画書を労働局に提出後、認定を受ける必要がありました。しかし2025年度から簡素化され、届出だけでよくなっています。
(2)就業規則等に正社員転換制度を規定する
正社員化を実施するより前に、就業規則等に正社員転換制度を規定していなければなりません。従業員が10人以上場合は、労働基準監督署への届出も必要です。なお、規定には対象者の要件、転換の時期および試験の実施について盛り込む必要があります。転換前に6ヵ月以上の「正社員と異なる雇用区分の就業規則等」の適用が必要なことにも注意が必要です。
(3)正社員への転換を実施する
(2)で定めた正社員化規定に基づいて、正社員への転換を実施します。ここでいう「正社員」とは、他の正規雇用の労働者と同じ就業規則が適用される労働者です。また、転換時点で「賞与または退職金」の支給と「昇給」の実施が予定されている必要があります。
(4)正社員として6ヵ月分の給与を支給する
正社員化後に支払う賃金は、転換前と比較して3%以上増額している必要があります。(5)支給申請手続きを行う
正社員化コースの申請期限は、正社員への転換後6ヵ月間の給与支給日の翌日から2ヵ月以内です。申請には支給申請書のほか、出勤簿や賃金台帳などの添付書類も必要となります。期限が過ぎると申請は一切受理されないので、申請スケジュールはしっかりと管理してください。*
制度の詳細や申請手続きについては、厚生労働省の公式情報や各都道府県の労働局で正確な情報を得ましょう。申請書類の不備や要件の不足といったミスを防ぐため、事前に社労士などの専門家に相談することをおすすめします。
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