いよいよ、研修実施が目前の段階である。研修の効果については、研修担当者(ここでは「事務局」と呼ぶ)が関与する準備品や、会場のデザインが大きく影響する。また、新型コロナウイルス感染拡大を防ぐため、事務局が担う役割は以前より増大している。「対面研修」と「オンライン研修」では必要な準備が大きく異なるので、まず今回は、「対面研修」の注意すべき点をまとめておこう。
第7回:直前の準備が研修の効果を左右する~対面研修の場合

「対面研修」のオペレーションをチェックしよう

研修当日、事務局が行うことは多岐にわたる。「(1)受付」、「(2)会場の配置」、「(3)映像・音響設備」、「(4)講師席の準備」、「(5)会場の喚起」、「(6)記録」について以下にまとめた。

(1)受付

研修の受講人数に応じて、事務局は何名で対応するのかを決める。さらに、何か不測の事態が起きたときのために、受付担当者同士の連絡方法も決めておこう。

・名簿
来場した受講者の氏名をチェックする場合、名簿にはふりがなをふって、あいうえお順にソートしておくとスムースだ。

・名札
事務局があらかじめ用意しておく場合と、受講者に氏名を書いてもらい、自分でホルダーに入れて使う場合がある(名刺を入れる場合もある)。後者では、ボールペンといった細いペンで書かれると見づらいので、事務局で太いペンを用意しておく。また、首から下げたりピンで衣服に留めたりする名札以外に、コピー用紙で簡単に席札を作って机上に置くのもよい。

・レジュメ・資料
来場した受講者にすぐに渡せるよう、ひとり分をひとまとめにしておく。できればナンバリングしておくと、出席人数を素早く確認できる。また、最初に全部配ってよいのか、研修の進行具合によってあとから追加して配る資料がないかについても確認しておく。

・アンケート
アンケート用紙も、最初から資料に入れておくのか、あとから配るのかを決めておく。最近では「Googleフォーム」といったweb上のアンケート作成サービスを利用し、回答してもらう場合も多い。スマートフォンからの回答が前提であれば、リンク先のQRコードを用意しておこう。

・タイムスケジュールや連絡事項をまとめたペーパー
通常、研修開始に先立って、事務局から口頭で連絡事項を伝える。説明担当者用のメモだけでなく、受講者のためにも、タイムスケジュールを含め1枚のペーパーにまとめて配布するとよい。

・飲み物
受講者に自分で用意してもらうよう事前に連絡するか、事務局が用意して配るかを決めておく。

・検温
会場に入るときに検温するか、または、事前に検温してきてもらって入場時に確認するかを決めておく。後者の場合は事前に受講者へ連絡しておく。ただし、この自己申告方式は時間がかからないが、忘れてくる人がいるので、予備の体温計を用意しておく必要がある。また、どちらの方式でも、検温の時間を見込んで、通常より開場~受付終了までの時間を長めに設定しておくこと。一緒に、手指の除菌用アルコールの用意もあるとなおよい。

(2)会場の配置

研修のデザインで大きなウェイトを占めているのが、机とイスの配置だ。研修内容によって、講師と相談してあらかじめ決めておく。

・教室型か島型か
教室型は、講義が中心の研修に向いている。新型コロナウイルス感染症対策のために、ひとつの机にひとりとすることも多いが、必ず通路を確保するようにする。一方、グループ討議やワークショップを伴う研修では「島型」にすることが多い。受講者同士の間に、アクリル板などの透明な衝立を用意するといった配慮が必要だ。

机なしでイスだけを並べて座らせるスタイルでは、クリップボードを用意して、筆記できるようにする。

どの場合でも、事務局は、スクリーンや講師の顔が見やすいかどうか、あちこちの席に座ってみて確認しておく。それでも前に座る人と重なって見えにくくなってしまった場合には、受講者に多少机の位置をずらしてもらうのもよい。

・座席の配置とグループ分け
だれをどこに座らせるか、どのようにグループ分けするかというデザインも、研修効果への影響が大きい。当日、自由に座席を選べる場合、後ろの席から埋まっていくことが多い傾向があるため、前列が空いてしまわないよう事務局が誘導するか、前もって資料を置くなどして座るべき位置を示しておく。

事前に座席の配置決めやグループ分けをしておく場合は、ふだん顔を合わせている人同士が固まってしまわないようにする。とくにグループでは、性別、年齢、職位など、研修の目的に合わせて組合せを考えよう。また、受講者の上司に情報をもらい、積極的に発言する人を各グループに配置するなどの工夫も必要だ。さらに、途中で席変えをするのも、変化がつき、多くの人とコミュニケーションをとる機会になるので受講者に喜ばれる。

(3)映像・音響設備

会場で使用する機材も事前チェックが必要だ。

・プロジェクタ
開始の段になってプロジェクタからの画像が映らないというトラブルが多いので、事前にテストしておくこと。とくに接続ケーブルの種類については確認が必須だ。

・マイク
マイクも、手持ち式のものやピンマイク、ワイヤレスタイプなど、できれば複数を用意しておこう。

(4)講師席の準備

講師席には以下のものを用意する。

・参加者名簿・座席表
・当日の資料
・飲み物


また、講師が立ったまま研修を行うのか座るのかについても、前もって打ち合わせをしておくとよい。

(5)会場内の換気

新型コロナウイルス感染症対策としても定期的な換気は必要だが、ドアや窓を開け放した状態で研修を行える会場はあまりない。そのため、休憩時間のたびに換気する必要があるが、冷暖房の効果が落ちてしまうので、受講者には衣服で調節をしてもらえるよう、前もって連絡しておく。夏場は扇風機やサーキュレーター、冬場は使い捨てカイロなどを用意しておくのもよい。

(6)記録

研修内容の撮影や録音をする場合には、前もって受講者に断っておく。また、記録の用途や開示範囲についても説明しておくとよい。


以上、事務局の、事前の準備が研修の効果を左右する。ぜひ、当日あわてないようにしていただきたい。

李怜香(り れいか)
メンタルサポートろうむ 代表
社会保険労務士/ハラスメント防止コンサルタント/産業カウンセラー/健康経営エキスパートアドバイザー
http://yhlee.org
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