株式会社帝国データバンクは2023年10月13日、「インボイス制度に対する企業の対応状況アンケート」の結果を発表した。調査期間は2023年10月6日~11日で、大企業193社、中小企業1,301社(うち小規模企業は507社)の、計1,494社より回答を得ている。本調査により、インボイス制度に対する企業の対応状況や懸念事項などが明らかとなった。
企業の「インボイス制度」対応、91%が“懸念事項あり”。「業務負担増加」や「社内の理解不足」は免れずか

約3割の企業がインボイス制度の“対応の遅れ”を実感

2023年10月より「インボイス制度(適格請求書等保存方式)」が開始され、課税事業者への業務負担増や、フリーランスなどの免税事業者に係る課題が浮き彫りになっている。インボイスへの対応においては企業の混乱も想定されるが、企業はインボイス制度に速やかに対応できているのだろうか。

はじめに同社は、「調査時点におけるインボイス制度の対応状況」を尋ねた。すると、「順調にできている」が65.1%と、企業のおよそ3社に2社は順調なスタートを切ったことがわかった。

一方で、「対応がやや遅れている」は28.5%、「対応が大幅に遅れている」は3.1%と、約3割の企業で対応の遅れが生じていることも明らかとなった。

自由回答では、「社員や取引先へ早めに対処していたので何とかスタートできた」(機械製造)とする声があった一方、「インボイスの申請はしたけれども、番号の連絡などがない」(鉄鋼・非鉄・工業製品卸売)、「振込手数料など、取り扱いについて手探り状態のものが多い」(運輸・倉庫)といった対応の遅れを懸念する声もあがったという。
調査時点におけるインボイス制度の対応状況

“対応の遅れ”は大企業よりも中小企業で多く見られる

続いて同社は、前設問の回答を企業規模別に比較した。その結果、「順調に対応できている」とした企業の割合は、「大企業」が71.5%に対し、「中小企業」が64.2%だった。また、「対応がやや遅れている」とした企業は「大企業」が24.4%、「中小企業」が29.1%となった。大企業と中小企業では、対応のスピードに差があるようだ。

自由回答では、「システム変更にお金をかけられない」(建材・家具、釜業・土石製品卸売)、「仕入全額控除に対するルールが細かい。免税事業者対応の税区分など処理内容が増え、少ない人員で対処するには限界がある」(飲食料品・飼料製造)などの声も聞かれたという。
企業規模別のインボイス制度の対応状況

制度導入による「懸念事項あり」とした企業は9割にのぼる

続いて同社は、「現在(調査時点)、および今後のインボイス制度導入にともなう懸念事項の有無」を尋ねたところ、「懸念事項あり」とした企業は91%と、9割を超えた。他方で、「懸念事項なし」は6%、「分からない」は2.9%だった。

自由回答には、「社内周知力を高めてきたが、費用の都合上、システムで対応できない部分もあり運用面での不安が残る。その上、大手の販売先でも対応がギリギリまでわからない先もあったため、今後トラブルが起きないかなど、とにかく不安が多い」(機会・器具卸売)、「準備は進めてきたが、後々不備が発覚するかもしれないと不安」(機械製造)などのコメントが寄せられた。準備を進めた上でスタートを切ったとしても、今後の状況に不安を抱える企業は多いことが示された。
インボイス制度導入にともなう懸念事項

懸念事項は「業務負担の増加」が最多。新たな課題が生まれる可能性も

最後に同社が「インボイス制度導入にともなう懸念事項」について「具体的な内容」を尋ねると、「業務負担の増加(他業務への影響含む)」(71.5%)が7割を超え、最も多かった。以下、「社内での理解・連携不足」(51%)、「仕入先への対応」(50.1%)がそれぞれ約5割で続いた。

自由回答では、「作業時間が大幅に増加し、残業が増えてスタッフが疲弊している」(飲食料品小売)、「仕入先などのインボイスの確認、免税事業者への対応でこれからが不安。業務量は増加する」(金融)など、事務負担の増大に戸惑う声があがったという。

また、インボイス制度導入に対する自由回答を聞いたところ、「インボイスの発行形式や対応が各企業で異なり、確認や保存の方法で業務負担が増す。社員のインボイス制度の理解度がまだ低い」(化学品卸売)、「とりあえず請求書に番号を記載しているだけで、その他に何をすればよいのかわからない」(専門サービス)などの声があがったとのことだ。
インボイス制度導入にともなう懸念事項
本調査結果から、インボイス制度に「順調に対応できている」とした企業は6割を超え、おおむね順調なスタートを切っていることがわかった。一方で、同制度の導入に対し、懸念を抱える企業が9割にのぼることも明らかとなった。2024年1月からは、新たに「改正電子帳簿保存法」への対応も必要となるため、担当者の業務負担はさらに増すと考えられる。インボイス制度の導入に際し、企業では課題解決に向けたサポートや、対応システムの導入などが急務といえそうだ。

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