厚生労働省(以下、厚労省)が、時間外労働の上限規制の適用が猶予される事業および業務について、公式ホームページで呼びかけている。働き方改革の一環として改正された労働基準法により時間外労働の上限が定められているが、一部事業や業務については、この上限時間の適用が猶予されている。同省は、この猶予措置と、猶予期間終了後の取り扱いについて呼びかけ、制度の周知を図りたい考えだ。
厚労省が「時間外労働の上限規制の適用猶予事業・業務」について呼びかけ。2024年3月の猶予終了後の取り扱いは?

適用が猶予されるのは「建設」、「運転」、「医業」、「製糖」の4事業または業務

労働基準法(以下、労基法)により、労働時間は原則1週40時間、1日8時間以内(法定労働時間)の必要があると定められている。この法定労働時間を超えて従業員に時間外労働をさせる場合には、2018年に改正された労基法で以下の通り規制されている。

【法定労働時間を超える時間外労働の上限規制】
●原則月45時間、年360時間(限度時間)以内
●臨時的な特別な事情がある場合でも年720時間、単月100時間未満(休日労働を含む)、複数月平均80時間以内(休日労働を含む)。ただし、限度時間を超えて時間外労働を延長できるのは年6ヵ月が限度。


なお、上限規制のイメージは下図の通りだ。
厚労省が「時間外労働の上限規制の適用猶予事業・業務」について呼びかけ。2024年3月の猶予終了後の取り扱いは?

適用が猶予されている4事業は、2024年4月以降に猶予期間が終了

一方で、長時間労働の背景に業務の特殊性や取引慣行の課題がある4つの事業または業務については、時間外労働の上限についての適用が5年間猶予、もしくは一部の特例付きで適用されることとなっている。4つの事業または業務は、「工作物の建設の事業」、「自動車運転の業務」、「医業に従事する医師」、「鹿児島県および沖縄県における砂糖製造業」だ。ただし、これら4つの事業・業務における猶予期間は、2023年3月で終了する。猶予期間終了後の2024年4月以降の4事業・業務についての取り扱いは下記の通りとなる。

【2024年4月以降、猶予期間終了後の取り扱い】
●工作物の建設の事業
・災害時における復旧および復興の事業を除き、上限規制がすべて適用となる。
・災害時における復旧および復興事業には、時間外労働と休日労働の合計について、「月100時間未満、2~6ヵ月平均で80時間以内」とする規制は適用されない。

●自動車運転の業務
・特別条項付き36協定を締結する場合の年間時間外労働の上限が年960時間となる。
・時間外労働と休日労働の合計について、「月100時間未満、2~6ヵ月平均80時間以内」とする規制が適用されない。
・「時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6ヵ月までとする規制」は適用されない。

●医業に従事する医師
・特別条項付き36協定を締結する場合の年間時間外・休日労働の上限が最大1,860時間となる。
・時間外労働と休日労働の合計について、「月100時間未満、2~6ヵ月平均80時間以内」とする規制が適用されない。
・「時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6ヵ月まで」とする規制は適用されない。
・医療法等に追加的健康確保措置に関する定めがある。

●鹿児島県および沖縄県における砂糖製造業
・上限規制がすべて適用となる。
※猶予期間中も、時間外労働と休日労働の合計について、「月100時間未満、2~6ヵ月平均80時間以内」とする規制以外は適用される。


「建設」「運転」「医業」「製糖」の4つの事業・業務については、時間外労働の上限規制の適用が猶予されているが、2023年3月で猶予措置が終了することを覚えておきたい。関連する事業所では、法律に沿った正しい制度運用ができるよう、今後も厚労省などから発信される情報をこまめに確認しておくのがよいだろう。


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