パーソルイノベーション株式会社は「企業規模別 副業の取り組みに関する実態調査」の結果について、2022年11月29日に前編を、12月6日に後編を発表した。調査期間は2022年10月13日~20日で、同社と取引を行っている大企業および中小企業、スタートアップの人事担当者363名から回答を得た。調査から、従業員の副業を認める企業の割合や、副業を認めたことで生じた課題などが明らかとなった。
企業規模別の「副業許可」の状況とは。「キャリア観醸成」や「人材確保」の面でメリットも“本業のパフォーマンス低下”が懸念か

7割のスタートアップが副業を認める。大企業でも4割が副業可

政府が定める「働き方改革実行計画」において、副業・兼業の普及を図る方向性が示されたことから、副業への関心が高まっているが、企業側の受け止め方はどうなのだろうか。パーソルイノベーションはまず、企業規模別に「従業員が副業することを自身の所属企業で認めているか」と尋ねた。すると、大企業および大企業グループ会社では「認めている」割合が40.5%だった。中小企業では同割合が32.8%、スタートアップでは70%という結果となった。
企業規模別の「副業許可」の状況とは。「キャリア観醸成」や「人材確保」の面でメリットも“本業のパフォーマンス低下”が懸念か

企業規模に関わらず、「副業を許可制で全従業員に認める」との回答が最多

次に同社は、「自身の所属企業では、どの程度従業員の副業を認めているか」と尋ねた。すると、大企業・中小企業・スタートアップともに「雇用形態や部門に関わらず、すべての従業員が許可を得れば副業が可能」との回答が最も多かった(大企業:45.2%、中小企業:39%、スタートアップ:33.3%)。スタートアップでは、同回答と「雇用形態や部門に関わらず、すべての従業員が自由に副業が可能」が33.3%で同率となった。
企業規模別の「副業許可」の状況とは。「キャリア観醸成」や「人材確保」の面でメリットも“本業のパフォーマンス低下”が懸念か

「副業を認める理由」は企業の属性により異なる傾向が明らかに

続いて同社は、「自身の所属企業で、従業員の副業を認めた理由」を尋ねた。回答をランキングでみると、大企業では「働き方改革の一環」がトップとなった。中小企業では「収入の補助施策として」との理由が最も多く、スタートアップでは「禁止するべきものではないため」が最多となり、企業の属性によって副業を認める理由が異なることが明らかとなった。

あわせて、同社が「副業を認めた時期」を尋ねたところ、大企業では「2022年」、中小企業では「2013年」、スタートアップでは「2020年」が最多だったという。中小企業では「副業解禁」がトレンドになる以前から、副業を認めていたことがうかがえる。
企業規模別の「副業許可」の状況とは。「キャリア観醸成」や「人材確保」の面でメリットも“本業のパフォーマンス低下”が懸念か

「従業員のキャリア観醸成」や「優秀な人材確保が可能となった」との声も

また、これまでの結果を踏まえ同社は、「副業を認めている」と回答した企業に対し、「自身の所属企業で、従業員の副業を認めてよかったと評価している点」を尋ね、企業規模別のランキングを示している。すると、最も多かった回答は、大企業では「従業員がキャリアについて考えるようになった」だった。中小企業では「副業を認めたことを評価していない」、スタートアップでは「優秀な人材の採用につながった」が最多となった。同社によると、中小企業では、「従業員がキャリアについて考えるようになった」や「従業員のエンゲージメントが高まった」等の回答もみられたという。
企業規模別の「副業許可」の状況とは。「キャリア観醸成」や「人材確保」の面でメリットも“本業のパフォーマンス低下”が懸念か

副業を認めて生じる課題や懸念は「本業でのパフォーマンス低下」が最多に

続いて同社は、先の質問と同じ対象者に対し、「自身の所属企業で、従業員の副業を認めて生じている課題や懸念」を尋ねた。すると、大企業・中小企業・スタートアップの全属性で「本業でのパフォーマンス低下」が最多となった。
企業規模別の「副業許可」の状況とは。「キャリア観醸成」や「人材確保」の面でメリットも“本業のパフォーマンス低下”が懸念か

副業人材の受け入れ状況はスタートアップが半数超えで突出

最後に同社は、「自身の所属企業では、副業・兼業、会社員やフリーランスなど外部人材の受け入れを行っているか」と尋ねた。すると、「行っている」との回答が最も多かったのはスタートアップの53.3%で、「行っていない」の43.3%を上回った。対して、「行っていない」との回答は、大企業では62.1%、中小企業では67.2%で、「行っている」との回答を大きく上回った。外部人材の受け入れを行う企業は少ない実情がうかがえる結果となった。
企業規模別の「副業許可」の状況とは。「キャリア観醸成」や「人材確保」の面でメリットも“本業のパフォーマンス低下”が懸念か
本調査から、企業規模にかかわらず「副業解禁」を試みていることがわかった。しかし、従業員のキャリア観醸成や優秀な人材確保に効果を感じる企業がある一方で、大半が「本業のパフォーマンス低下」を懸念しており、副業の推進には課題があるようだ。今後、副業人材の活用を検討したい企業は、本業との住み分けなどの課題をどのように解決していくかがポイントになるだろう。

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