株式会社帝国データバンク(TDB)は2021年4月14日、「2021年度の業績見通しに関する企業の意識」に関する調査の結果を発表した。本調査は、今回で13回目となる「TDB景気動向調査2021年3月調査」とともに実施しており、調査期間は2021年3月18日~31日。全国2万3,703社の調査対象企業のうち、1万1,261社から回答を得た(回答率47.5%)。新型コロナウイルス感染症拡大の収束の目処が立たない中で、2021年度における業績見通しなどが明らかとなった。
景気をよくするのも悪くするのも「新型コロナウイルス感染症にまつわること」と想定。各企業が考える2021年の業績見通しは

2021年度の業績見通しは「収益増」と「収益減」が拮抗

緊急事態宣言が再度発出されるなど、新型コロナウイルス感染症が未だに猛威を振るう中、企業は2021年度の業績について、どのように見ているのだろうか。

はじめに、「2021年度(2021年4月決算~2022年3月決算)の業績見通し(売上高および経常利益)」を尋ねた。すると、「増収増益」との回答が27.4%に。新型コロナの影響が広がりつつあった前回調査時点(2020年3月)では、2020年度の見通しが13.5%だったが、13.9ポイント増加した。一方で「減収減益」は、前回の44.4%から18.4ポイント減って26%に。2021年度における業績見通しでは、「増収増益」と「減収減益」の回答が同程度となった。
2021年度の業績見通し
次に、業績の見通しを業種別で確認した。「増収増益」との回答は、自動車・同部品関連の「輸送用機械・器具製造」が40.4%でトップに。以下、「飲食店」が39%、「放送」が37.5%など続いた。また、「旅館・ホテル」など、新型コロナの影響で大きな打撃を受けたサービス業が上位に入った。

一方「減収減益」をみると、最も多かったのは、2020年度に増加した「内食需要」などによって業績を伸ばした「各種商品小売」が38.1%に。そのほか、アパレル関連の「繊維・繊維製品・服飾品製造」が37.7%、公共工事に支えられていた「建設」が35.8%などとなった。
業種別の業績見通し

業績への「上振れ」「下振れ」材料は、ともに新型コロナ関連による需要増減

続いて、「2021年度の業績見通しを上振れまたは、下振れさせる材料」を尋ねた。その結果、上振れ材料で最も多かったのは、新型コロナなどの「感染症の収束」で45.6%に。続く「個人消費の回復」(42.9%)は、前回調査より8.1ポイントも増加した。以下、「公共事業の増加」(20.9%)や、財政・金融政策や成長戦略、規制緩和などの「経済政策の拡大」(18.2%)、「中国経済の成長」(14.9%)などが続いた。

一方、「下振れ材料」で最も多かったのは、「感染症の拡大」で54.7%に。前回調査よりは減少傾向だが、引き続き突出して高い結果となった。次いで、「個人消費の一段の低迷」が35.4%、「所得の減少」が25.5%、「行動制限や外出自粛の実施・拡大」が23.9%などと続いた。

企業からは、「ワクチン接種などにより感染を防ぐ事ができれば、経済は立て直せると期待」(食料・飲料卸売、北海道)、「DXの推進により、IT需要が増加」(ソフト受託開発、東京都)といった前向きな声がある一方で、「樹脂、半導体関係の原材料不足が徐々に顕著になっている」(スポーツ用品卸売、愛知県)や、「自動車のEV化により、部品の受注が減少する見込み」(鍛工品製造、広島県)などの意見もあがった。
業績見通しが上振れ・下振れする材料

2021年3月時点の資金繰り、4割以上が「楽」と回答。一方「苦しい」も1割強

2020年3月以降、政府系金融機関による「実質無利子・無担保融資」を皮切りに、同年5月には民間金融機関も対応するなど、企業の資金繰りを支援する動きが広がった。2021年3月には、民間金融機関に対して、新型コロナ関連融資の返済猶予対応要請が金融庁から発表されるなど、資金繰り支援は現在も継続中だ。

これを受けて、「2021年3月時点の資金繰り状況」について尋ねた。すると、「非常に楽である」、「楽である」、「やや楽である」と回答した企業は合計43.2%となり、「どちらでもない」の40.6%と同程度となった。一方、「非常に苦しい」、「苦しい」、「やや苦しい」とした企業は、合計13.6%だった。
2021年3月時点での資金繰りの状況
回答を規模別でみたところ、「楽である」は大企業ほど高い結果(43.9%)に。一方、資金繰りが「苦しい」としたのは、「大企業」の7.9%に対し、「中小企業」が14.7%、「小規模企業」が19.7%と、規模が下回るにつれて数字が大きくなっている。小規模企業では、大企業を11.8ポイントも上回る結果となった。
2021年3月時点での資金繰りの状況(規模別)
最後に、資金繰りが「苦しい」と回答した企業を業種別に確認した。すると、最も高くなったのは「旅館・ホテル」で40.6%。次いで、「娯楽サービス」(35.8%)、「飲食店」(27.1%)などとなった。

自由回答では、「雇用調整助成金の特例処置により資金が潤沢にある」(旅館、愛媛)といった意見が聞かれた反面、「新型コロナ融資の返済開始が近づき、新型コロナが収束しないと一気に保有資金が底をつく可能性がある」(一般食堂、北海道)や、「税金の支払い猶予や返済融資など政策支援を受けてきたが、景気自体が回復し、利益を生まないといずれ返済で立ち行かなくなる」(映画・ビデオ制作、東京都)など、厳しい状況を反映する声も多かった。
「2021年度の業績見通しに関する企業の意識調査」の図表6
新型コロナによる影響で未だに業績の見通しが立てづらい状況となっている上、人々の暮らし方が大きく変化している。収束後も生活スタイルや働き方が完全に元の状態には戻るとは考えづらく、さまざまな角度から対応策を検討する必要がありそうだ。

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