従業員の退職に伴う書類の一つが「離職票」だ。従業員が退職したことを証明するもので、主に失業保険の給付手続きに使用される。不備や遅れが生じてしまうと従業員の不利益につながってしまうため、その概要をしっかり理解しておきたい。そこで本稿では、どんなケースで必要となるのか、退職証明書や離職証明書との違い、発行のタイミング、具体的な手続きについてはわかりやすく解説していきたい。
離職票のイメージ

「離職票」とは

「離職票」とは、雇用保険に加入していた従業員が離職したことを証明する書類で、正式名称は、「雇用保険被保険者離職票」と言う。主に失業保険の給付申請に使われる公文書であり、退職者が「離職票」の発行を希望した場合には、会社がハローワークに発行を申請し、その後会社がそれを受け取り退職者に渡す流れになっている。

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●「離職票」が必要な場合

「離職票」が雇用保険に加入していた従業員が以下の手続きをする際に必要となる。

・失業保険(雇用保険の基本手当)の申請
退職者が失業中の生活を安定させるために、国から支給される給付金を受け取る際に必ず必要となる。この書類がないと、ハローワークで失業保険の受給資格の決定や給付日数、給付額の算定ができない。

・高年齢雇用継続基本給付金の申請
高年齢雇用継続基本給付金とは、60歳以降も雇用保険の基本手当を受給せずに継続して働き続ける人に支給される給付金だ。この申請にも離職票(またはそれに代わるハローワークからの証明書)が必要となる。

なお、59歳以上の退職者には、本人の希望にかかわらず「離職票」の発行が義務づけられている。これは、高年齢雇用継続基本給付金の申請に備えるためと、失業保険の受給資格期間が長期にわたる可能性を考慮してのことだ。

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●「離職票」の種類

「離職票」には以下の2種類があり、同時に交付される。それぞれ異なる情報が記載されており、両方揃って初めて失業保険の申請が可能になる。

・雇用保険被保険者離職票-1
離職者や離職に関する基本情報(離職者の氏名や雇用保険被保険者番号など)と失業保険の申請に関する項目(失業保険の申請日や失業保険の振込口座など)が記載されている。

・雇用保険被保険者離職票-2
離職前の賃金支払状況や離職理由などが記載されている。離職理由によって失業保険の給付期間や給付開始時期が大きく変わるため、非常に重要な項目だ。会社は、離職証明書の作成時に具体的な離職理由を記載し、ハローワークがそれを基に雇用保険被保険者離職票-2を作成する。

●離職証明書との違い

離職証明書は、離職する従業員が「離職票」の交付を希望する際に、会社がハローワークに提出する書類だ。正式名称は、雇用保険被保険者離職証明書。「離職票」と同様に公的な書類として扱われる。

離職証明書を提出すると、ハローワークから以下の書類が交付される。
・雇用保険被保険者離職証明書(事業主控)
・雇用保険被保険者離職票‐1 資格喪失確認通知書(被保険者通知用)
・雇用保険被保険者離職票‐2
・雇用保険被保険者資格喪失確認通知書(事業主通知用)

●退職証明書との違い

退職証明書は、従業員が確かに会社を退職したことを証明するために、会社が退職者に対して発行する書類だ。こちらは、公的な書類ではなく、離職者の希望に応じて会社が任意に発行する。希望がなければ発行する必要はない。公的な効力がないため、失業保険の申請には使用できないが、転職先への提出や、国民健康保険・国民年金の手続きなど、退職を証明する必要がある場面で利用されることがある。

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「離職票」の発行手順

次に、「離職票」を発行する手順を説明したい。

(1)退職者に「離職票」が必要か確認

まずは、退職者に「離職票」が必要であるかどうかを退職前に確認する。退職者が「離職票」を希望しないのであれば、原則として「離職票」を交付する必要はない。ただし、退職者が59歳以上の場合は、本人の希望の有無に関わりなく「離職票」を交付することが義務付けられている。

(2)ハローワークに離職証明書・雇用保険被保険者資格喪失届を提出

離職証明書を記載したら、退職者の確認を得て署名をしてもらう。その上で、退職者が雇用保険から脱退した際に届ける雇用保険被保険者資格喪失届と共にハローワークに提出する。その際には、離職前の賃金支払状況や離職理由の証明資料を添付する必要がある。なお、提出期限が退職日の翌々日から10日以内と定められているので、早めの準備を心がけたい。ハローワークへの提出方法としては、窓口への持参・郵送、または電子申請もできる。

(3)ハローワークから「離職票」を受け取る

ハローワークに離職証明書と雇用保険被保険者資格喪失届を提出すると「離職票」が2種類発行されるので、それらを受け取る。同時に、雇用保険被保険者資格喪失確認通知書と離職証明書(事業主控)も会社側の確認・保管用として発行される。間違って退職者に交付しないように注意したい。

(4)退職者に「離職票」を送付

ハローワークから「離職票」を受け取ったら、退職者に迅速に送付するようにしたい。退職者が転居している可能性もあり得るので、連絡先や郵送先は退職前に必ず確認しておく必要がある。一般的には、退職後2週間前後で退職者の手元に「離職票」が届くことになる。

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「離職票」の再発行

「離職票」を発行したものの、退職者が「離職票」を紛失してしまった場合には再発行が可能だ。その際の手順と必要な書類を紹介しよう。

●再発行の手順

「離職票」を再発行する方法としては、以下の3通りの方法がある。
(1)退職者が勤務していた会社に再発行を依頼する
このケースでは、会社がハローワークに雇用保険被保険者離職票再交付申請書を提出すれば手続きが完了する。
(2)退職者本人がハローワークに赴き再発行の申請を行う
「離職票」が一度でも発行されていればハローワークで履歴が確認できる。そのため、退職者はハローワークに「離職票」の再発行を直接申請できる。退職者がハローワークに赴くのであれば、最短で当日中に「離職票」を受け取ることも可能だ。

(3)退職者本人がハローワークに郵送で再発行の申請をする
ハローワークに直接出向くことが難しい場合は、郵送での申請も可能だ。

●再発行に必要な書類

「離職票」を再発行するためには、以下の書類が必要となる。
・雇用保険被保険者離職票再交付申請書
・写真付き身分証明書(例:運転免許証、マイナンバーカード)
・雇用保険被保険者証
・印鑑
また、電子申請する場合には、事前に電子証明書を認証局で取得しておかなければいけない。さらには、郵送申請にも対応している。その際には、以下の3点が必要だ。
・離職票再交付申請書
・写真付き身分証明書のコピー
・返信用封筒(切手を貼り、返信先住所を明記したもの)

「離職票」を発行する際の注意点

次に、「離職票」を発行する際に注意すべき点を指摘したい。

●離職理由の認識違い

ハローワークに「離職票」を発行してもらうためには、会社から離職証明書を提出しなければならない。その内容に関して退職者とトラブルになりがちなのが、離職理由だ。自己都合退職か会社都合退職かによって、失業保険の給付期間や給付開始時期が大きく異なるため、認識違いがあると退職者から苦情が寄せられてしまう。トラブルを回避するためにも、退職前に退職者の同意を得る、離職証明書に署名してもらうといったプロセスを踏んでおくことが重要だ。

●発行時期と遅延の影響

退職者からすると、「離職票」がないとハローワークに失業保険の申請ができない。それだけに、早急の対応を会社に要請してくると見込まれる。しかし、発行に向けては、会社での書類作成、ハローワークへの提出、ハローワークでの審査・発行といった手続きを踏まなければならないのでどうしても一定期間(通常1週間〜2週間程度)は要してしまう。その旨を、退職者には事前に説明しておきたい。もちろん、迅速に離職証明書を提出することは言うまでもない。

●助成金申請に与える影響

雇用関係の助成金を受給中、または受給を検討している会社も多いはずだ。解雇など会社都合による退職があると助成金を受給できなくなる場合もあるので注意を要する。ただし、助成金を受けたいがために離職理由を改ざんするのは論外だ。退職者に不利益をもたらすとともに助成金の不正受給と見做されてしまう。

「離職票」を発行しなかったらどうなる?

会社が「離職票」を発行しないと、どうなるのかについても触れておきたい。

雇用保険法第76条3項により、「離職票」の発行および交付は会社の義務であると定められている。よって、退職者が59歳未満で、かつ「離職票」の発行を希望しない場合を除いて、全ての退職者に発行しなければならない。

もし、正当な理由がないにもかかわらず、会社が「離職票」の発行手続きをしない、あるいはハローワークが発行した「離職票」を退職者に渡さないという事態が発生した場合、雇用保険法第83条4項に基づき、6カ月以下の懲役、または30万円以下の罰金が罰則として課せられる。

「離職票」を退職後に求められたら?

「離職票」を退職後に求められたらどう対応すれば良いか。退職者が「離職票」の発行を希望しない場合には、交付する必要がない。だが、退職後の気持ちが変わり、「やはり欲しい」と依頼してくることもあり得る。「離職票」は、退職後であっても所定通りの手続きを踏むことでハローワークに発行してもらえるので、迅速に対応するようにしたい。

「離職票が届かない」と言われた時は?

「離職票」を退職者に送付したものの、「届かない」などとクレームが寄せられることがある。

この時に想定されるのは、以下のケースだ。
・退職者が退職後、実家に帰ってしまっている
・転職先の近隣に転居している
・「離職票」の郵送を失念している、または郵送先を誤っている

最も多いのは、退職後の転居による住所不明や、転居前の住所に送付してしまっているケースだ。その場合には、宛先不明で郵便局から返送されていないかを確認したり、退職者に転居前の住所に届いていないかを確認してもらったりするようにしたい。

だが、いずれにしても調査に手間と時間が掛かるし、最悪の場合には退職者とのトラブルにもなりかねない。退職者に直接手渡しできるのが確実だが、それも難しいところなので、退職前に退職後の連絡先や住所・郵送先などを確認するだけでなく、簡易書留で郵送するといった段取りが求められる。

「離職証明書」の書き方

「離職証明書」の書き方も説明しておこう。

まずは、「離職証明書」の用紙をハローワークで入手する。ハローワークの窓口で手に入るほか、厚生労働省のウェブサイトからもダウンロード可能だ。その上で、以下の項目を記載し、退職日の翌々日から10日以内にハローワークに提出しなければいけない。もちろん、電子申請も可能になっている。

主要な記載項目は以下の通りだ。
・雇用保険被保険者番号:従業員の雇用保険の加入者番号
・雇用保険事業所番号:会社の雇用保険適用事業所番号
・離職者の氏名:退職者のフルネーム
・離職年月日:実際に退職した年月日
・事業所名と住所、電話番号、事業主氏名:会社の正式名称、所在地、連絡先、代表者名
・離職者の住所と電話番号:退職後の連絡先
・離職理由:自己都合、会社都合、定年、契約期間満了など、該当する項目を選択し、詳細な補足も記載
・離職前の賃金支払状況:離職日以前の賃金支払状況を月ごとに記載

まとめ

「離職票」に関して、人事担当者として必ず抑えておきたいポイントが二つある。一つが、離職理由について退職者の理解を得ると共に、会社が作成した離職証明書の離職理由と相違がないようにすること。もう一つが、「離職票」をできるだけ早く退職者に渡すことだ。なぜならば、離職理由によって失業保険の所定給付日数が決まり、「離職票」を入手したタイミングによって失業保険の支給開始時期が決まるからだ。退職者にとって失業保険は大事な収入源となる。手続きミスや遅れが生じるとトラブルにつながりかねない。慎重かつ迅速な対応が望まれる。
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