「従業員満足度(ES)」とは、福利厚生やマネジメント、職場環境、働きがいなどについて社員の満足度を表す指標を意味する。「ES」とも呼ばれ、近年、従業員満足度を重視する企業が増えている。背景にあるのは、労働力人口の減少だ。「従業員満足度」が向上することで、各自の生産性やモチベーションが上がるという。本記事では、従業員満足度の定義や構成する5つの要素、企業へのメリットなどを紹介する。
「従業員満足度(ES)」とは? 向上につながる5つの要素と企業へのメリットを解説

「従業員満足度」とは?

「従業員満足度(ES)」とは、福利厚生やマネジメント、職場環境、働きがいなどについて社員の満足度を表す指標を意味する。英語では「Employee Satisfaction」と呼ばれ、頭文字を取ってESと呼ぶこともある。

近年、従業員満足度を重視する企業が増えてきている。背景にあるのは、少子高齢化に伴う労働力人口の減少だ。従業員満足度が高い職場は、従業員の生産性や顧客対応へのモチベーションが高い傾向にあるという。働き方改革を実行するうえでも、重要な要素と言える。

「従業員満足度」を構成する5つの要素とは?

従業員満足度を向上させるうえで、どのような要素が必要になるのだろうか。大きく分けて5つの要素を紹介したい。

【1】企業ビジョンへの共感
企業ビジョンに共感している従業員は、会社に対する期待感や誇りを持っている。会社への信頼度は高く、能動的に自社の貢献に向けた行動を取ろうとする。

注意したいのは、無理に企業ビジョンを従業員に共感させようとしている点。強制はむしろ反発を生むため、例えば、上司は部下に日頃の業務と企業ビジョンがどのように結びついているか、かみ砕いて説明することが大事である。

企業ビジョンに共感している従業員は、自社のビジョンを自分の言葉で説明できる傾向にある。社内の従業員がどれぐらい共感しているかを把握するための、ヒアリングの項目の一つに加えてもいいかもしれない。

【2】マネジメントへの納得感
部下の考えを理解したコミュニケーションが取れていたり、部下の仕事ぶりを把握して、きちんと称賛したりしている上司がいる部署のメンバーは、従業員満足度が高い。部下を放置したり、納得度の低い評価を部下にしたりする上司がいる部署の従業員は、当然ながら辞めていく傾向にある。

上司のマネジメントが起因する退職は、上司自身のマネジメントの能力不足、上司の従業員満足度の低さのどちらかが原因となっている。このような場合は、早急に上司側のマネジメントを改善しなければならない。社内で管理職向けの研修を行ったり、部下とのコミュニケーションを意図的に取れる施策を実行したりするのが効果的だ。

また、上司から承認感を与えられている従業員も従業員満足度は高い。部下に承認感を与えるうえでは「権限委譲」が効果的だ。権限は、仕事に主体性を生む大事な要素の一つと言える。部下には、ゴールをきちんと説明しながら方法は任せる、業務を動かすうえでの最初の判断を任せるといったマネジメントを行ってみると、従業員の行動や姿勢に変化が表れるかもしれない。

マネジメントで気をつけなければいけないのが、部下に丸投げで仕事を任せてしまう点だ。これではメンバーにストレスを与えることになり、逆効果となる。定期的に進捗を確認するといったフォローが大事になる。

「権限委譲」は、マネジメント層の業務の負荷を減らす効果がある。管理職の業務の負担が大きくなれば、マネジメントは手薄になり、部下のモチベーションやパフォーマンスは下がっていく。チーム内に悪影響は波及していくため、今一度、管理職は業務の振り分けが適切に実行できているか、見直してみるのがいいかもしれない。

【3】自身の仕事が会社の業績や社会に与える影響
自分の仕事と、社会への貢献や会社の業績への影響と照らし合わせた際に、「貢献できていない」、「影響を与えられていない」と感じるビジネスパーソンの従業員満足度は低い。社内への貢献度は、職種によって見えにくいことがある。職場内では、たとえ担当する業務が違ったとしても、お互いが興味を持ち、称賛し合うことで各自の貢献具合が見えやすくなる。また、経営層やマネジメント層から、自社や自組織の「貢献」や「影響」の部分については積極的な発信が必要になるだろう。

【4】職場での人間関係
内閣府が行った2017年の「子供・若者の意識に関する調査」によると、「職場での人間関係」が就労する若者の離職理由で上位であることが判明した。従業員は一日のほとんどを会社で過ごしている。ひとたび職場内の人間関係がこじれれば、その不安や不満は従業員の大きなストレスとなってしまう。会社でうまく人間関係を構築するには、ただコミュニケーションの量を増やすのではなく、お互いが関心を持たなければならない。うわべだけの関係では、従業員満足度を高めることができない。

【5】快適な職場環境
従業員満足度を高めるうえでは、単に福利厚生や就業規則を整備すればいいというわけではない。従業員のニーズをきちんと捉えているか、ワーク・ライフ・バランスを実現できているかの観点で、施策を立案することが必要になる。自分の考えをきちんと同僚や上司に伝えられるどうかも重要だ。上司は部下の話をしっかり聞く姿勢を見せることも快適な職場環境をつくるうえでは欠かせない。

「従業員満足度」が向上することによる企業へのメリットは?

従業員満足度が向上することで、従業員自身だけでなく、会社へもメリットがある。大きく分けて3つ紹介したい。

【1】生産性が向上する
従業員満足度が向上することで、従業員は高いモチベーションを維持しながら、能動的に仕事に取り組むことができる。その結果、大きな成果をあげられたり、生産性を高められたりすることにつながるため、会社へのメリットも大きい。高い意欲のある従業員が多い職場は、組織内のコミュニケーションや連携も活発だ。新規事業や新サービスの開発など、企業や組織にイノベーションが起きやすく、企業の業績向上を支えるだろう。

【2】人材が定着する
各従業員の帰属意識が高い状態にあるため、人材の流出を防ぐことができる。高い成果を出せる従業員が長年働くことで、会社の業績が上がったり、社外への認知度が高まったりするため、企業の魅力が増してく。採用活動にも効果をもたらし、従業員からのリファラル採用も増えるだろう。人材の確保に向けたコストを抑えることもできる。

【3】顧客満足度が向上する
会社への帰属意識が高いゆえに、自社の商品やサービスを分析する従業員が多くなる。顧客のニーズに合った商品やサービスが生まれやすく、顧客満足度の向上につながる。
労働力人口の減少に伴い、今後、人手不足や生産性といった課題がより重要視されるのは想像に難くない。従業員満足度が高い職場では、生産性の向上や優秀な人材の定着といったメリットが生まれる。従業員満足度を向上させるうえで、企業ビジョンへの共感やマネジメントへの納得感がカギとなる。今一度、自社の組織風土や組織文化を見直し、必要に応じた人事施策を講じてみてはいかがだろうか。
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