自分の知り合いを自分の勤めている会社に紹介するという「リファラル採用」を実施する会社が近年増えましたが、このことを考えるたびに、私はある情景を思い浮かべます。
第6回:「リファラル採用」活用時の注意点とポイントとは

ひとつ間違えると「負の集団」を生み出す原因に

私がまだ20代の頃、お気に入りのイタリアンのチェーン店がありました。近くに用事があるときはよく利用していたのですが、そのお店を選ぶ理由は料理よりも、店員の皆さんの印象がとても良かったからでした。

店長も含めた5人の店員は、いつも明るく元気で、常に誰かがさりげなくお客さんの様子を見ていました。またお互いに仕事を助け合っていて、その姿にとても好感が持てたのです。店員がそのお店の雰囲気を作っているという感じで、とても過ごしやすい空間でした。

ところがある日、一人の新しい店員が入社してから、状況は変わっていきました。その店員は、接客もせずに厨房の奥の方でたたずみ、何が気に入らないのか不服そうな顔をしていました。店長が、時折その店員を指導しているようでした。その様子を見て私は「この店員さんは次に来た時はもういないかも」と思っていました。

ところがしばらくしてその店を再訪すると、店の様子が一変していました。店長以外のスタッフが皆入れ替わっていて、一人「浮いていた」店員が、リーダーのように他のスタッフを集めて厨房の奥で談笑していたのです。その店員が友人達を引き入れたようで、今度は店長が一人浮いた存在になって右往左往していました。当然店内のサービスも以前より悪くなっていました。

さらにしばらくしてその店を訪れると、もとから居た店長はいなくなり、「浮いていた」店員が、店長になっていました。相変わらず店の奥で談笑している店員たちに向かって、お客さんが「すみません、お水いただけますか」と言うと、店員達が一斉にその客を凝視して「めんどくさいなあ」という顔で、対応をしていました。それ以降、私はその店に行くことはなくなりました。

一般のSNSの投稿などを見ると、友達同士、気が合う人同士というのは、やはりどこか気質が似ているように見えます。それが良い部分として発揮されればいいのですが、「悪貨は良貨を駆逐する」という言葉もあるように、反対の場合はとてつもない「負の集団」になる場合があります。

負の集団というのは、信頼や顧客、売上や利益まで吸い取っていきます。特に経営者や役員の目が行き届かないような職場環境がある会社の場合、注意が必要です。常時現場を公平な第三者が見られない環境ですので、たとえば店舗内で人間関係のトラブルがあっても、事後のヒアリングで対応をせざるを得ません。そのような時に、その店舗内で「友達の数が多い」人達の意見のほうが多数決上、事実を問わず有利に働いてしまう危険性があるからです。

どのような採用方法も使い方次第で良い面とリスクのある面があります。リファラル採用に関しては、他の採用方法よりも、こうしたリスクが発生する確率が高いことは理解した上で活用したほうが良いでしょう。

最大のメリットは入社した社員の孤立を防げること

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