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HRサミット2018／HRテクノロジーサミット2018講演録

NEXT HR～次世代型人事のあり方を異分野コラボレーションで探る～スポーツ科学×特殊部隊×HRテクノロジー～

HRサミット2018／HRテクノロジーサミット2018 講演録
公開日：2019/01/17

ジャンル：

人事・労務全般・その他

キーワード：

イノベーション

HRテクノロジー

【調査レポート】大企業の8割が行う「手挙げによる異動制度」。キャリア自律に向けた制度活性化のカギとは

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2018/9/19-9/21開催

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公益財団法人　日本スケート連盟　スピードスケート強化部委員　情報部門責任者　紅楳英信氏 　日本スケート連盟の紅楳と申します。日本選手団スピードスケートチームスタッフとして平昌オリンピックに帯同し、結果として非常に良い成績を上げることができました。スピードスケートのチームパシュートとは、団体追い抜きともいわれ、3人が隊列を組んで滑り、タイムを競う競技です。　対オランダ戦では、残り2周ぐらいのところまで日本は負けていました。ところが、残り1周を切ったあたりから日本が追い上げていきます。実は過去の国際大会でも全く同じパターンで、日本が残り１周ぐらいで逆転することは想定通りでした。もちろん何があるか分からないためドキドキはしていましたが、ほぼ予定通りの展開で勝つことができました。　下図は実際に選手にフィードバックした資料です。オランダチームと日本チームの予選での分析資料なのですが、私が科学のサポートスタッフとしてオリンピックの現場で出したデータはこれぐらいです。オリンピックに行ってから、何をしたということはまったくなく、事前に諸々済ませておき、現地でこの資料を出しましたが、内容の説明はしていません。コーチにメール添付で送っただけです。　グラフの青い線がオランダ、赤い線が日本です。それぞれの0.5周から6周目までのラップタイムの推移です。線が上にいくほど速いことを表しています。最初のうちはオランダのほうが速いですが、周を追うごとにどんどん遅くなっていきます。日本は常に同じようなタイムを維持しておりますが、4.5周目に高木菜那選手から高木美帆選手に先頭が交代したため、ラップタイプを落としています。しかし、特に説明することなく、この資料を渡しただけで、決勝では彼女はタイムを落とさないように動きが修正されていました。自然にそういうことが行われるようになりました。　ここで、前回のソチオリンピックから今回の平昌オリンピックまでに、スピードスケートチームで何が行われてきたのか、5つの施策をご説明します。　1つ目は、「連名の組織力（国際化）＋ヘッドコーチのコーチング＋選手の力」です。実はソチオリンピックの後、日本スケート連盟の組織が大きく変わりました。まず、史上初めて外国人コーチを招聘したことが挙げられます。世界では2010年のバンクーバーオリンピックの頃から色々な国のコーチが入り交じるようになっていましたが、良い悪いは別として、これまで日本は日本人コーチによる指導を続けていました。しかし、ソチオリンピックの後に国際化を進めました。加えて、ヘッドコーチのコーチング力が上がったことも重要です。その結果、選手の力が伸びました。急に強くなったわけではなく、もともとポテンシャルがあった選手を、うまく引き上げることができたのです。　2つ目は、施策ではないのですが、「日本人スタッフが提供する科学・情報のサポート内容の質は以前と変わらない」という事実をお伝えしておきます。メディアではかなり「科学力」の部分を認めていただいてありがたいことですが、実は提供しているサポート内容の質は、以前と変わっていません。　3つ目は、「ヘッドコーチ、S&Cコーチがデータの見方を変え、活用方法の意識を変えた」ことです。ヘッドコーチやS&Cコーチ（トレーニングコーチ）がデータを読み込み、見方を変え、活用方法の意識を変えました。　4つ目は、「オリンピック期間中は何もせず。事前に準備を済ませた」ということです。何もしていないと言うと語弊がありますが、実際、科学的なサポートはほとんどしておりません。オリンピック前に準備を済ませて本番に望んでいます。　5つ目は、「多くの団体の協力、各スタッフの尽力」です。多くの団体からの協力、各スタッフの尽力により、各人が仕事に集中できる環境を作ったこと。それはつまり、強豪国に挑む環境づくりがなされたということです。以上の取り組みの結果、大崩れもありませんでしたし、逆にまぐれもなく、当初の計画通りの結果を出せたオリンピックだったと思っております。　もう少し詳しく、ソチオリンピック後の変化をお話しいたします。　1つは、初めてのナショナルチーム設置（外国人コーチ、スタッフの招聘＝国際化）です。　もう1つは、NTC氷上時間（スピードスケートのナショナルトレーニングセンターでの、トップチーム用の練習時間）の見直しです。実は今までは、何のためにトレーニング時間の優先順位があるのかがよく分からず、トレーニング時間について不透明な部分がありました。基本的なことを徹底的に見直しました。　選手選考基準の明確化にも取り組みました。今まで曖昧なところがありましたが、文書に明記し、それを1回だけではなく、繰り返し説明する機会を設けました。このような地道なことを繰り返してきた4年間でした。こうした取り組みを牽引したのが湯田淳強化部長です。湯田強化部長がしっかりとした強化方針を立てて、適切なスタッフ配置をしました。　オランダ人コーチ　デヴィト　ヨハン氏は、特別なことはせず、基本を忠実に行うコーチです。彼は、くすぶっている選手を引き上げる能力に非常に長けています。また、日本人以上に日本人らしいところもあります。例えば、練習や合宿の際、今まで選手それぞれバラバラだった食事時間を朝、昼、晩、きっちりと何時からと決めました。守らない選手には厳しく指導することもありました。それ以外にも、選手のスポンサー回りについてのルールを決めました。強い選手にとってスポンサー周りは必要不可欠です。しかし、各々勝手に出かけていては選手がバラバラになってしまうため、コーチがスポンサー周りの日時を指定し、選手の間に不公平感が出ないようにしました。　また、通訳を使わずに対話をするため、選手たちもシンプルに物事を考える癖がつきました。考える力はもともと高かったのでしょうが、考えたことをしっかり話せるようになったことが大きく、要求するサポート内容が詳細になったため、我々も活動しやすくなりました。　また、改めてPDCAのサイクルに則って、「何が目標なのか」「現状はどのような状態なのか」を把握し、問題を確認し分析しました。時間は無限ではないため、今、何をすべきかをしっかりと考えながら連盟と現場が取り組んだことで、その影響を受けて僕らも質の高い仕事をすることができました。　さらに、「強化方針」として、「スピードスケートに関する自身の目標達成に真摯な態度で取り組み、関連する物事に『信』をもって誠実に対応することにより、スポーツの誇りを携えた人間力豊かな社会の一員を育む場となることを目指す」と明確に打ち出したことも重要でした。実はこれまで強化方針は文書としてはありませんでした。そこで、しっかりと方針を打ち出しました。　組織に関しても、これまでは誰がどのような責任のもとで関わっているかが曖昧でしたので、組織図を作り、共有するようにしました。　この結果、現場で問題が発生しないように事前準備を行った上で、最強と思われる選手・コーチ・スタッフでオリンピックに臨むことができ、過去最高の成果を残すことができたわけです。　これまでのオリンピックには、どうなるか分からない、曖昧な部分を残したまま臨んでいました。今回の平昌オリンピックでは、開催までに取り組む苦労は多かったのですが、オリンピックに臨む時点では諸々想定し終えていたと思います。

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