経済産業省は2023年8月21日、同日より「健康経営銘柄2024」および「健康経営優良法人2024」の申請受付を開始したことを発表した。本年度調査の主な変更ポイントは、「情報開示の促進」や「社会課題への対応」、「健康経営の国際展開」に関する質問項目の追加だ。また、中小規模法人の取り組み促進に向けて、本年度より「ブライト500」申請企業に対して、各項目の取り組み状況を偏差値で表したフィードバックを行うという。
経産省が「健康経営銘柄2024」および「健康経営優良法人2024」の申請受付を開始。3つの調査項目の変更がポイントに

健康保持や増進を目指し、戦略的に健康経営を推進する企業は増加傾向に

経済産業省では、健康長寿社会の実現に向けた取り組みの1つとして、2014年度より東京証券取引所と共同で、「健康経営銘柄」の選定を行っている。また、2016年度からは日本健康会議と共同で、「健康経営優良法人認定制度」も運営してきた。これらは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、健康の保持・増進につながる取り組みを戦略的に実施する「健康経営」を推進するため、健康経営に取り組む法人が社会的に評価される環境を整備することを目的としている。

取り組み企業が年々増加している健康経営は、2022年6月7日の閣議決定により「新しい資本主義のグランドデザインおよび実行計画」にも位置づけられた。これにより、人的資本経営の土台として注目されるとともに、投資家や就活生らが健康経営優良法人認定の有無を企業評価に活用する動きが見られるなど、企業戦略としても関心が高まっているとのことだ。
経産省が「健康経営銘柄2024」および「健康経営優良法人2024」の申請受付を開始。3つの調査項目の変更がポイントに

「健康経営銘柄」では特に優れた取り組みを行う上場企業を選定

「健康経営銘柄」では、「特に優れた健康経営を実施している上場企業」を選定し、投資家にとって魅力ある企業として紹介している。「健康経営銘柄2024」の選定は、2023(令和5)年度健康経営度調査の回答に基づき評価を行うという。

「健康経営優良法人認定制度」では、企業規模別に2部門で認定

「健康経営優良法人認定制度」は、企業規模別に「大規模法人部門」と「中小規模法人部門」の2部門において、「健康経営優良法人」を日本健康会議が認定する制度である。2024年度の認定概要は以下の通りだ。

1.健康経営優良法人2024(大規模法人部門)の認定について
2023年度健康経営度調査の回答に基づき、要件の達成状況を判定。大規模法人部門の上位法人500社は、「ホワイト500」として認定される。

2.健康経営優良法人2024(中小規模法人部門)の認定について
申請書の内容に基づき、要件の達成状況を判定する。中小規模法人部門の上位法人500社は、「ブライト500」として認定される。


なお、本年度は公募の結果、同制度の運営事務局に日本経済新聞社が選出され、積極的な広報活動等を通じて健康経営のさらなる普及に取り組むとしている。

2023年度の健康経営度調査では「情報開示の促進」など3つの調査ポイントを変更

同省では、法人の健康経営の取り組み状況と経年での変化を分析するとともに、「健康経営銘柄」の選定、および「健康経営優良法人(大規模法人部門)」の認定にあたって、「健康経営度調査」を実施してきた。

選定・認定の前提となる同調査は、回答法人数が年々増加しており(昨年度は3,169法人)、特に日経平均物価を構成する225銘柄のうち8割を超える企業が回答している。各業界のリーディングカンパニーの多くが、経営戦略の一つとして健康経営に取り組んでいるという。

なお、本年度の調査ポイントとして、以下の3項目の変更が挙げられる。

【2023年度調査のポイント】
1.情報開示の促進
特定健診・特定保健指導の実施率や、業務パフォーマンス指標の測定および開示を評価対象とする。さらに、労働安全衛生・リスクマネジメントの開示状況について問う設問を追加した。これにより、人的資本に関する非財務情報の開示・評価の動向を踏まえつつ、健康経営の質の向上を図る。

2.社会課題への対応
個別事情に応じた柔軟な働き方や生産性低下防止に関する設問を新たに追加した。子育てや親の介護、女性特有の健康課題等による従業員の心身の負担が社会的な課題となっていることを踏まえ、従業員の業務パフォーマンスを最大化し、組織の活力向上を図る。

3.健康経営の国際展開
海外駐在員や現地法人の健康増進、健康課題への対応状況について把握することを目的とした設問を追加。健康経営の国際的な普及促進の検討にあたる(なお、評価には用いない)。


健康経営度調査に回答した法人(大規模法人部門)に対し、全法人における評価順位や偏差値等を記載したフィードバックシートの交付は、これまでと同様に継続して行うという。

さらに今年度からは、中小規模法人のさらなる視野拡大を目指すとともに、すでに取り組んでいる法人も健康経営の取り組みをさらに強化していけるよう、「ブライト500申込法人」に対しても結果のフィードバックを行うとのことだ。

なお、中小規模法人に申請する前法人に対するフィードバックの実施は、次年度以降に検討するとしている。

2023年度の調査回答・申請の締め切りは10月。来年3月に選定・認定を実施予定

申請についての今後のスケジュールは、以下の通りだ。

<2023年度健康経営度調査回答期間>
2023年8月21日~10月13日 17時

<健康経営優良法人2024(中小規模法人部門)認定申請期間>
2023年8月21日~10月20日 17時

<選定・認定時期>
2024年3月頃(予定)


申請は、以下の健康経営優良法人認定事務局ポータルサイトにて受け付けている。


企業戦略としての「健康経営」に注目が集まる中、いまだ取り組みの実施に至らない企業もあると考えられる。健康経営に興味を持つ企業や、自社がどの程度実施できているか把握したい企業では、「健康経営度調査」に回答することで、重視したい取り組みや今後取り組むべき項目が可視化できるだろう。こうした調査の活用も検討しながら、自社での健康経営について考えていきたい。

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