デロイト トーマツ グループは2021年2月25日、世界と日本の経営者の意識調査に基づきデロイトが公開した「2021年版デロイト グローバル レジリエンス報告書」の中で、日本の経営者のレジリエンスに関する回答結果を、世界の経営者の回答と比較し発表した。調査期間は2020年7月から9月で、アメリカ、アジア・太平洋、ヨーロッパ・アフリカの21ヵ国の大手企業経営者(CEO、社長、CFO等)と、公的部門の上級職2,260名より回答を得た(うち日本の経営者は149名)。これにより、日本と世界の経営者の意識に差異があることが明らかとなった。
「レジリエンス」について、日本含む21ヵ国の経営者はどう考えているのか。日本と世界の考え方には差も

日本でも世界でも「今後ディスラプションは一定以上起こる」と予想

新型コロナウイルス感染症拡大により、企業経営をとりまく不確実性がグローバル規模でさらに増大している。そのような状況においては、「危機的状況からの回復」やアフターコロナでの「ベターノーマル」の道を切り拓く「レジリエンス」を備えた組織の特性を分析し社会に応用することが、困難を乗り越える手段として重要といえるだろう。

はじめに、新型コロナのように社会に甚大な影響を与える「ディスラプション(混乱、崩壊)」について、「コロナショックと同規模のディスラプションの発生予想」を尋ねた。すると、日本では「時折」が54%、「定期的かつ継続的に」が17%で、計71%が「起こる」と回答。世界の経営者も「時折」と「定期的かつ継続的に」が合わせて63%にのぼり、日本および世界の経営者は、「コロナショックに匹敵する規模のディスラプションが、一定以上の頻度で発生する」と予想している。
「レジリエンス」について、日本含む21ヵ国の経営者はどう考えているのか。日本と世界の考え方には差も

日本企業の課題は「短期的・長期的な優先事項のバランス」か

デロイトでは、「レジリエンスのある組織は、順応性や協働といった性質とあわせて、長期的かつ革新的なマインドセットや文化を有している」と特徴づけ、その上で「不慮の事態に備えつつ変革を行えるよう、長期と短期の異なる視点で経営を可能にする必要がある」としている。

しかし、「短期的な優先事項と長期的な優先事項のバランスがとれているか」と尋ねると、日本では「うまく/非常にうまくとれている」との回答は44%という結果に。世界の54%と比べて10%低かった。
「レジリエンス」について、日本含む21ヵ国の経営者はどう考えているのか。日本と世界の考え方には差も

新型コロナを受け、「医療と病気の予防」は世界的に関心が高まる

最後に、「今後10年間で企業が取り組むべき最も重要な社会課題」を尋ねた。その結果、昨今の新型コロナウイルス感染症拡大を受け、「医療と病気の予防」が日本/世界ともに上位となった。

一方、日本と世界の経営者を比較すると、「気候変動と環境の持続可能性」と「既存制度や規範に基づく偏見と不平等」の項目について、日本の経営者の関心が世界に比べて低いことが判明した。

「気候変動と環境の持続可能性」については、世界では47%と約半数の経営者が重視しているのに対し、日本では39%にとどまっている。ただし、日本政府が「2050年までに二酸化炭素ネット排出量をゼロにする(カーボンニュートラル)」という政策目標を表明したのは本調実施後のため、現在は日本の経営者の関心も高まりつつあることが予測される。

また、「既存制度や規範に基づく偏見と不平等」において、海外では女性権利運動(Me Tooなど)や人種差別撤廃運動(Black Lives Matterなど)といった社会運動が展開されているため、世界の経営者は「企業としても取り組むべき重要課題」だと捉えているようだ。今後こういった世界潮流が日本社会へ波及し、日本の経営者の関心事となるかが注目されるだろう。
「レジリエンス」について、日本含む21ヵ国の経営者はどう考えているのか。日本と世界の考え方には差も
現在、気候変動を起因としたディスラプションに対して注目する経営者も多く、日本でも「『ESG』の視点を経営に取り込みたい」と考える経営者は増えている。不測の事態に備えながら、世界と目線を合わせた取り組みをしていくことが、今後さらに必要となるだろう。

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