アデコ株式会社は2023年7月3日、「LGBTQ+とジェンダー・ギャップ」に関する調査結果を発表した。調査期間は2023年6月20日~21日で、全国で正社員として働く20~50代の各年代男女250名ずつ、計2,000名より回答を得た。これにより、性的マイノリティ当事者の勤務状況や企業での取り組み実態、ジェンダー・ギャップによる不利益の有無などが明らかとなった。
「性的マイノリティ(LGBTQ+)」のための制度導入や理解促進を行う企業は2割未満。職場でカミングアウトできない人は7割以上に

全体の5%程度が「自身を性的マイノリティである考えている」と回答

性的マイノリティへの理解を拡大するべく、2023年6月16日に「LGBT理解増進法」が成立した。法案の提出から成立まで7年がかかったものの、当事者の中には、「理解を広める法律ではなく、差別を助長しかねない」との懸念を訴える声もあるという。このような中、企業では「性的マイノリティ(LGBTQ+)」に対し、どのような対応を行っているのだろうか。

はじめにアデコは、「自身を性的マイノリティであると考えているか」を尋ねた。すると、「はい」が5.3%(105人)、「いいえ」が85.9%(1,717人)、「わからない」が8.9%(178人)となった。
自身を性的マイノリティであると考えているか

性的マイノリティであることを職場で「カミングアウトしている」は3割未満に

次に同社は、前設問で「性的マイノリティ当事者である」とした回答者を対象に、「勤務先で性的マイノリティであることをカミングアウトしているか」を尋ねた。その結果、「している」が26.7%、「していない」が73.3%となり、職場でカミングアウトしている人は3割未満と少数にとどまることがわかった。
自身が性的マイノリティであることを職場でカミングアウトしているか

約6割が、勤務先に性自認や性的志向について「相談できる人がいる」と回答

続いて同社は、「性的マイノリティ当事者である」との回答者に対し、「勤務先には性自認や性的志向に関する悩みについて相談できる相手がいるか」を尋ねた。その結果、「大勢いる」が12.4%、「少数だがいる」が46.7%で、合わせて59.1%と、約6割が自身の性的マイノリティについて悩みを相談できる相手が職場にいると回答した。一方で、「いない」が41%となり、4割程度は悩みを誰にも相談できていない実態が明らかとなった。
勤務先に性自認や性的指向に関する悩みについて相談できる相手がいるか

「性的マイノリティ」に関する制度導入や理解促進の取り組みを行う企業は2割未満に

また、全体を対象に「勤務先が、性的マイノリティのための制度導入や理解促進のための取り組みをしているか」を尋ねた。すると、「している」は18.5%、「していない」が81.5%と、8割以上の企業で性的マイノリティのための制度導入や理解促進のための取り組みが実施されていないことがわかった。
勤務先で性的マイノリティのための制度導入や理解促進のための取り組みをしているか

性的マイノリティのための取り組みは「研修の実施」が約半数で最多

さらに同社は、「勤務先で性的マイノリティのための制度導入や理解促進のための取り組みを行っている」とした回答者を対象に、「具体的な取り組み内容」を尋ねた。その結果、「性的マイノリティに関する研修の実施」(47.3%)が最も多かった。以降、「性的マイノリティのための相談窓口設置」(32.4%)、「企業として性的マイノリティ支援の活動に参加」(31.6%)と続いた。
性的マイノリティに関して具体的にどのような取り組みを行っているか

勤務先で「ジェンダー・ギャップを感じたことがある」は女性が約4割、男性が約3割

最後に同社は、自身を「性的マイノリティではない」とした回答者を対象に、「現在の職場においてジェンター・ギャップ(性別により生じる格差)を感じたことはあるか」と尋ねた。すると、女性では「ある」(14.8%)と「どちらかといえばある」(23.5%)の合計は38.3%だった。男性では「ある」(8.6%)と「どちらかといえばある」(19.2%)の合計が27.8%となった。

そこで、「これまでのキャリアで性別が理由で不利益をこうむったことがあるか」を尋ねたところ、女性の3割、男性の約1割が「ある」と回答したという。「具体的な不利益」を尋ねると、女性は「給与や賞与に差を付けられた」、男性は「正当な評価を受けられなかった」との声が最も多かったとのことだ。
現在の職場でジェンダー・ギャップを生じることはあるか
本調査結果から、「自身を性的マイノリティである」と考える社会人は5%ほど存在するものの、職場でカミングアウトしている人はいまだ少数であることがわかった。あわせて、企業の8割以上が性的マイノリティに対する制度導入や理解促進を図る取り組みを未実施であることも判明した。性的マイノリティへの関心が高まる今、企業には理解促進の取り組みを図るとともに、従業員が性別にとらわれず働ける環境の整備が求められるだろう。

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