エン・ジャパン株式会社(以下、エン・ジャパン)は2022年3月24日、企業の人事担当者を対象に実施した「パワハラ対策」についての調査結果を発表した。調査期間は2021年11月24日~12月21日で、497社の人事担当者から回答を得た。これにより、パワハラ防止法の認知度や対策の実施状況などが明らかとなった。
8割以上が「パワハラ防止法」を認知。法改正による「中小企業での防止措置義務化」も、対策未実施の中小企業はいまだ多く

8割以上が「パワハラ防止法」について認知。前年と比較し16ポイント上昇

2022年4月から中小企業にも防止措置が義務化された「改正労働施策総合推進法」(以下、パワハラ防止法)について、企業はどの程度認知し、対策を行っているのだろうか。

はじめにエン・ジャパンは、「パワハラ防止法について知っているか」を尋ねている。すると、「内容も含めて知っている」が34%、「概要だけ知っている」が50%で、合計84%がおおむね認知していることがわかった。2020年の調査結果と比較すると、「内容も含めて知っている」は16ポイントアップしており、認知度が向上していることがうかがえる。
パワハラ防止法を知っているか

6割以上が「パワハラ対策を実施」も、企業規模によって格差あり

次に、同社が「パワハラ対策の実施の有無」を聞くと、「行っている」が66%だった。2020年の調査結果と比較すると6ポイント上昇しており、対策の実施率も向上傾向にあると推測できる。
パワハラ対策の実施有無
また、パワハラ対策の実施有無の回答を「企業規模別」に見ると、「1,000名以上」の企業では90%、「300~999名」では89%、「100~299名」では75%などとなり、最も少なかったのは「1~49名」の45%だった。

2022年4月の法改正により、中小企業にも防止措置が義務化されたが、2021年末時点では企業規模が小さくなるにつれ実施率も下がり、対策の実施が不十分な企業も一定数あることがうかがえる。
パワハラ対策の実施有無(企業規模別)

具体的なパワハラ対策は「社内に相談窓口を設置」がトップ

次に同社が、「パワハラ対策を実施している」とした企業に対し、「具体的なパワハラ対策の実施内容」について尋ねると、「社内に相談窓口を設置」が80%で最も多かった。以下、「就業規則に罰則規定を設ける」が56%、「パワハラの対策方針の明確化」が45%などと続いた。
具体的なパワハラ対策の実施内容

パワハラ対策を進める上での課題は「管理職や経営層の理解の低さ」が半数以上に

続いて、同社が「パワハラ対策を進める上での課題」について質問すると、「管理職のパワハラに対する認識・理解が低い」が55%で最も多かった。以下、「パワハラの基準・境界が曖昧」が43%、「経営層のパワハラに対する認識・理解が低い」が37%などと続いた。

具体的なエピソードとしては、「管理職によるパワハラがあっても、注意できる立場の経営者の認識が低く、抑止が難しい」や「言葉によるパワハラは意識の問題となるため、明確な線引きが非常に難しい。指導や注意のつもりでも、受け取る側ではそれがパワハラと受け止められてしまうケースもある」といった回答があった。人事担当者として、対策に苦慮している様子がうかがえる。
パワハラ対策を進める上での課題

半数以上が自社のパワハラを把握。「上司と部下のコミュニケーション不足」がパワハラの原因か

次に、同社は「社内のパワハラの把握率」について調査している。その結果、全体では「把握している」が6%、「大体把握している」が49%で、合計55%が「把握している」と回答した。

「把握している」(「把握している」と「だいたい把握している」の合計)の回答を企業規模別に見ると、「1,000名以上」の企業では77%、「300~999名」では67%、「100~299名」では62%などとなった。企業規模が大きくなるにつれ、把握率が高くなる傾向がうかがえる。

あわせて、「パワハラの把握方法」を聞くと、「直接本人から相談があった」や「本人の周辺(上長・同僚等)から相談があった」といった回答が多く集まった。
自社のパワハラの把握率
また、同社は「自社のパワハラを把握している」と回答した企業に対し、「パワハラが起きる部署に特徴や傾向はあるか」を尋ねている。すると、「上司と部下のコミュニケーションが少ない」が47%で突出していた。以下、「失敗が許されない」と「さまざまな年代の従業員がいる」がともに18%、「他部署や外部との交流が少ない」が15%などと続いた。
パワハラが起きる部署の特徴
調査結果から、2022年4月から施行されている「改正パワハラ防止法」により、中小企業でも防止措置を講じることが義務となっているが、調査時点では対策が未実施の企業もそれなりにあることがわかった。未対策の企業では、「相談窓口の設置」といった施策の検討と導入が急務となるだろう。

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