アフターコロナで変貌するリスクマネジメントのあり方

また、これもコロナ禍が教えてくれたことだが、企業のリスクマネジメントのあり方が変貌を遂げるだろう。そもそもリスクマネジメント、あるいはリスクヘッジの発想は、博打のようなもので、あまりに合理性や効率性を考え過ぎては成り立たないものである。久しく新自由主義や成果主義が幅を利かせた結果、人間を含めたシステムが制度疲労を起こしているのが現状である。今後、多くの企業では原点に回帰し、さまざまな分野でリスクマネジメントの視点を持った経営が見直されることになるだろう。

リスクマネジメントでは「スラック」を無駄だと考えてはならない。スラックとは余裕や遊びのことである。以前、筆者は本サイトに「組織には『遊び』と『風通し』が必要」という論考を寄稿したことがある(※)。その中で「アリの社会では、働かないものを含む一見非効率的な組織こそ長期的な存続が可能になり、このような組織が選択されてきた、ということになる。働かないアリは、アリの組織には必要不可欠で重要なプレゼンスを発揮しているのだ」と述べた。スラックのあるシステムでないと、将来も生じるであろう危機に的確に対応できないことを企業は大いに学習すべきである。

筆者も忙殺されているが、企業では雇用保険を財源とする「雇用調整助成金」が花盛りである。雇用を維持するのはいいが、従業員に休業手当を支払って休業させるだけで終わるのでは、いかにももったいない。経営者あるいは人事部門は、この機会に従業員の潜在能力を引き出すストラテジーをシステマチックに構築していくべきであろう。

※:特別読み切り「組織には『遊び』と『風通し』が必要(前編)」


大曲義典
株式会社WiseBrainsConsultant&アソシエイツ
社会保険労務士・CFP
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