禅問答みたいになってしまいますが、理想の人事像で言うと「人事とは」みたいなことに囚われないことが大事なのかもしれません。会社や業界、組織、チームによって人事のあり方は絶対変わります。その前提のもと、人事という業務のバックグラウンドを活かして、人や組織の課題解決に向けてリードしていくのが人事としての理想の姿ではないかと思います。
もう1つ、社内に対して、安心と挑戦をソフトもハードもセットで提供できる人事でありたいと考えています。そのような人事がいれば、安心感を持って社員が色々チャレンジしていけると思うんです。この打席でフルスイングしていいんだ、失敗してもいいんだと思える土台を作っていけば、どんどん新しいもの、お客さまへ価値提供できるものも生まれそうじゃないでしょうか。そうなると、この会社でこういうチャレンジがしたい!って人が増えてくると思うんです。人事として、仕組みや制度を整えたりする、それに向き合ったりするのも大事ですが、そのような心理的なソフト面も含めた環境づくりができればいいですよね。これは人事としての向き合い方だと思っていて、「この会社だったら、本当に思いっきり仕事ができるんだ」という社員を増やしていくのは、シンプルですが、人事として色んな面で意義があることじゃないでしょうか。ノンピでもCHROとして、社員のために、このような環境づくりに全力で取り組んでいきたいと思います。
会社や事業の成長のために人事がいるわけです。なので、経営層と対等に対話できる人事が、プロフェッショナルだと思います。経営層や社員から頼られる社内の最高のパートナーみたいな存在とも言い換えられるかもしれません。これが、私の理想の人事像です。
よくメンバーに言っているのですが、人事のために会社があるわけではありません。会社で決まっている規則だからとか、人事制度だからと言って人事は人や組織の番人のようなものになってはいけないのです。よって、患者様(顧客)との接点に全ての価値を集約していく。そうした人事部門でありたいですし、そのためにも社員と仕事について最も詳しい集団でありたいですね。
当社では昨年、理念体系全体を推進するために、「一人ひとりが働きがいを感じ、夢や理想に挑戦できる環境を実現する。」という「CUC Partners Promise」を策定しました。これは経営者から働く皆さんへの約束を示したものです。「Philosophy」は、経営から働くみなさんに求めているもの。このMissionを目指していこう、この行動指針(Way)を通じて一緒に山に登っていこう、といったことを経営から呼びかけています。一方で、「CUC Partners Promise」は、その実現に向けて経営から働く皆さんへの「約束」として定めたもの。この約束をしっかり果たしていくために、人事としても育成やキャリア開発、理念浸透などを輪のようにつなげていこうとしています。これが、言わば私たち人事部門のミッションです。私たちの営みは、医療行為をする医師や看護師などがいて、患者様から診療報酬をいただく。患者様が起点で当社の事業は成り立っています。なので、社内の価値を患者様との接点に集約していくために、人事としては採用や育成において価値を発揮していかなければなりません。そして、社員のコンディションが悪くなったら整える。さらに、当社で働きたくなる、力を発揮したくなるような制度をつくっていく。こうしたことを実現しようと思ったら、やはり人事部門は「社員や仕事について、最も詳しい集団にならなければならない」と訴えています。
最近、人事がバズワードに惑わされて耳障りのいい人事施策を打ちがちだと感じています。その上の戦略やストーリー、ポリシーがなければ、施策が箇条書きに並ぶだけで、実行してもあまり意味がありません。
経営的効用という「アウトカム」をきちんとイメージして、そこに向かうことを大前提として、どのような施策がこれから必要なのかを考える。そのような上位概念をしっかり作り上げたうえで、人事施策を進めることをすごく大事にしています。それは、日頃から人事メンバーにもよく言っていますね。
また、人事施策は、恋愛で言うところの告白ではなく「プロポーズ」だと思って進めています。得たいゴールや描く状態にまで持っていくまで、人事は添い遂げなければなりません。メンバーにはよく「執念」という言葉を使っているのですが、やり続ける覚悟は絶対必要です。一番ダメなのは、人事施策を進めてみたものの、フェードアウトして自然消滅。こういうのをやっていると、人事が何をやりたいのかわからないですし、今後私たちから施策に関してメッセージを出したとしても現場や社員には真意が伝わらないじゃないですか。仕組みやシステムは令和でも、運用は昭和みたいな、泥臭くやり続けることも人事として大切にしています。
「嫌われることを厭わない」というのは大事にしながら、日々業務に取り組んでいますね。もちろん嫌われたくはないですが、誰かに嫌われてもやらなきゃいけないこともあると思うんです。全員が納得する人事制度なんて多分ないじゃないですか。変化がこれだけ激しいわけですから、人事も運用だけじゃなくて、新しいことを仕掛けていかなければなりません。そういうなかでは、人事の方向性にいい思いをしない方もいると思うんですけど、毅然と施策を進めていかなければならない時もあります。最初から良い顔をせずに、局面でいかに社員と折り合いをつけていけるか、向き合っていけるかが人事に問われていると思います。
もう1つは、「社員の模範」になるというのを大事にしています。やはり人事が率先してやらないと信頼されないですから。例えば、「自己研鑽してできることを増やしていきましょう」「こういう研修があるので参加してください」と言ったところで、人事が日頃から学習、インプットしていなかったら説得力がないですよね。人事の行動一つで社員のモチベーションにも影響はあるので、常に見られていると思って、業務に取り組んでいます。
人事というのは、手段や手法に囚われがちですが、経営をしっかり見ないといけません。経営層が考えて判断して決定したことを形にしていく、上流工程にいる部門だと思っています。
経営層が間違っていたら、しっかり意見を言う必要がある。そして、人事としての考えを持ってちゃんと議論する。そこを疎かにすると会社が管理主義的になってしまいます。一方で、現場の社員に寄り添う姿勢もすごく大事ですし、経営層と社員の間に立つバランス感覚は大事にしています。
人事として、大事にしていることは「人事の中のエンゲージメント」です。私よりもメンバーのほうが社員と対峙して対話する機会は当然多いので、人事のメンバーが一人ひとりエナジーを解き放って動かないと社員には会社・人事がやりたいことなんて伝わらないと思います。なので、各メンバーが人事戦略を、それぞれの言葉で、しっかり自分で語るというのは、人事の組織としても大事にしています。
人事組織として、という大きな話もさせていただきたいのですが、以前の当社の人事組織は、人事評価、育成、労務と大きく3つに分かれていました。それぞれ独立しているような組織だったので、横同士何をやっているか見えづらい状況でした。そういうこともあって、2023年に戦略企画部という横串を刺す機能の組織を新たに設けました。これをやったことがすごくエーザイにとっては効果的でしたね。というのも、今までは、重要だけど緊急度が少し落ちるものは後回しになっていたのですが、この横串の組織をつくったことで、各組織の連携が取りやすくなり、これまで後回しになっていた重要な仕事も円滑に、スピード感を持って回るようになってきました。それに加えて、横同士で情報共有できる場も半期に1回、設けるようにしています。人事全員が集まって、グループに分けて、いま自分たちがやっていることをワークショップの形で、シェアし合っていますね。
また、当社ではパルスサーベイを毎月実施してエンゲージメントスコアも出しているのですが、ある面白いことが判明しました。それは何かと言いますと、人事のエンゲージメントスコアが全社のエンゲージメントスコアの先行指標になっていたのです。数字を追ってみると、人事のエンゲージメントスコアが下がると、全社も少し遅れて下がっていたのです。スコアが上昇した時も同じトレンドでした。
ますます人事のエンゲージメントが大事になってきていますので、これまで以上に人事のエンゲージメントを高める施策を進めています。横同士の組織交流の場を設けるだけでなく、人事全員が集まる会議での私自身の振る舞い、姿勢にも気をつかっていますね。メンバーはやはり見ていますから、会議の場で、どんな言葉で何を言うか、どんな意図を持たせて当日の資料をつくるかは、すごく考え抜きながら毎回臨んでいます。
「人と組織を信じる」というのを大事にしています。人事の仕事をしていると、裏切られたり、うまくいかなかったり、勝手に期待して勝手に喜んだり、がっかりしたり、そんなことが日常茶飯事です。内定辞退や入社後の早期離職もあります。ただ、そこで私が諦めたり、信じなかったりしたら、心のこもった仕事なんてできません。そういう気持ちも社員に伝わりますし、期待されていないなんて思わせたら、施策もうまくいくはずがないでしょう。だからこそ、「人と組織を信じる」というのは、すごく大事にしています。
あとは、「一隅を照らす」という言葉も好きですね。一緒に仕事をする人に対して、活力を与えるような良い影響をもたらして、今度はその人が違う人に、良い影響をもたらせる。そういう連鎖を社内、組織で生み出したいなと思っています。これはメンバーにも実践してほしくて、良い影響を与えられるような人になってほしいといつも伝えています。
人事として大事にしているのは「誠実さ」です。これは人、組織、会社、社会など全ての方面において共通することだと思います。人事は経営や社員から「信頼」されてこそ、良い仕事ができるのだと思います。その信頼の源は「誠実さ」から来ると思います。メンバーにも日々「信頼残高を増やしていこう」と伝えています。
「可能性を諦めない」というのは人事として大事にしています。例えば、面接時に、候補者の可能性を自分なりに考え続けたり、入社後の社員の可能性を信じ続けたりといったところは、人事としてすごくこだわっています。
何事も諦めるのは簡単です。ただ、面接一つにしても、「この候補者は違う」と諦めるのではではなく、「こういうところが伸びるかもしれない」「こういうアプローチをしたら開花するかもしれない」といった形で、候補者のコアな部分に近づくために、可能性を信じる、探し続けるというのが人事には必要ではないでしょうか。候補者と面接をしていても、その方の人生観や信念みたいなものに触れさせていただけるときがあります。そこに共鳴して深掘ると、その人の見えていなかった良い部分が明らかになってくるので、簡単に人を判断するのではなく、可能性を信じることを大切にしています。自分自身が、至らない部分が多いからこそ、人の内面に真摯に向き合いたいですし、フラットな人事でいたいです。
もう1つは、1社目の上司からの教えでもあるのですが、「総論ポジティブ、各論ネガティブ」という考え方です。一つひとつはネガティブに捉えて思考しながら、そうは言っても上手くいくぞというような感覚で全体を見ていく。人事はたくさんネガティブな面にも触れることが多い仕事だと思うのですが、上手くいくという気持ちでいないと切り替えも難しくなってくると思います。考え方一つとっても、バランス感覚であったり、フラットさであったりというのは人事として大事にしていますね。