「ハマキョウレックス事件」、「長澤運輸事件」と呼ばれる、注目の最高裁判決があった。前者は、正社員と非正社員の手当の格差について、後者は、定年後の正社員と非正社員の賃金格差についての判決だ。各種マスコミにも取り上げられているため、ここでは詳細を割愛するが、これらの判決は、日本の賃金制度についての大きな転換点になると思われる。
「ハマキョウレックス事件・長澤運輸事件」

労働契約法第20条

労働契約法第20条はおおよそ以下のような内容だ。「いわゆる契約社員の労働条件が、期間の定めのない労働契約を締結している労働者(正社員など)の労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該①職務の内容及び ②配置の変更の範囲 ③その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない」。

今回下った二つの事件の最高裁判決では、契約社員に手当の差を設けていることの多くは違法とみなされた。また、定年後の給与引き下げについては、これまで通り引き下げそのものは一般的で社会的不合理ではないとされたが、各種手当については個別に判断すべきとされた。

つまり、今までは正社員と契約社員で労働条件(特に賃金)に格差はあるものと捉えられていたが、これからは必ずしもそうとは言い切れなくなってくる。

今後への影響

この判決を読み解くと、今後、契約社員の賃金格差については、より厳しい目が向けられ、一方、定年再雇用者に対しては、これまで通りある程度の賃金格差が認められそうだ。各種手当については、正社員と非正社員とで格差を設けることが明確であれば、その妥当性が認められるだろう。

「同一労働同一賃金」が盛んに叫ばれているが、これら判決の影響から、企業としては今までの賃金制度を見直す必要があるだろう。言い換えると、自社において正規と非正規の役割の差は何なのか、その違いの説明がきちんとつけられるのかどうかとうことだ。

単に「正規社員だから」「非正規社員だから」ではなく、両者の差について、企業は雇用する側として改めて見直さなければならないだろう。


社会保険労務士たきもと事務所
代表 瀧本 旭

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