部下への対処のコツ

部下の不調に気づいたら、次はその対応が求められます。いろんな指南書で部下への接し方が説かれていますが、技法には上司自身やその相手である部下との“相性”があり、一概にどれがいいとは言えません。

比較的多くの場合に役に立つとされている方法としては、「傾聴」と「共感」があります。これは部下の話を批判せずに、あるいはアドバイスをせずにひたすら聞き、「確かにそれはつらいだろうな」と納得できる共感ポイントを探し、それを相手にフィードバックする、というやり方です。

人は、いくらか愚痴を聞いてもらえるだけで心が救われるものです。また、上司としてそのような話を聞く中で、職場環境の改善すべきところが分かり、具体策を打ち出せることもあるでしょう。ですが、もし悩みが自分の手には負えないほど深刻であると感じたら、ぜひ、産業医面談、すなわち事業場内のスタッフによるケアを勧めてください。

アンケート調査によると、職場のストレス原因は「仕事の失敗」、「仕事の質・量」、「会社の将来性」などと並んで、「人間関係」が上位に挙げられています。私の経験上、「上司との関係」という場合が実に多いです。あなたが原因である場合、言うまでもなく部下はあなたに相談できません。もし「自分が原因かも知れない」と感じたら、産業医や人事労務担当者、あるいはさらに上の上司・先輩に相談することをお勧めします。

人間なのですから、相性の合わない部下がいたって当然です。「自分は上司なのだから、絶対にラインケアで対応しないといけない」と無理をせず、適切なSOSを周りに出しましょう。そうすることにより、その姿を見て育つ部下たちは、何かあったら自らSOSを出せるようになりますし、柔軟な対応のできる上司へと育っていくはずです。

(参考)
厚生労働省:独立行政法人労働者健康安全機構「職場における個々の健康づくり~労働者のここの健康の保持促進のための指針~」
厚生労働省:こころの耳「e-ラーニングで学ぶ『15分でわかるラインによるケア』」
合同会社DB-SeeD
日本医師会認定産業医 労働衛生コンサルタント
神田橋宏治
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