コロナ禍の影響により採用手法が大きく変化し、オンラインと対面の良い面を掛け合わせたハイブリッド型の採用活動が主流となりつつある。
24卒学生は、大学生活のすべてがWithコロナとなっている学年であるため、採用活動において、これまでとは異なる対応を迫られる場面もあるのではないだろうか。
HR総研では、2022年12月時点における2023年と2024年新卒採用の実態についてアンケートを実施した。その調査の結果を以下に報告する。

<概要>
●「2022年12月」時点で中小の半数が23卒採用を継続
●大企業では「ターゲット層の確保」、中小企業では「母集団形成」に苦戦
●8割前後で個別採用に取り組む、ダイレクトソーシングの内容は?
●中小企業での内定辞退率0%は半数近く、内定辞退率を抑えるカギは?
●24年新卒採用計画数の動きは?中小企業では「採用なし」が3割
●2024年新卒採用における課題「ターゲット層の確保」、その対策は?
●大企業の9割が「個別採用」を導入、24卒採用のダイレクトソーシングとは?

「2022年12月」時点で中小の半数が23卒採用を継続

まず、2023年新卒採用の状況について見てみる。
2022年12月時点における「2023年4月入社の採用計画に対する現在の内定者充足率」を企業規模別に見ると、従業員数1,001名以上の大企業では「100%以上」の割合が最多で38%、次いで「90~100%未満」が28%、「80~90%未満」が18%となっている。これらを合計すると、8割以上の大企業で採用計画数に対する内定者の充足率が8割を超えている。
301~1,000名の中堅企業では、内定者の充足率が8割を超えている企業の割合は51%と半数程度となっており、大企業より厳しい状況となっている。また、300名以下の中小企業では、内定者の充足率が8割を超えている企業の割合は僅か24%と4分の1程度にとどまっており、大企業や中堅企業との顕著な差異が見られている。また、内定者充足率「0%/中断した」の割合は16%、さらに「2023年卒は採用活動をしていない」は42%と4割を占めていることから、中小企業における新卒採用は、依然としてシビアな状況にあることがうかがえる(図表1-1)。

【図表1-1】2023年4月入社の採用計画に対する現在の内定者充足率

HR総研:2023年&2024年新卒採用動向調査 結果報告【採用手法編】

それでは、現時点で23卒採用の活動状況はどうだろうか。
やはり企業規模が大きいほど活動を終了している割合が高くなっており、大企業では「終了した」の割合は74%と4分の3を占め、中堅企業では60%、中小企業では52%となり、2022年12月時点でも半数程度が活動を継続している(図表1-2)。

【図表1-2】企業規模別 2023年卒採用活動の活動状況

HR総研:2023年&2024年新卒採用動向調査 結果報告【採用手法編】

すでに23年新卒採用活動を終了した企業について、活動を終了した時期を見てみると、大企業では「2022年8月」までに46%と半数近くが終了している。また、「2022年10月」までには93%とほぼすべての企業が終了している状況である。この傾向は中堅・中小企業でも同様で、年内に活動を終了する企業では企業規模に関わりなく、2022年10月までにほとんどが活動を終了していることが分かる。(図表1-3)。

【図表1-3】企業規模別 2023年新卒採用活動を終了した時期

HR総研:2023年&2024年新卒採用動向調査 結果報告【採用手法編】

大企業では「ターゲット層の確保」、中小企業では「母集団形成」に苦戦

次に、「2023年新卒採用において苦労したこと」を見てみる。
大企業では「ターゲット層の応募者を集める」が最多で55%、次いで「応募者の数を集める」が37%、「内定者フォロー」が34%などとなっている。
採用規模が大きく効率的かつ効果的な新卒採用を図る必要があるため、単に母集団形成をするだけでなく、より難易度の高いターゲット層に絞り込んだ応募者集めが重要であるとともに、内定を出した後も内定辞退の防止のため内定者フォローも重視されている。応募者と内定者いずれに対しても丁寧で密なコミュニケーションを求められることが、採用担当者にとっては新たな手間となり苦労と感じられているのだろう。
一方、中堅企業では「ターゲット層の応募者を集める」に並んで「応募者の数を集める」が最多で50%となっている。加えて、「内定者フォロー」(23%)より「応募者フォロー」の割合が僅かに高く26%で、内定を出す前の採用段階から、応募者の離脱(選考辞退)の防止を重視している企業の割合が大企業より高いことが特徴的である。そして、中小企業では「応募者の数を集める」が最多で50%、次いで「ターゲット層の応募者を集める」が44%で、この二点に集中しており、中小企業の新卒採用では、まずは母集団形成に注力する企業が多いことが分かる(図表2)。

【図表2】企業規模別 2023年新卒採用において苦労したこと

HR総研:2023年&2024年新卒採用動向調査 結果報告【採用手法編】

8割前後で個別採用に取り組む、ダイレクトソーシングの内容は?

23年新卒採用での採用手法の特徴を見てみる。
まず、23年新卒採用では、従来型の「マス型採用」と少数または1対1での丁寧なアプローチを行う「個別採用」で取り組んだ比重を比較してもらったところ、「マス型採用に注力した」の割合は大企業で16%、中堅企業で26%、中小企業で17%と、2割弱~4分の1程度にとどまり、いずれの企業規模でも少数派となっている。大企業では「マス型採用を主軸に個別採用にも取り組んだ」が50%と半数を占めており、企業規模に関わらず8割前後の企業で少なからず「個別採用」を導入し、学生との丁寧なコミュニケーションによりターゲット層の母集団形成に取り組んでいることがうかがえる。特に中小企業では、「個別採用に注力した」が35%と最も多く、採用計画数が小規模であるからできることでもあるが、一人ひとりとの丁寧なコミュニケーションによりターゲット層の応募者を確実に取り込もうとする意図がうかがえる。(図表3-1)。

【図表3-1】2023年新卒採用における「マス型採用」と「個別採用」の取り組み比重

HR総研:2023年&2024年新卒採用動向調査 結果報告【採用手法編】

また、個別採用の中でもダイレクトソーシングとして取り組んだ内容は、大企業では「逆求人サイトの活用」が最多で34%、次いでリファラル採用である「社員からの紹介」と「内定者からの紹介」がそれぞれ32%、13%などとなっている。
中小企業では、「実施していない」が最多で44%と4割を超えるものの、取り組んだ企業の中では「逆求人サイトの活用」や「社員からの紹介」に次いで、「SNSの活用」が15%となっている。割合としては高くはないが、若者の主な情報収集源となっているSNSを採用活動に活用し、コストを抑えながら効果的に採用マーケティングに取り組もうとする企業の割合が大企業や中堅企業より高く、特徴的である(図表3-2)。

【図表3-2】2023年新卒採用において実施した「ダイレクトソーシング」の内容

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中小企業での内定辞退率0%は半数近く、内定辞退率を抑えるカギは?

2022年12月時点における内定辞退率を見てみると、大企業では「10~30%未満」が最多で32%、次いで「10%未満」(0%を除く)で29%などとなっており、内定辞退率「30%以上」(「30~50%未満」~「100%」の合計、以下同じ)の企業の割合は34%と3割程度に上っている。また、「0%」とする割合は僅か5%で、内定者数も多いだけに多少の内定辞退は避けられない状況がうかがえる。中堅企業における内定辞退率「30%以上」の割合は50%に上っており、大企業より高い割合となっている。一方、中小企業では48%と約半数は内定辞退率「0%」で、内定者の取りこぼしが少ない傾向となっている(図表4-1)。

【図表4-1】企業規模別 2023年新卒採用の内定辞退率(2022年12月時点)

HR総研:2023年&2024年新卒採用動向調査 結果報告【採用手法編】

取り組んだ採用手法別に2023年新卒採用の内定辞退率を見ると、「マス型採用に注力/主軸で取り組んだ」とする企業群より「個別採用に注力/主軸で取り組んだ」とする企業群の方が、内定辞退率は低いという傾向が見られる。「0~10%未満」(「0%」と「10%未満」の合計)の割合は、「マス型採用に注力/主軸で取り組んだ」とする企業群で36%に対して、「個別採用に注力/主軸で取り組んだ」とする企業群では51%と15ポイント高くなっている(図表4-2)。この結果より、個別採用への積極的な取り組みは、内定者の入社意欲を高める働きがあり内定辞退率を抑制するカギとなっていることが推測される。

【図表4-2】取り組んだ採用手法別 2023年新卒採用の内定辞退率(2022年12月時点)

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24年新卒採用計画数の動きは?中小企業では「採用なし」が3割

ここからは2024年新卒採用の動向を見ていく。
まず、採用計画数の増減については、いずれの企業規模でも「前年並み」が最多となっているものの、大企業では25%が「増やす」としており、一方「減らす」は0%、「採用なし」は僅か3%となっており、増やす側が22ポイントも多くなっている。中堅・中小企業では、「増やす」がそれぞれ15%、14%で、一方「減らす」は2%、3%となっており、いずれも「増やす」が「減らす」を顕著に超過している。中小企業での「採用なし」は31%と3割に上っており大企業や中堅企業より顕著に高いものの、図表1-1に示す23卒時での「採用活動をしていない」とする割合(42%)より低くなっていることは、中小企業における新卒採用意欲の高まりを表していることをうかがわせる(図表5)。

【図表5】2024年4月入社の大卒(大学院含む)採用計画数の増減

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2024年新卒採用における課題「ターゲット層の確保」、その対策は?

2024年新卒採用における課題については、いずれの企業規模でも「ターゲット層の応募者を集めたい」が最多で、大企業で49%、中堅企業で54%、中小企業では52%と半数前後で推移している。中堅企業では「内定辞退者を減らしたい」もこれに並び最多、次いで「選考辞退者を減らしたい」が47%となっているのが特徴的である。特に中堅企業では、応募者や内定者がより志望度の高い大企業に内定するとそちらに流れるリスクが高いため、このような課題意識が強く、23卒採用時と同様に内定者や応募者フォローを重視して、内定者や応募者との信頼関係の構築に注力していることがうかがえる(図表6-1)

【図表6-1】2024年新卒採用における課題

HR総研:2023年&2024年新卒採用動向調査 結果報告【採用手法編】

いずれの企業規模でも重視されている「ターゲット層の獲得」であるが、そのために実施・検討している施策はどのようなものなのかを確認してみると、大企業では「先輩・リクルーターの活用」が最多で49%とほぼ半数に上っている。すでに社内で活躍している社員のネットワークを活用して、効率的にターゲット層の学生との接点を増やしていることが分かる。これに次いで「インターンシップの活用」が41%、「キャリアセンター・就職部訪問」が26%などとなっている。中堅企業では「大学主催の学内セミナー」が最多で51%。これに次いで「インターンシップの活用」と「キャリアセンター・就職部訪問」がともに47%などとなっており、大学との関係強化を重視していることがうかがえる。さらに、中小企業では「インターンシップの活用」が最多で36%となっており、これに1ポイント差という僅差で「キャリアセンター・就職部訪問」(35%)が続き、「大学主催の学内セミナー」(23%)も含めて中堅企業と同様に大学との関係強化を重視した施策が上位に並んでいる(図表6-2)。

【図表6-2】ターゲット層を採用するために実施・検討している施策

HR総研:2023年&2024年新卒採用動向調査 結果報告【採用手法編】

大企業の9割が「個別採用」を導入、24卒採用のダイレクトソーシングとは?

24年新卒採用についても採用手法の特徴を見てみると、概ね23卒採用時と同様の傾向が見られており、大企業と中堅企業では「マス型採用を主軸に個別採用にも取り組む」の割合が最多でそれぞれ56%、37%となっている。中小企業では「個別採用に注力する」が最多で39%と4割に上り、23卒時の割合(35%)より微増傾向となっている(図表7-1)。

【図表7-1】2024年新卒採用における「マス型採用」と「個別採用」の取り組み比率

HR総研:2023年&2024年新卒採用動向調査 結果報告【採用手法編】

24年新卒採用においてすでに実施している、もしくは、これから実施しようとしている「ダイレクトソーシング」については、大企業と中堅企業では「社員からの紹介」が最多でそれぞれ39%、33%となっている。23年新卒採用まで最多となっていた「逆求人サイトの活用」を、「社員からの紹介」というリファラル採用が上回る動きが見られていることが特徴的である。「内定者からの紹介」も大企業と中堅企業で大きくポイントを伸ばしており、直接「ヒト」を介して関係性の強い、ミスマッチの少ない応募者を集めようとしている様子がうかがえる(図表7-2)。

【図表7-2】2024年新卒採用において実施している、もしくは、これから実施しようとしている「ダイレクトソーシング」

HR総研:2023年&2024年新卒採用動向調査 結果報告【採用手法編】

一方、ダイレクトソーシングを「実施しない」とする企業は図表7-2を見ると大企業では20%、中堅・中小企業では35%となっており、このような企業が実施しない理由については、大企業と中堅・中小企業では実施しない理由に顕著な違いがあるようだ。大企業では「工数がかかり面倒だから」が最多で38%、中堅・中小企業では「コストがかかるから」が最多でそれぞれ60%、52%と半数から6割に上っている(図表7-3)。

【図表7-3】2024年新卒採用において「ダイレクトソーシング」を実施しない理由

HR総研:2023年&2024年新卒採用動向調査 結果報告【採用手法編】

【HR総研 客員研究員からの分析コメント】

  • 曽和 利光氏

    株式会社人材研究所 代表取締役社長/HR総研 客員研究員 曽和 利光氏

    一人ひとりに丁寧に対応するために、他の採用プロセスをいかに効率化できるか
    コロナ禍や国際情勢、為替等々、景気はまだまだ先行き不透明ではあるものの、2024年新卒採用においても企業の採用意欲は高止まりしており、採用担当者は2023年同様かそれ以上の苦労を強いられることになりそうだ。大企業であっても内定辞退率30%以上の企業が約3分の1もあり(10〜20%も入れると7割近くなる)、「人気企業の敵は人気企業」である採用市場においては、大企業も例外ではない。

    そのため、規模の大小にかかわらず、どの企業も2024年新卒採用の課題は「ターゲット層の応募者を集めたい」が最大、つまり、最終的に入社につながる学生に集中して採用活動を行いたいと考えている。実際、2023年新卒採用で、一人ひとり丁寧に採用活動を行う「個別採用に注力/主軸で取り組んだ」とする企業群の方が、内定辞退率が低い傾向があった。

    丁寧な「個別採用」を行うためには、マンパワーを捻り出してくる必要があるが、規模の大小にかかわらず(大企業は大量採用するため)それには限界がある。そこで問題になってくるのが、採用プロセスの効率化だ。

    企業は従来の「応募者の数を多く集める」採用から脱却し、いかに「濃い」応募者集団を形成するかに注力して、社員や内定者からの紹介によるリファラル採用や、インターンシップ、逆求人サイトの活用などに流れている。また、社員や内定者が少なく、学生に知名度の低い中小企業が採用担当者の個力を活かしたSNSの活用や、大学との直接的な関係強化に注力しているのは興味深い。

    いずれにせよ、少子化を背景とした構造的な売り手市場において、企業はたくさんの応募者集団を形成して対応していく「マス型採用」には疲れているようだ。「マス型採用」には、オープンでフェアな就職市場というメリットがあったが、「個別採用」を行うための効率化と引き換えに徐々に存在感を減らしている。ただ、「会いたい人だけに会う」という効率的ではあるが、ある種閉鎖的な「個別採用」が、社会や企業の人材採用に今後どのような影響を与えるのかは注目しておかなければならない。

【調査概要】

アンケート名称:【HR総研】2023年&2024年新卒採用動向調査(12月)        
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査期間:2022年11月28~12月9日
調査方法:WEBアンケート
調査対象: 2023年卒採用活動を実施した企業の人事責任者、新卒採用担当者
有効回答:182件

※HR総研では、人事の皆様の業務改善や経営に貢献する調査を実施しております。本レポート内容は、会員の皆様の活動に役立てるために引用、参照いただけます。その場合、下記要項にてお願いいたします。
1)出典の明記:「ProFuture株式会社/HR総研」
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※HR総研では、当調査に関わる集計データのご提供(有償)を行っております。
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