HR総合調査研究所が、全国の国公私立大学キャリアセンターを対象に2012年9月18日~10月26日に実施した調査の概要を紹介したい。アンケート回収校は全国の国公私立大学285校。
 質問項目は現4年生に関するもの、現3年生に関するもの、既卒者に関するものと多岐に渡るため、2回に分けて報告したい。

内定取得率は単純平均で52.5%。

「大学キャリアセンター調査」結果報告【1】

厚生労働省・文部科学省による平成24年度「大学等卒業予定者の就職内定状況調査」の10月1日現在の調査結果が間もなく発表される予定だが、各就職ナビ発表の調査を見る限り、昨年の59.9%からさらに数ポイント改善して60%を超えてくるはずだ。
 一方、HR総研の調査では、最も多いのが「50%程度」(25%)、2位が「60%程度」(18%)、3位が「40%程度」(16%)と、40%~60%に約6割の大学が集中している。まったく予想がつかないとする大学が6%あるものの、「30%以下」は15%、「70%以上」が19%となっており、予想がつかないとする大学を除く単純平均値は52.5%である。
 厚生労働省・文部科学省の調査対象校は国立大学21校、公立大学3校、私立大学38校、計62校に限定されており、その回答のみを基に集計されている。全体の内定状況として引用されることが多いが、実際は限定的な調査であることに注意したい。
 HR総研の調査は大学規模別でも集計しているが、規模別の差異は大きい。「60%程度~90%以上」と回答した大規模校(5001人以上)は50%に達するが、中規模校(1001~5000人)と小規模校(1000人以下)では3割程度にとどまっている。このように苦戦する中小大学の状況は、就職内定状況調査に反映されていないものと思われる。

図表1: 就職希望者に占める内定取得率(全体)

「大学キャリアセンター調査」結果報告【1】

図表2: 就職希望者に占める内定取得率(大学規模別)

まだまだ少ない学校経由インターンシップ参加学生

「大学キャリアセンター調査」結果報告【1】

インターンシップに参加することの意義を否定する人はいないだろう。就労体験によって学生は成長し、その体験は就活にも役立つ。しかし実際に大学経由でインターンシップに参加する学生は少ない。円グラフは「2014年3月卒業予定の学生(現3年生)は、何%程度が学校窓口経由でインターンシップを経験しましたか」という問いに対する回答だ。
 半数近くの45%が「0~10%」と回答し、次いで「11~20%」が23%、「21~30%」が9%となっている。一方、「91~100%」という大学が5%あるが、医療系、工業系など実習のある大学のほか、地方の大学など小規模校が多くなっている。

図表3:学校窓口経由でインターンシップを経験した学生の割合(全体)

インターンシップ先企業の開拓でも苦戦を強いられる中小規模校

「大学キャリアセンター調査」結果報告【1】

インターンシップ先企業の増減では大学の規模による差が目立つ。5001人以上の大規模校では「かなり増えている」が9%、「少し増えている」が44%になっており、合わせて53%。過半数の大規模校ではインターンシップ先企業が増えている。
 ところが規模が小さくなると「増えている」大学は減少し、1001~5000人の中規模校では合わせて34%、1000人以下の小規模校では合わせて25%しかない。
 規模が小さい大学は、インターンシップ先企業の開拓でも苦戦を強いられているようだ。

図表4:インターンシップ先の企業数の前年からの増減(大学規模別)

規模が大きいほど、11月末までにキャリア関連講座・セミナーを開催

「大学キャリアセンター調査」結果報告【1】

2013年卒採用に引き続き2014年卒採用でも、日本経団連の倫理憲章によって採用広報の開始は12月1日以降とされた。そこで11月末日までのキャリア関連講座・セミナーの開催予定について質問した。
 全体では56%が開催し、38%が開催せず、未定が6%という結果だが、大学規模別では動きが異なり、規模が大きい大学ほど「開催する」が多く、「開催しない」が少ない傾向が明瞭に読み取れる。1000人以下の小規模校では「開催する」(45%)が「開催しない」(48%)を下回っている。ところが大規模校では「開催する」(62%)は「開催しない」(32%)を30ポイントも上回っているのだ。大学規模による支援体制の違いが浮き彫りになっている。

図表5:11月末までのキャリア関連講座・セミナーの開催予定(大学規模別)

90%以上が「一般的な就活講座、ガイダンス」と「個別相談・カウンセリング」を実施

「大学キャリアセンター調査」結果報告【1】

11月末までに実施している就職指導・キャリア支援の内容だが、90%以上の大学が実施しているのは「一般的な就活講座、ガイダンス」(97%)と「個別相談・カウンセリング」(90%)だ。10ポイントほど下がって「自己分析・自己PRサポート」(79%)、「エントリーシートの添削・指導」(77%)が続く。
 その次に続くのは「インターンシップ」(72%)、「マナー講座」(71%)、「先輩による就活体験報告会」(70%)だ。先輩が自分の就活体験を後輩に話す報告会はブームになっており、新たに取り入れるキャリアセンターが増えているようだ。
 「面接指導または模擬面接」は64%にとどまっているが、本格的な選考は3月~4月だから、おそらく年を越してから指導に力を入れるのだと思われる。
 「適性検査対策」と「能力試験対策」はともに6割を切っている。検査や試験の対策は早めに取り組んだ方がいいと思うが、11月末以前の学生の意識はまだそこまで高まっていないのかもしれない。
 「業界研究・職種研究(企業講師あり)」(55%)は、「業界研究・職種研究(企業講師なし)」(52%)よりも高いが、当然だろう。キャリアセンターの職員やキャリアコンサルタントは一般的なことしか話せない。企業講師の話の方が具体的で面白いはずだ。
 「OB・OG名簿の閲覧または紹介」(39%)は4割弱の大学しか実施していない。倫理憲章は学生とOB・OGとの接触まで禁止しているわけではないから、もう少し力を入れたい施策ではないだろうか。
 「就活体験報告資料の作成」(37%)は4年生が後輩のために書き残す貴重な記録だが、4割弱の大学しか実施していない。
 「OB・OG懇談会」(36%)は近年盛んになっている施策であり、4割弱の大学が実施している。この施策を取り入れる大学がもっと増えてもいい。
 倫理憲章の影響だろう。「学内企業セミナー」(14%)と「学内合同企業セミナー」(10%)は少なく、10%台にとどまっている。
 「その他」という回答が10%あるが、女子大が多く外見に関わる施策が目立つ。メイクアップ講座、就活スーツの着こなし、就職活動用写真撮影などだ。

 次回は、学内合同企業セミナーと既卒者への対応を見てみたい。

図表6: 11月末までの就職指導とキャリア支援の内容

【調査概要】

調査主体:HR総合調査研究所(HRプロ株式会社)
調査対象:全国の国公私立大学キャリアセンター
調査方法:調査票を郵送し、回答をFAXにて回収
調査期間:2012年9月18日~10月26日
有効回答:285大学(1000人以下60校、1001~5000人143校、5001人以上82校)

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