インターン制度の活発化と新卒格差の増大

インターンシップもより注目を集めることになるはずだ。
昨今では「実際に働いてもらい、採用するかしないかを決める」というインターン制度を重視、積極的に活用する企業が増えている。
現在、一般的には3年生の夏から始められているインターン制度だが、“就活ルール”の廃止、それによる選考スケジュールの前倒し増加にともない、インターンの開始時期も早まることが予想される。実は現在でも1年生や2年生にインターン制度を適用し、早々に内定を出している企業は存在する。

早期から選考活動・就職活動を実施するとはいえ、インターン制度は夏休みなどを利用した短期集中型だから、前述のような「選考の長期化によるコスト増」「学業への支障」にはつながりにくい。また企業側にとっては学生の適性・能力を見極めやすく、学生側としても実際の業務を体験し、社内の雰囲気を肌で確認できるシステムであることから、早めの内定でもミスマッチは起こりにくい。
就活ルール自由化時代に、もっとも適した選考方法かもしれない。

また、たとえ新卒でも待遇に差があるのが世界基準。インターン制度を通じて「どうしても欲しい」と思える人材が見つかったなら、好条件を提示して採用を確実なものにしようとする企業も出てくるはずだ。場合によっては「大学を卒業しなくてもいい。いますぐ来てくれ」というケースすら考えられる。

もちろん、現在でもそうであるようにインターンとして企業側が受け入れる職種・業務・部署、参加する学生の層などは限定され、すべての採用枠がインターン制度で埋まることはないだろう。「専門性の高い部署や職種」とか「特定の地域・支社」ではインターン経由で採用、それ以外は従来の採用方法、という形が取られるのではないだろうか。

将来的には通年採用を実施する企業が増えるか。新卒採用の変化は雇用全体の課題と不可分

もう1つ、“就活ルール”の廃止による影響として有力視されるのが「通年採用」にシフトする企業の増加だ。新卒・既卒を問わず、年間を通じて社員を採用するという形態である。
学生側は、いったん大学を卒業した後、キャリアを積んでから、より自分の望む企業・職種に再チャレンジできるというメリットがある。学生時代は学業に専念、卒業後に仕事関連のスキルを磨いてキャリアアップにつなげる、という生き方・働き方が可能となるわけだ。また企業側としては「景気が悪くても将来に備えて無理に新卒を迎え入れる」という必要がなくなり、欲しい時に欲しい人材を採用できることになるというのも利点である。

新卒時にこだわらない採用、ということになると、新卒者をはじめとする若年層の就職率が低下する可能性があるものの、総じてメリットの方が高いといわれている。
ソフトバンクや楽天、ヤフー、DeNA、ユニクロ、星野リゾートなど、IT系や成長著しい企業には通年採用を行っているところが多いことも象徴的であるだろう。

現在は少子化時代、人手不足は変わることなく、優秀な新卒者を多く採用したいのが企業の本音であり、若い人材の争奪戦は収まらないだろう。
加えて、「新卒者とその採用をどう考えるか」は、それ単独の問題ではなく、終身雇用、年功賃金、高齢化にともなう定年退職者の再雇用に対するニーズ、有効な配置転換、入社後に育ち学べる環境作り、HRテクノロジーを活用した人事業務の効率化……など、雇用全体の課題と不可分な側面も持っている。

今回の“就活ルール”変更発言がどのような決着を迎えたとしても、従来の新卒採用に対する問題提起にはなったに違いない。「いつ採るか」についての話だけではなく、「どう採るか」「どう働いてもらうか」といった採用と雇用に関わるすべての問題について議論するきっかけとすべきものなのかもしれない。
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