問題は「いつ採るか」に留まらない。“就活ルール”の廃止は、雇用全体を変える!?

8月初旬。経団連の中西宏明会長は「経団連が採用の日程に関して采配することに違和感がある」と発言、大学新卒者の“就活ルール”を廃止する可能性に言及した。
これに対して政財界からは賛否両論が巻き起こる事態に。混乱を最小限にとどめるべく、経団連や文部科学省、大学側などが集い、新たなルールの策定へ向けて近々協議に入ることが伝えられている。

見直すべきとの声が大きかった“就活ルール”

そもそも我が国における“就活ルール”は、常に「有名無実」「形骸化している」との批判にさらされてきた。
戦後〜1990年代には、企業側と学校側が「就職協定」を結んで採用開始時期を申し合わせていたが、抜け駆け的に採用活動を始めて早期に内定を出す、いわゆる“青田買い”が横行、結局「就職協定」は廃止の憂き目を見ている。
現在では経団連が、会社説明会など広報活動の開始時期、面接の解禁日、内定日を規定した「採用選考に関する指針」を発表し、これが一般的には“就活ルール”として認識されているわけだが、数年おきにスケジュールが見直されるなど一貫性を欠くのが実態だ。
しかもこの“就活ルール”には拘束力がなく、守らなくても罰則はない。そのため面接解禁日より前に水面下で学生と接触、規定である10月1日よりかなり前倒しで内定を出している企業も少なくない。

早くから動かざるを得ない、という切迫感が、企業を掟破りへと動かしているといえる。切迫感の原因となっているのが、経団連に加盟していない新興企業や外資系企業が採用活動を早めている、という事情だ。

とりわけ成長の止まらないIT関連の人材は不足しており、また多くのIT系新興企業は経団連に加盟していないことから、“就活ルール”に縛られず早期から採用活動を展開している。こうした企業はインターネットを通じて学生にアプローチする手法にも長けているし、学生側にも、IT系、外資、スタートアップなどの業務内容や社風、将来性に魅力を感じ、これらを第一志望とする人が増えている。
自然と経団連加盟企業も早期に動かざるを得ない、ということになる。律儀に「4年生の3月に会社説明会、6月から面接」などと言っていては後れを取るばかりなのだ。

これでは採用活動の前倒しが増え、「有名無実」「形骸化している」とされても当然。経団連内部からも“就活ルール”の見直しを求める声が聞かれるようになり、そんな流れを受けての会長発言だったと捉えることができる。

“就活ルール”の廃止で就職戦線は長期化する?

仮に“就活ルール”が撤廃された場合、どのようなことが起きるだろうか?

当然、個々の企業が自主的に選考スケジュールを決め、表明しなければならなくなるわけだが「これまでより早い時期から選考を開始する企業が増える」という見方が大勢だ。理由は前述の通りだが、どの企業も早くから動き出したくて仕方ないのが実情だ。
しかしながら、選考スケジュールの早期化は、学生・企業ともデメリットを負う恐れがある。

学生側は従来よりも早期に情報収集や準備に取り組まなければならなくなり、学業に支障をきたす、情報弱者が不利になる、早い者勝ちになる、といった事態が生じるかもしれない。各企業について調査する時間も手間もかけられず、「入社したのはいいけれど、何か違う」ということになるリスクも高まる。
また、たとえ内定をもらっても、より志望順位の高い企業からも内定を得ようとして就活を続ける学生は多い。選考スケジュールの前倒しは、そのまま「就活の長期化」も意味することになる。

企業にとっても選考スケジュールの前倒しには大きなリスクをともなう。
留学生、あるいは想定以上の内定辞退に対応するためには、採用活動を「早くから始めて早くに切り上げる」ことは難しい。スケジュールの前倒しを進めると、3学年、あるいは4学年の学生を並行して選考しなければならない事態になることも可能性としては考えられる。数年後の戦力をスカウトするわけで、より長期的な将来予測や経営ヴィジョンも求められることになる。
やはり選考スケジュールの早期化は長期化を呼び、マンパワーも必要、コスト増大につながる。採用活動が採算に合わない業務となってしまう可能性も大なのだ。

そのため「自然と各社の選考スケジュールは似たようなところに落ち着く。時期は集中する」という見方がある。多数の企業と多数の学生が短期集中&一斉に就活のテーブルにつく、といったところだ。こうすれば、合同の会社説明会を開催しやすい、選考スケジュールを短縮できるなど企業側にはコスト面でのメリットが大きく、学生としても予定を立てやすくなり、学業への支障を最低限に抑えて就活に集中できるようになるだろう。

業種・業態・企業の事情ごとに選考時期が分散することも考えられる。特定のスキル・知識を持つ人材を毎年確実に一定数獲得したい、というカテゴリーの企業は早くから選考を開始し、新規事業の成果に合わせて採用活動をフレキシブルに展開したい企業は慌てることなく遅めに……といった住み分けが発生する可能性もある。

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HRプロ編集部

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