株式会社帝国データバンクは2024年4月18日、「2024年度賃上げ実績と初任給の実態アンケート」の結果を発表した。本調査期間は2024年4月5日~15日で、企業1,050社から回答を得ている。本調査結果から、2024年度の賃上げ(正社員一人あたりのベースアップと定期昇給)の実績や新入社員の初任給などが明らかとなった。
【2024年賃上げ実績】約8割が実施も、3社に2社は“賃上げ率5%”に届かず。価格転嫁難しく、企業規模間で「格差拡大」か

約8割の企業が賃上げを実施も、全体の3社に2社は「賃上げ率5%」に届かない実態

人手不足の深刻化や物価の高騰などを背景に、大企業を中心に初任給引き上げの動きがみられる。労働団体の連合が「賃上げ率5%以上」を掲げるなか、中小企業からは賃上げに対する厳しい声もあがっているが、2024年度の賃上げはどのような動向なのだろうか。

はじめに帝国データバンクは、「2024年4月時点の正社員給与の前年同月からの変化(見込み含む)」を尋ねた。すると、「賃上げする/した」企業は77%だった。その内訳をみると、「3%増加」とした企業(22%)が最も多く、以下、「5%増加」(15%)、「2%増加」(12.4%)と続いた。

一方、「据え置き」は16.6%、「賃下げ」は0.6%であった。労働団体の連合の目標である「賃上げ率5%以上」を実現した企業は26.5%にとどまった一方、「5%未満」(67.7%)は約3社に2社にのぼり、厳しい結果となった。
2024年度の賃上げ実績(2024年4月時点)

「小規模企業」の賃上げ実施は6割程度と全体を10ポイント以上下回る

そこで、同社が規模別に「賃上げする/した企業の割合」をみると、「大企業」(77.7%)も「中小企業」(77%)も約8割と、ほぼ同水準だったという。一方、「小規模企業」は65.2%と、全体(77%)を11.8ポイント下回ったとのことだ。

賃上げを行う企業からは、「従業員のモチベーションアップや人材確保のためにもさらなる賃上げは必要」(飲食料品・飼料製造)、「原料費などの高騰を完全に価格転嫁できていないため大幅な賃上げ実施は難しいが、従業員の士気向上のためわずかながら賃上げを行った」(飲食料品・飼料製造)といった声があがったようだ。コスト増により厳しいながらも賃上げを行った企業もあるとうかがえる。

また、据え置き企業からは、「仕入れや水道光熱費などの固定費が上がっており賃上げどころではない」(専門商品小売)、「売り上げが上がっていないなかでの賃上げは、中小企業にとってかなり厳しいものがある」(その他サービス)など、資金的余裕が少ない中小企業からの賃上げを困難とする声が聞かれたという。
企業規模別の賃上げ割合

新卒社員の採用企業は4割程度。「大企業」と「小規模企業」で割合は二極化

続いて同社が「2024年度入社における新卒社員の採用状況」を尋ねたところ、全体でみると、「採用あり」は45.3%、「採用なし」は53.1%だった。

企業規模別に「採用あり」の割合をみると、「大企業」(76.2%)は全体(45.3%)を30ポイント以上上回った。一方で、「中小企業」(40.9%)と「小規模企業」(23.7%)は、全体を大きく下回った。

中途採用しか行っていない企業が多くみられたほか、「2024年4月入社は募集したが応募がなかったため、来年度を見据えて賃金の底上げを図った」(建設)など、採用活動を行ったものの人材を獲得できなかった企業もあったようだ。
2024年度の新卒社員の採用状況

3社に1社が初任給「20万円未満」。大企業と中小企業の間で「格差拡大」が懸念

最後に同社は、新卒社員の採用がある企業に対して「初任給(HPや求人票に明示されたメインとなる学歴)の金額を尋ねた。すると、「20~24万円」(57.4%)が最多で、続いて「15~19万円」(33.3%)となった。初任給が「20万円未満」の企業の割合は35.2%と、約3社に1社だった。

自由回答には、「新卒社員の獲得のため初任給を引き上げる」(鉄鋼・非鉄・鉱業)といった声が聞かれた。一方で、「求人市況を考えると初任給を含め賃金の増額は必須と考えているが、仕入れ価格の高騰に対し販売価格がとても追いつかず、特に中小企業の経営は苦しい」(機械製造)といった意見もあった。初任給など賃金を引き上げたいが、経営状況により諦めざるを得ない企業もあり、大企業と中小企業の間で採用に関して格差拡大の懸念が広がっているとうかがえる。
2024年度の初任給の金額
本調査結果から、2024年4月時点で8割近くの企業が賃上げを行うものの、約3社に1社は「賃上げ率5%」に届かないことがわかった。また、新卒採用と初任給ともに、大企業と中小企業など企業規模間による格差が広がっている実態もうかがえる。国内企業のうち多数を占める中小企業の賃上げが進まなければ、経済の好循環や景気回復の実現は難しくなるだろう。中小企業は人手不足を解消するため、コストの上昇分を可視化して価格改定の交渉を行うほか、自社商品の付加価値を上げるなど価格転嫁を行いやすくする工夫を検討してみるとよさそうだ。

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