株式会社リクルートは2023年7月19日、「管理職の採用動向」に関する調査結果を発表した。調査期間は2023年5月~7月で、同社の運営する転職支援サービスを利用して転職した人(有効回答数は非公開)のデータを基に集計している。これにより、2016年以降の管理職の採用動向や業界・職種別の推移が明らかとなった。
「管理職求人・転職」は直近6年で3倍以上に増加。業界別では「IT・インターネット」、職種別では「SE」が最も高い伸び率に

2016年以降、管理職求人は年々増加傾向に

これまで日本企業には、年功序列や終身雇用を前提とした“日本型雇用”の慣行や、企業内特殊的熟練が中心のキャリア環境があり、他社への管理職の転職は難しいイメージがあった。しかし、近年では注力事業に外部人材を起用するだけでなく、新しい事業領域への転換のために、自社にないノウハウを持った外部人材を管理職登用する動きも生まれ始めているという。

そこでリクルートは、「管理職求人の推移」を調べ、2016年度を「1」として各年度の数値を出した。すると、2022年度は2016年の3.67倍になっており、コロナ禍で新規の求人が落ち込んだ中でも、管理職求人は減少しなかったことがわかった。
「管理職求人・転職」は直近6年で3倍以上に増加。業界別では「IT・インターネット」、職種別では「SE」が最も高い伸び率に

業界別の管理職求人は「IT通信業」が最も高い伸び率。注目は「電気・機械メーカー」

次に同社が、管理職求人推移を業界別にまとめたところ、2022年度で最も伸びているのは「IT通信業界」だった。次いで「建設・不動産業界」となったが、どちらも苛烈な人手不足と言われている業界である。また、IT通信業界では、デジタル化が進む中で需要が高まっており、組織の拡大を急務とする企業も多いことが背景にあると推測できる。

また、注目したいのが「電気・電子・機械業界メーカー」だ。比較的“日本型雇用”の色が濃いと思われている製造分野だが、着実に管理職の募集も伸びている。同社は、「製造業でも、新しい事業への参入や既存事業の変革の必要性の高まりを背景に、外部から管理職を採用する動きがあるようだ」との見解を示している。
「管理職求人・転職」は直近6年で3倍以上に増加。業界別では「IT・インターネット」、職種別では「SE」が最も高い伸び率に
2022年度の「電気・電子・機械業界メーカー」の管理職求人の割合を、職種別(上位10職種)にまとめると、事業拡大・変革のための「営業」(16.4%)が最も多かった。その他、製造部門に直結する「機械エンジニア」(13.1%)と「生産管理」(4%)、変化対応のための「人事」(7.6%)など、管理部門まで幅広く募集していることがわかる。
「管理職求人・転職」は直近6年で3倍以上に増加。業界別では「IT・インターネット」、職種別では「SE」が最も高い伸び率に

職種別では「SE」が最も高い伸び率を示す

さらに同社が管理職求人推移を職種別で調べると、「SE」が2016年の6.83倍と伸び率が顕著だった。同社は、業界別で「IT通信業界」が伸長していたことに対応する形だと予想した上で、「IT通信業界だけではなく、事業会社も含め事業成長や組織拡大のために外部から管理職を採用していきたい企業が増加している」と推測している。
「管理職求人・転職」は直近6年で3倍以上に増加。業界別では「IT・インターネット」、職種別では「SE」が最も高い伸び率に

「管理職での転職者」の推移

最後に同社は、「管理職での転職者数の推移」をまとめた。すると、求人の伸び率に対しては低いものの、全体では2016年の3.13倍になっており、転職者全体の2.08倍よりも高かった。今後も管理職の採用ニーズは高まっていくと予測される。
「管理職求人・転職」は直近6年で3倍以上に増加。業界別では「IT・インターネット」、職種別では「SE」が最も高い伸び率に
本調査結果から、管理職求人・転職者数ともに2016年以降は増加傾向にあり、3倍程度となっていることがわかった。これまでは社内昇進が中心だと思われていた管理職登用だが、現在は外部労働市場から管理職を迎え入れるケースもあると考えられる。管理職登用の一案として、専門スキルをもった外部人材の採用も検討してみてはいかがだろうか。

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