「Job総研」を運営する株式会社ライボは2021年6月21日、国内における過去1年間のハラスメント実態についての調査結果を発表した。調査期間は2021年6月4日~11日で、20人~1,000人以上規模の会社に所属する全国の20~60代の男女374人(1年以内~10年以上勤務)から回答を得た。これにより、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を含め、ハラスメントの実態が明らかとなった。
被害にあったハラスメントは「パワハラ」が約8割――社内対策は不十分という実態が明らかに

約半数が「ハラスメントを感じている」。特に20~30代のパワハラ被害が顕著

去る2020年6月に、大企業を対象として改正労働施策総合推進法(以下、パワハラ防止法)が施行された。施行から1年を迎えるいま、職場のハラスメントはどのような状況なのだろうか。

はじめに「過去1年間で、職場におけるハラスメントを感じたか」と尋ねると、47%が「感じている」と回答。その中で「実際にハラスメントの被害を受けた」が32%、「当事者ではないが社内でハラスメントがある」が15%だった。
過去1年間に職場でのハラスメントを感じたか
また、「実際にハラスメント被害を受けた当事者」の男女比を調べた。すると男性が65.7%と顕著で、「誰からのハラスメントか」についても76.2%が男性と回答し、「男性から男性へのハラスメント」が多いという実態が判明した。

属性別に見ると、「雇用形態」では正社員が83%と大多数に。「年代」では20代が28%、30代が31%と全体の約6割、「勤続年数」では勤続3年以内が58%となった。このことから、勤続3年以内の若い年代の正社員が、特に多くハラスメント被害を受けていることがうかがえる。
雇用形態・年齢・勤続年数別のハラスメント被害の割合

コロナ禍の影響による「リモハラ」、「コロハラ」も存在。精神的な攻撃や嫌がらせが最多

続いて、「被害を受けたハラスメントの種類」について尋ねた。その結果、「パワハラ」が79.7%と最多回答になり、次いで「モラハラ」が44.2%と2つが特に目立つ結果となった。少数回答の中にはコロナ禍による影響がうかがえる「リモートハラスメント(リモハラ)」や「コロナハラスメント(コロハラ)」もあり、社会情勢を反映したハラスメントが存在していることが明らかとなった。
ハラスメントの種類
また、「ハラスメントの内容」を尋ねると、「精神的な攻撃や嫌がらせを感じている」が96.5%で圧倒的に。具体的な内容では、「個人や能力を否定するような言動」(57.2%)、「第三者がいる場面での罵倒」(46.8%)、「役職や地位を振りかざすような言動」(43.9%)の3つが目立つ結果となった。
ハラスメントの内容

3割以上がハラスメント被害に「何もしなかった」。原因は社内の蔓延化か

続いて、「ハラスメントに対してどのような行動をしたか」尋ねた。すると「何もしなかった」が34.1%と最多に。次いで「退職した(転職を決意)」が28.3%となり、「抗議した」など具体的な行動に出ているという回答は少数派だった。

「何もしなかった(できなかった)理由」については、「相談できるような環境がない」が47.8%、「職務上の不利益に繋がりそう」が43.5%、「自分が我慢すれば良いと思った」が31.9%と続いた。さらに、「被害を受けているのが自分だけではないから」が11.6%と、社内でハラスメントが蔓延化している実態がうかがえる回答もあった。
ハラスメントに対して起こした行動と理由

企業での「ハラスメントに関する防止対策」はいまだ不十分

最後に、「社内のハラスメント防止対策」について尋ねた。その結果、「十分な対策をしている」はわずか5%にとどまった。さらに「対策はしているが不十分」が51%、「対策はしていない」が41%で、約9割の企業では、社内のハラスメント対策が不十分という実態が明らかとなった。

また、「具体的なハラスメント防止対策」を尋ねると、「相談窓口を設けている」が54.3%と最多に。その他「ハラスメントガイドラインの制定」が35.8%、「会社の方針の周知と啓発」が30.6%、「定期的な個人面談や研修を設けている」が22.5%などとなった。
社内のハラスメント防止対策
コロナ禍の影響も相まって、近年ハラスメントに関する相談は増え続けているようだが、企業側の防止対策は不十分だといえる。ハラスメント被害を相談できる環境の構築や防止策の策定など、対策について今一度考え直してみてはいかがだろうか。

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