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「ハラスメント」防止対策の重要性
まずは、なぜ「ハラスメント」防止対策が重要なのかから説明していこう。「ハラスメント」は職場にさまざまな影響をもたらす。例えば、従業員が心身ともに疲弊してしまい、働きづらさを感じてしまう。適切な措置を取らず、放置したままだと「ハラスメント」を受けた従業員はメンタル不調に陥り、休職や退職へと追い込まれる可能性がある。そうしたケースが多発するとチーム全体のパフォーマンスや業務の品質が落ち、場合によっては企業の成長を抑止させるかもしれない。また、「ハラスメント」行為が見られるという評判は、企業の社会的イメージを著しく低下させてしまう。企業間の取引や人材採用にもマイナスになることを心しておきたい。
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●「ハラスメント」防止対策で義務化されている事項
「ハラスメント」防止対策で義務化されている事項は、以下の4点だ。(1)事業主の方針等の明確化、その周知・啓発
事業主が、「ハラスメント」のない職場づくりを明確に示し、万が一該当する問題が起きたときには、厳正に対処することを社内に周知する。
(2)相談に応じて、適切に対処するための体制整備
相談窓口を開設し、すべての従業員に周知する。相談窓口の担当者は相談内容や状況に応じて適切に対応する。
(3)事後の迅速かつ適切な対応
「ハラスメント」の事実確認を迅速かつ正確に行う。その後は、加害者に対して適正な措置を講じる。
(4)不利益取り扱いの禁止
相談者のプライバシーを守ると共に、相談したことによる不利益な取り扱いがないようにする。
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「ハラスメント」の主な種類
次に、代表的な「ハラスメント」について取り上げたい。●セクハラ(セクシャルハラスメント)
職場でのセクハラとは、相手の意に反して性的な言動により、個人の尊厳を不当に傷つけたり、就業条件を悪化させたりすることをいう。「セクハラ(セクシャルハラスメント)」とは? 定義や具体例から防止策・判例まで徹底解説
●パワハラ(パワーハラスメント)
パワハラとは、職場内における優越的な地位や権限を利用して、業務の適正な範囲を超えて、相手に精神的または身体的な苦痛を与える圧力や言動をいう。「パワハラ(パワーハラスメント)」とは? 定義や該当する行動を事例と併せて解説
●マタハラ(マタニティハラスメント)
マタハラとは妊娠や出産、子育てなどを理由として、上司や同僚が不利益な取り扱いや嫌がらせをすることをいう。「マタハラ(マタニティハラスメント)」とは? 定義や具体例、防止措置を解説
●その他のハラスメント
道徳や倫理から外れた言動や態度によって相手に精神的苦痛を与えるモラハラやアルコールに関する嫌がらせ行為を意味するアルハラなど、さまざまな種類がある。「ハラスメント」が発生する原因
ここでは、「ハラスメント」が発生する原因を取り上げたい。●個人の意識による原因
これには、「ハラスメント」への「無知」あるいは理解不足と、自分の行為がハラスメントに該当していると気づかない「認知の歪み」がある。前者の中には、「ハラスメント」になることを心配しすぎて、相手とコミュニケーションすら取らなくなる「過敏」も含まれる。部下を遠ざける上司もその一例と言っていい。●組織風土による原因
これに関しては、二つの原因が挙げられる。まずは、日常的に強いストレスがある職場風土であること。例えば、「ミスが一切許されない」、「会社から課せられた目標が厳しすぎる」などが該当する。もう一つは、閉鎖的な職場環境であること。具体的には、組織間で情報が共有されておらず、各職場の実情が把握できない。事業所が本社から離れた場所にあり、所長が実質的に全権限を把握しているといったケースをいう。「ハラスメント」の具体的な防止施策
では、実際のところ「ハラスメント」が起きないようにするには、どうしたら良いのだろうか。いくつかの施策をリストアップしよう。●規定や処分の策定・明記
「ハラスメント」に関する規定を策定することは、職場環境をより良くするためにも非常に重要となる。また、「ハラスメント」対策に向けた企業の強い姿勢を伝えるためにも加害者をどう処分するかを明記しておきたい。それらを円滑に運用するには、事前に経営陣や人事から「ハラスメント」の基本ルールを定めた意図・目的を全従業員に発信し、意識共有を図るべきだ。可能であれば、研修や周知活動を継続的に行うようにしていきたい。●アンケートや面談の定期実施
現状を把握するという意味では、アンケートや面談を定期的に実施するのもお勧めだ。アンケートは基本的に匿名としたい。従業員からすると、「万が一情報が漏れたらどうしようか」という不安が付きまとうからだ。●相談窓口の設置と運用
企業内に、「ハラスメント」相談窓口を設置するのも有効だ。また、運用にも配慮したい。相談窓口を設置した後は、守秘義務の徹底や迅速な事実確認が行われなければいけないからだ。さらには、活用を促すためにも、社内掲示板やメール、イントラネットなどを通じて社内に広く周知するようにしたい。●セミナー・研修の実施
「ハラスメント」対策の重要性や具体的な対応方法を理解するためのセミナーや研修を実施するのもお勧めの施策だ。例えば、部下を管理する立場にある管理職、マネージャーを対象にした場合には、自分自身が日頃、部下たちとどう接しているかを問いかける場としよう。「ハラスメント」の捉え方を考え直す良い機会となるはずである。●コミュニケーションの促進
職場での信頼関係を構築することは、「ハラスメント」対策の第一歩となる。そのためにも、上司と部下という縦のコミュニケーションだけでなく、職場やチーム内での横のコミュニケーションを促すことも重要だ。従業員同士の意思疎通が上手くいっていないことに管理職が気づかない、あるいは気づいていても何も手を打たずに看過してしまうと問題の芽が一気に開花してしまう。従業員の不安や気持ちの変化をいち早く気づけるよう、全体への心配りを心がけたい。「コミュニケーション」の意味とは? 重要性や大切なことも解説
●業務環境やマネジメント体制の整備
「ハラスメント」がなく、多様な働き方が認められる職場を作り上げていくためには、業務環境やマネジメント体制を根本的に見直す必要がある。例えば、現状は「妊娠や出産した従業員が職場復帰しやすい環境か」「仕事と育児を両立できる環境か」「家族の介護が必要な職員に配慮できているか」など、さまざまな問いかけをしてみてほしい。雇用契約の枠組みや事業運営の見直しなどを検討する、良いきっかけとなるはずだ。「ハラスメント」防止のために社員に周知すべきこと
「ハラスメント」をなくすために社員一人ひとりがすべきこと、できることがある。それらをリストアップしたい。●自分の言動を振り返る習慣を持つこと
「ハラスメント」をなくすためには、誰もが日々の言動に責任を持つと同時に他者の立場や気持ちを理解することが重要だ。そのためにもぜひお薦めしたいのが、日頃から自らの言動を振り返る習慣を持つことだ。自分の言動によって、相手にどのような影響を与えてしまったのかと意識したり、想像したりしてみる。それを繰り返していくことで、周囲との円満な関係を築けるようになるはずだ。●相談や意見を受け止めること
同僚や後輩から「ハラスメント」に関する相談が寄せられた際には、相手の話をしっかりと聞く姿勢が重要だ。相手の感情や気持ちに寄り添うべきであるものの、感情的になりすぎてもいけない。ある種の冷静さも求められる。また、相談内容は絶対に口外してはいけない。秘密を厳守することが、相談者との信頼関係の土台となる。●人によって常識が異なる場合があること
自分の常識がイコール相手の常識だという思い込みは避ける必要がある。むしろ、全く異なっているという前提に立った方が良いかもしれない。もはや、価値観は多様化しており、絶対的に正しいものは存在しないと言っていい。それを認識せず、自分の考えが正解だと周囲に押し付けてしまうのは許されなくなっている。●ハラスメントと指導の違いを理解する
「ハラスメント」と指導には明確な違いがある。具体的に、指導とは相手のスキルアップや成長を願って行われるもので、そのプロセスにおいては相手に対する尊重や信頼が不可欠となる。これに対して、「ハラスメント」は強圧的な態度や行動をすることで、相手に不愉快な想いや恐怖を与える行為を指す。そうした本質を認識し、責任ある対応をしなければいけない。●上手い断り方を知っておくこと
「ハラスメント」を起こさないためには、自分が加害者にならないことはもちろんだが、被害者にならないための工夫も大切になってくる。例えば、上手い断り方を知っておくのもその一つだ。つけ入るスキがあると相手から思われてはいけない。納得がいかなくても明確に「No」が言えないタイプであれば、柔らかく断れる言い方を覚えておきたい。●アサーティブコミュニケーション
アサーティブコミュニケーションとは、相手の考えや気持ちを尊敬するとともに、自分の想いを相手に正直に伝えることをいう。どちらが良い、悪いと決め付けてはいけない。あくまでも、お互いに本音をすり合わせることに徹する。結果として、合意に至らないことがあるかもしれないが、より良い方向へと歩んでいく第一歩となるはずだ。「アサーティブコミュニケーション」とは? 意味やメリット、事例を解説
●記録をつけること
もし、「ハラスメント」の被害にあってしまった場合には、記録をつけるようにしたい。しかも、日時や場所、具体的な行動や言動の内容、同席者の有無などを事細かく記録しておこう。相談窓口や法的機関に報告する際にも、確かな証拠となるはずだ。●なるべく早く報告すること
「ハラスメント」に関する相談が被害者から寄せられた、具体的な嫌がらせ行為を目撃したなどといった場合には速やかに関係部署に報告し、アクションを取ってもらえるよう促す必要がある。放っておけば、より深刻な事態に陥ってしまう。その前に対処しなければいけない。「ハラスメント」が起きた時の対応
実際に職場で「ハラスメント」が発生した際、企業はどんな対応を取れば良いのか。被害拡大と再発を防ぐための対応手順を解説していく。(1)事実関係の迅速かつ丁寧な調査
「ハラスメント」の疑いが生じた際、最初に取り組むべきは徹底的な事実確認だ。相談者からの申し出だけでなく、目撃者や関係者への聞き取りによって、客観的な状況把握に努めることが重要となる。この段階では、被害者と加害者双方の主張が食い違うケースが多いため、第三者の証言収集が欠かせない。また、調査は公正性を保ちながら迅速に進め、関係者のプライバシー保護にも十分配慮しなければならない。証拠となる資料やメール、録音データなどがある場合は、適切に保全し、調査の信頼性を高めることが求められる。さらに、調査期間中は当事者同士の接触を避けるため、配置転換や業務分担の見直しなど、隔離措置を講じる必要もある。(2)調査報告書の作成
収集した情報と証拠を基に、詳細な調査報告書を作成していく。主な記載事項としては、当事者や関係者の証言内容、物的証拠の詳細、時系列での事実関係、そして最終的な判断根拠などだ。報告書は、社内の諮問委員会や取締役会等での重要な意思決定材料となるため、感情的な表現を避け、事実に基づいた分析を記載する。また、「ハラスメント」の認定可否についても、法的基準と社内規程に照らし合わせて慎重に判断し、その理由を論理的に説明できるよう記載しておくと良い。口頭報告で済ませる場合もあるが、後の法的手続きや再発防止策の検討において重要な資料となるため、可能な限り文書化しておくことが推奨される。(3)被害者への配慮・報告
被害者は精神的ダメージを受けているため、まずは心理的サポートとケアを最優先に考えてほしい。そのうえで、調査結果や今後の対応方針、加害者への処分内容などを丁寧に説明していく。この時、被害者の感情に寄り添いながら、企業としての誠実な対応姿勢を示すことが重要となる。ただし、被害者が企業の対応に納得しない場合、損害賠償請求などの法的措置に発展する可能性もあるため、事前に法務担当者や弁護士と相談しておくことが賢明だ。また、被害者の職場復帰に向けて、安心して働ける環境づくりや必要に応じたカウンセリング支援などのフォローアップ体制も整備しておく必要がある。(4)加害者への処分・指導
「ハラスメント」が認められた場合、加害者に対して適切な処分を科す必要がある。処分内容は、行為の悪質性や影響の深刻さを総合的に評価し、また過去の事例や社内方針に基づき、公平で透明性のある判断を行う。軽微なケースでは口頭注意や研修受講命令、重大な場合は降格や懲戒解雇まで、段階的に処分に関する体系を整備しておくと良いだろう。もちろん処分と併せて、加害者に「ハラスメント」の問題性や被害者への影響について深く理解させるよう教育・指導することも忘れてはならない。ただし、加害者自身も職場での立場や人間関係に影響を受けるため、必要に応じて配置転換やカウンセリング支援なども検討する。(5)再発防止の措置
当該事案を解決して終わりではない。同様の問題が二度と起こらないよう、企業全体で再発防止策を講じることが非常に大切だ。全従業員を対象としたハラスメント防止研修の実施や管理職向けの教育プログラム、相談窓口の設置、就業規則の見直しや行動指針の策定、処分基準の明確化など、さまざまな対策措置や制度の整備を講じる必要がある。また、上下関係の見直しやコミュニケーション活性化、多様性を尊重する企業文化の醸成など、組織風土の面からも防止につなげ、従業員が安心して働ける職場環境の構築に努めたい。「ハラスメント」防止対策の企業事例
実際に企業がどんな「ハラスメント」対策を講じているのかを紹介しよう。●電通ジャパン
電通ジャパンは「ハラスメントの撲滅と防止」を宣言し、組織全体での対策に取り組んでいる。具体的な施策としては、全従業員を対象としたハラスメント研修の実施、社内外でのハラスメント相談窓口の設置による迅速な対応体制を整備などだ。既存の内部通報窓口に加えて、匿名での内部通報が可能なプラットフォームを導入し、相談しやすい環境を整えている。さらに「マネジメントサーベイ」を導入し、社長を含めたマネジメント層が部下からどう見られているかを調査・フィードバックすることで、管理職のハラスメント意識向上を図っている。●大和ハウス
大和ハウスは2019年5月にパワーハラスメント防止対策室を本社人事部内に設置。常時通報に対応できるよう「パワハラ防止ホットライン」を開設するだけでなく、社長から全社員へのメッセージ発信、管理職向けのDVD研修、一般社員向けのeラーニング、管理職へのコーチング教育といった社員の意識強化にも注力している。また、全国の事業所で従業員と直接面談を行い、職場環境の実態把握と改善に努めている。
●キリン
キリングループは人権尊重を経営の最重要課題と位置付け、毎年春に「ハラスメント撲滅月間」として、人権推進担当役員からのトップメッセージ発信と全従業員対象のオンライン「ハラスメント研修」を実施している。さらに、各職場では希望に応じてグループワークを行い、職場内での意見交換をすることで、ハラスメント撲滅の風土醸成も図っている。人権窓口担当者に専門研修を行うことで、実効性のある相談窓口を運営しているのも特徴的だ。キリン:キリングループ人権方針の浸透
まとめ
現代における企業の社会的責任として、「ハラスメント」防止の取り組みが強く求められている。「ハラスメント」は生産性低下や離職を招くだけでなく、企業の信頼をも損なうリスクを伴う。従業員が安心して働ける環境を作るためには、予防教育の徹底や相談窓口の設置、対応体制の整備が不可欠だ。ハラスメント研修の実施や組織風土の改善を積極的に行い、誰もが尊重され、能力を発揮できる職場を目指してほしい。「ハラスメント」に関する資料ダウンロード、セミナー、サービス、ニュースなどの最新コンテンツはこちら
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