「アベノミクス三本の矢」の中の成功の鍵を握るのは「成長戦略の取り組みいかんによる」という認識は、経済人であれば共通の認識です。成長戦略を成功させるには、「需要創造型経営に取り組み、新たな価値を創造すること」が必要であり、それには「創造的な人と組織づくりに取り組むこと」が重要だと考えます。「創造的な人と組織づくり」とは、市場の情報を基に、新たな価値を創造し続けられる組織の戦略や体制と実現する能力や組織文化のことです。
成長戦略を成果につなげる組織文化を創るには

需要創造型経営の鍵を握る組織文化

 「アベノミクス三本の矢」の中の成功の鍵を握るのは「成長戦略の取り組みいかんによる」という認識は、経済人であれば共通の認識です。
 成長戦略を成功させるには、「需要創造型経営に取り組み、新たな価値を創造すること」が必要であり、それには「創造的な人と組織づくりに取り組むこと」が重要だと考えます。
 「創造的な人と組織づくり」とは、市場の情報を基に、新たな価値を創造し続けられる組織の戦略や体制と実現する能力や組織文化のことです。
 需要創造型経営モデルの浸透を阻害している最大の原因は、企業が右肩上がりの時代を経験し、過去の強い成功体験や失敗体験によって、「こうしたら業績が上がった。新たなことをやっても結局うまくいかなかった。だから、今までどおりのやり方を守ることが一番である」という仕事ぶり(※1)が、組織に根付いていることにあります。
 この場合、今までのやり方や考え方を変えなければならないような戦略を出しても、「仕事ぶりを変えられない。一時的に変えても、元の仕事ぶりに戻る」ことが多いようです。
 ジェックでは、組織に根付いた価値観や行動様式を総じて「組織文化」と呼んでいます。需要創造を促進する組織文化を育てることができれば、需要創造型経営を成果に結び付けていく強力な知恵とパワーになります。
 組織構成員である社員が自らチャレンジし、知恵と力を合わせ共創・協働し、社会や市場をより良くするという価値を創造し続ける。そういった仕事ぶりが組織において当たり前になることです。
 そうなれば、経営トップが示す需要創造の「理念・ビジョン・戦略」を社員が受け入れ、行動化し、現場の知恵と組織の価値創造が促進され、業績成果はその結果としてついてきます。

組織の集団性格に着目する

 需要創造型経営を支える仕事ぶりは、次の三つの価値観と行動様式で分類することができます。

①より良い社会や市場にすることに役立つこと→お役立ちの価値観と行動様式
②知恵と力を結集すること→協調の価値観と行動様式
③チャレンジすること→挑戦の価値観と行動様式

 組織文化の構成要素は幾多ありますが、この三つは実務家として必要不可欠な要因だといえます。
 ジェックでは、この三つの価値観と行動様式による集団の特徴を「集団性格」と位置付け、これらが高い状態(お役立ちに、共創・協働して、チャレンジし続ける仕事ぶり)をつくることによって、創造的な組織づくりが可能になり、需要創造型経営を促進すると考えています(※2)。

創造的組織文化づくりを阻む「落とし穴」

落とし穴① 他部門や他者、経営を批判・非難する
 これは、自分や所属するチームが新たな価値の創造による業績が上げられない組織に多く発生します。
「営業が良い提案をしないから技術部門が疲弊する」(技術系社員)
「技術部門の融通が利かないから売れない」(営業系社員)
などはよく聞く声ですが、これらは他者や他部門を批判・非難することで自分たちを守ろうとすることからの発言です。
 本来、他者や組織に貢献するから自分の存在が認められるのですが、批判・非難をしていれば、自分の存在を否定されないだろうという落とし穴が、自己変革を阻むのです。

落とし穴② 上位者の指示だけを待つ
 これは、トップダウンの経営に戦略が当たった過去を持つ組織に多く発生します。価値の創造は個人やチーム、組織全体で成し遂げるものですが、「指示の出し方が下手だからやる気にならない」「指示のない仕事はしなくてよい」という仕事ぶりが組織に根付いていると、価値創造が進まない落とし穴になるのです。
 では、このような落とし穴をクリアし、集団性格を高めるにはどうすれば良いか、具体的に考えてみましょう。

集団性格を高める「鍵」

 マネジメントには、「縦の統制」と「横の統制」(※3)がありますが、組織に根付いている仕事ぶりを変えるには、「横の統制」を活用して集団性格(挑戦・協調・お役立ち)を高めることが特に有効です。

1. お役立ちイメージの醸成を促進する
 前述の「落とし穴①」をクリアするには、個人と組織で市場や組織に対する「お役立ちイメージ」の醸成に取り組むことです。
 組織で知恵を出し合い「誰の、どのようなニーズに対して、何を提供し、どのように役立つ状態をつくりたいのか」をイメージ化すると、お役立ちの方向付けができるようになります。組織で知恵を出し合うということは、目標を成し遂げたいという動機付けになるので、三つの価値観と行動様式(挑戦・協調・お役立ち)を強化することができます。
 このことは、他者や他部門を尊重し、共にその先のお客様のお役に立つにはどうすればよいかを考え、取り組むことを意味します。Win-Winの関係をつくることによって、自分の存在価値も高まり、他者を批判して自分を守るという誤った「落とし穴」に陥ることはなくなります。

2. MBO(目標と自己統制による管理)機能化を促進する
 「落とし穴②」をクリアするには、MBOの機能化に取組むことです。
 MBOの機能化とは、Y理論(9・9)(※4)を基本とした、創造的で卓越した自己をつくるための「目的・目標と自己統制のマネジメント」体制をつくり、習慣化することです。
 「挑戦とお役立ち」を高め、組織やチームの目標を設定することで、組織は共通目標として「協調性」が強化されます。さらに、社員一人一人の創造性と卓越性の強化が習慣化し、自らを動機付け、「個の確立」を促進することにもなります。 
 一人一人が、主人公としての仕事ぶりに自信を持つことができ、「指示待ち」という「落とし穴」をクリアできるようになるのです。

 組織文化を変えるには、集団性格に着目し、組織に根付いた組織文化の「落とし穴」をクリアし、経営成果に直結するマネジメントの鍵に取組むことが重要になってきます。
 それは、社員個人や組織が強みを活かして、市場の新たな価値創造に向けたお役立ちに共創・協働してチャレンジする仕事ぶりを育てることだけでなく、需要創造型経営を自ら進んで受け入れ、行動化する仕事ぶりを組織に根付かせることでもあるのです。


※1 「組織文化は仕事ぶりに現れる」P・F・ドラッカー
※2 三つの価値観と行動様式(挑戦・協調・お役立ち)の有効性は、慶應義塾大学との共同研究によって検証されている。
※3 「縦の統制」とはリーダーからのコントロールであり、指揮力のこと。「横の統制」は、仲間同士が持っている共通の価値観によるコントロールであり、集団活動を活用するマネジメントのことをいう。
※4 「人間は条件さえ整えれば、生来は仕事が好き」という人間観と、「最高の業績と最高の人間関係が両立する」という考え方。
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