2012年以降、日本の景気は少しずつ回復してきたにもかかわらず、それと引き換えに、慢性的な人手不足に悩まされる企業が増え続けている。2020年の東京オリンピックに向けて、さらに人手不足の高まりが予測され、業界を問わず長期にわたって働いてもらえる人材が求められているが、特に外食、運輸、小売等の非製造業を中心に人手不足はますます深刻化している。
そんな中、パーソル総合研究所は、企業の人材育成を研究する東京大学の中原淳准教授の監修のもと、外食・小売・運輸の大手企業7社の協力で25,000人を対象とするアルバイト・パート領域の大規模調査を実施。その調査から課題を打開するための店長・職場マネージャー向けの研修プログラムを共同開発した。

アルバイト・パート社員の働きたい気持ちを高め、離職を防ぎ育成するこのプログラムは、どのようなものか。
開発を手がけた中原淳准教授とパーソル総合研究所 岩崎氏に話をうかがった。

アルバイト・パート採用の課題とは。穴の開いたバケツに水を入れる支援ではなく、穴を防ぐ支援を

―― アルバイト・パートにおける現状の課題、また今回行った大規模調査についておうかがいします。

中原  外食・小売り産業などを中心に日本を支える大規模なアルバイト・パート領域の人手不足はますます深刻化しています。パーソル総合研究所さんの未来推計によると2025年には583万人の人手不足が予測されています。

岩崎  パーソルグループとして、企業の採用のお手伝いしていく中で、ニーズにお応えしきれていないという、歯がゆい思いがありました。例えば、広告料をいただいているのに、採用ができない状況がある。一方で、せっかく採用できても、どんどん辞めていくことも見えてきています。いわば、穴のあいたバケツに水を入れる支援ばかりしてきたのですが、穴をふさぐ支援はできないのか?ともやもやしていました。しかし、今までアルバイト・パート領域の人手不足の状況を科学的・多面的に分析されたものは存在せず、お客様にも曖昧な説明しかできなかったため、ここで明確にしたいと考え、中原先生にご相談したのです。

パーソルグループはこれまで「企業と人をマッチングする」ビジネスモデルがメインでしたが、「人と組織の成長創造インフラへ」というグループビジョンを掲げたところ、マッチング支援だけでなく、働いている人と組織がともに成長するための支援の必要性を感じました。
まずは現状の課題認識をすべく、お世話になっている外食・小売・運輸の企業様に声をかけたところ、プロジェクトへ参画いただけることになり、今回の大規模調査が実現したわけです。

中原  面白いことに、参画いただいた企業は競合同士なんです。でも、人手不足の点においては呉越同舟。ひとつのテーブルで人材の話をしている様子は興味深いものでした。人手不足は日本の課題であり、それに対するソリューション提供はまさに「世直し」です。

岩崎  今回のアルバイト・パート領域25,000人大規模調査の概要は次の通りです。

一般求職者調査:これから働きたい人が何を求めているのか知る調査(高校生からシニアまでが対象)
離職者調査:参画企業におけるアルバイト・パート社員が対象 なぜ離職したのかその理由
マネジメント調査:参画企業の現場で働く店長・マネージャー
面接担当者調査:参画企業におけるアルバイト・パート社員の面接担当者
アルバイト・パート・一般事従業員調査:参画企業における現役の一般従業員

様々な調査をしました。通常の調査では、辞めた人の調査まではしませんが、アルバイト・パート領域の実態に迫るために多角的に調査をしたかったのです。

中原  この調査から分かったことは、面接と日々の職場づくりが非常に重要だということです。アルバイトやパートの5人に1人は、働いてから1か月未満でやめていることが分かりました。また、面接をして採用されても、そのうち4人に1人は辞退することが分かっています。

岩崎  職場の雰囲気が良ければ入社し、働き続けるけれど、悪ければ辞める。例えば店舗の場合は、面接を受ける前に49.8%が下見に店を訪れているという結果が出ました。つまり、面接は面接する場だけでなく、お店全体で評価されているのです。採用する側がアルバイト・パートを選んでいるつもりが、実は逆に選ばれていることに着目する必要があるんですね。

中原  アルバイト・パートは職場の雰囲気を非常に重視しています。この職場で働いて大丈夫なのか、ブラックではないのか、面接の前にすでに見られています。「選ぶ面接から選ばれる面接へ」というのが私たちの知見ですが、面接はすでに電話がかかってくるところから、もっと言えば日々の店舗づくりから始まっているのです。

調査の結果と同時に解決策も一緒に考えるまでが共同研究...