ProFuture代表の寺澤です。

2月22日、内閣府の「規制改革会議」が行う公開ディスカッションに出席し、プレゼンテーションとディスカッションに参加しました。想像以上に活発な意見交換がなされて私自身大変勉強になりました。以下簡単にレポートします。

新卒採用において重要な情報開示とは

  テーマは「『多様な働き方を実現する規制改革』就職、転職前の情報は十分か~良い職場選びのために~」。

 最初に事務局から企業の情報開示の実態に関する報告が行われ、次いで厚生労働省より、若者雇用促進法、次世代育成支援対策推進、女性活躍推進法の概要説明と取り組み状況が説明されました。その後に、株式会社イー・ウーマン代表取締役社長の佐々木かをり氏、日本労働組合総連合会(連合)総合労働局総合局長の村上陽子氏、私、G&S Global Advisors Inc.代表取締役社長の橘・フクシマ・咲江氏、カルビー株式会社代表取締役会長兼CEOの松本 晃氏、日本商工会議所からのプレゼンテーションがありました。

 プレゼンテーションを大きく分けると、働き手の観点と経営側の観点に分かれます。佐々木氏は女性の働き手の観点で入社前に知りたい情報が何かを調査資料から説明し、連合の村上氏は主に労働条件明示において法的観点から整備すべき点などについて説明されました 。

 一方で経営側の観点からは、橘氏がグローバルな視点から働く環境の変化に対応した目指すべき「新しい働き方」を提示されたほか、松本氏が大企業トップとして実行してきた働き方改革を説明され、日本商工会議所は組織としての取り組みを説明しつつ、今回の若者雇用促進法による情報開示が中小企業に不利益な点について説明をされました。私は、働き手と経営側の間に立つ中立的な観点から話をしましたが、主には新卒採用・就職における情報開示のあるべき姿について述べました。
 一つひとつのプレゼンテーションは10分と短い時間でしたが、立場が違う中での情報開示に対する見解はそれぞれにおいて説得力があり、だからこそこうした場で公開ディスカッションをする意義があるのでしょう。そういう意味では事務局の人選はバランスの取れたものでよかったと思います。

 公開ディスカッションではいくつかの論点で議論がなされましたが、進行役の東京新聞・中日新聞論説副主幹、長谷川幸洋氏から私のプレゼンテーションに対する質問がいくつか振られ、議論が展開されました。私は若者雇用促進法での情報開示の姿勢には賛同しつつ、中小企業が不利になることの懸念を述べ、中小企業ならではの就職の利点を開示情報として検討してもよいのではないかと提案しました。例えば、若くして権限の大きな仕事に就ける、出世の速さ、女性が活躍している実態などです。

 そして、新卒採用においてはさらに重要な情報開示が必要だとの提言をしました。それは、企業(特に大手企業)の採用実績大学の実態であり、選考プロセスの明示です。この情報を知らないがゆえに、多くの学生が極めて無駄な就職活動を強いられています。有名企業の採用ターゲットでない学生がそうした企業の説明会に参加し、思いを込めたエントリーシートを出して落ち続ける、という経験をどれほどしていることか。また、採用プロセスを明示せず、落ちた学生には連絡もしないという、いわゆる「サイレントお祈り」がいかに学生を傷つけているか。企業の採用担当者はもっと想像を働かせてほしいと思います。

 この公開ディスカッションを契機に状況が改善されることを期待しています。私自身、さらなる働き掛けをしていきたいと思います。
なお、当日の動画は下記のリンク先からご覧いただけますので、ぜひご覧ください。

■政府インターネットテレビ「規制改革会議公開ディスカッション(平成28年2月22日)」
動画の閲覧はこちら
公開ディスカッション配布資料はこちら

いよいよ2017年卒採用が正式にスタート

  3月1日、経団連による「採用選考に関する指針」が規定する採用広報活動の解禁日を迎え、日付が変わると同時に各就職ナビサイトが一斉に正式オープンしました。2017年卒者向けの採用情報の公開と、プレエントリーの受付が開始されたのです。

 2強と呼ばれる就職ナビ『リクナビ2017』『マイナビ2017』の動向を見てみましょう。
 オープン時のアクセス集中によるつながりにくさは今年も両サイトで発生しました。ただ、『リクナビ2017』が数分で解消されたのに対して、『マイナビ2017』が安定したのは午前1時40分を回ってからのことです。実際のアクセス量がどの程度だったのかは不明ですが、『マイナビ2016』のサービスを一時的に停止してまでアクセス集中に備えていた『マイナビ2017』が、皮肉にも2時間近くにわたってサービスを満足に提供できなかった点は、次年度に向けて課題を残すことになったと言えるでしょう。

 掲載情報についても確認してみましょう。過去2年間は、『マイナビ』が『リクナビ』を上回る情報掲載社数となっていましたが、『マイナビ2017』の掲載社数1万7148社(3月1日現在)に対して、『リクナビ2017』の掲載社数は実に2万2640社と、5000社以上の差をつけて再び『リクナビ』が逆転しています。同日時点での2016年卒者向け就職ナビの情報掲載社数を確認してみると、『マイナビ2016』は2017年卒向けとほぼ等しい1万7434社であるのに対して、『リクナビ2016』は1万4147社にとどまっていますから、8000社以上も新しい会社情報を掲載したことになります。企業規模別に見てみると、「500人以上」の企業数はそれほど増えていないものの、「100~500人」規模で2000社以上、「~100人」規模では5000社以上も増えています。これまで大手企業向けサイトの印象が強かった『リクナビ』が、中小企業をもターゲットとしたサイトへと変貌したと言えます。

 2月の時点では、景気動向が堅調で企業の採用意欲はさらに旺盛になることが予想され、大学のキャリアセンター関係者の中には、就職活動を楽観視している学生が昨年以上に多いことに対する危機感を発信されている方も少なくありませんでした。それでも、のんきだった学生もこの日を機に就職活動をスタートした人が多かったことでしょう。就職ナビのオープンだけでなく、就職情報会社主催の合同企業セミナーなども一斉に解禁となりました。3月1~2日に千葉市の幕張メッセで開催されるリクルートキャリア『リクナビSUPER スタートアップ★LIVE』、大阪市のインテックス大阪で開催されるマイナビ『マイナビ就職EXPO』は、いずれも2日間で約4万人の来場学生を見込むとのこと。

 2015年卒採用までの「採用広報解禁 12月1日」の時代には、後期の授業期間の真っ最中ということもあり、就職情報会社主催の合同企業セミナーは土日開催に限定されていたものですが、昨年「採用広報解禁 3月1日」となってからは春休み中ということもあり、土日に縛られることなく、連日開催されている状況です。キャリアセンター主催の学内合同企業セミナーも同時に解禁となっており、“短期決戦”が叫ばれる中、採用担当者にとっては慌ただしい日々が続くことになります。

社員の協力がカギを握るセミナー・説明会

  さて、前回お知らせしましたように、今回は2016年卒者向けに開催された個別企業のセミナーや会社説明会で、学生に評判のよかった内容について見ていきたいと思います。これから本番を迎えるセミナーの参考にしていただければ幸いです。

 HR総研が2016年卒の学生を対象に行ったアンケートで、「印象のよかったセミナー・会社説明会」の実施会社を1人1社ずつ答えてもらったものになります。回答数の多かった上位の企業は[図表]のとおりです。学生との面談数が多い企業が上位に来ることはご了承ください。

 ここで上位に挙がった各社について、寄せられたコメントを紹介したいと思います。
第60回 いよいよ2017年卒採用が正式にスタート
●第1位 東京海上日動火災保険
・複数のセミナーに参加したが、どのセミナーにおいても、自社がどのようなDNAを持った会社なのか学生に伝わってくるよう工夫されていた(上位国公立大、文系)
・自分の会社のことだけでなく、就職活動について、そして人生の中における就職ということについても話をしてくださった(旧帝大クラス、文系)
・さまざまな職種の人に会うことができ、就職活動の幅を広げられたと感じている(上位国公立大、文系)
・さまざまな形式で複数回参加しても飽きなかった(早慶クラス、文系)
・人間の真摯さが伝わってきた。とても誠実(早慶クラス、文系)
・座談会がたくさんあったので(その他国公立、文系)
・多くの社員さんの話を聞けたため(旧帝大クラス、文系)
・ブランド力を感じられたから(早慶クラス、文系)
・人事の方が丁寧だった(中堅私立大、文系)
・就活に役立つグッズなどをいただくことができた(上位私立大、文系)

――「グッズ」については他にも評価する声がありましたが、同社は毎年実施しているようですね。

●第2位 損保ジャパン日本興亜
・体験型のセミナーがよかった(中堅私立大、文系)
・少人数制で、女性専用のセミナーもあり、本音でいろいろと聞くことができた(その他国公立大、文系)
・和やか。カフェ形式がよかった(上位私立大、文系)
・大学対象のセミナーや模擬面接を企画していたため(その他国公立大、文系)
・採用担当の方の印象がすごくよかった(上位国公立大、文系)
・仕事内容が違う多くの社員の方と話すことができた(中堅私立大、文系)
・堅くなく、リラックスできた(早慶クラス、文系)

――「カフェ形式」「和やか」といったコメントは複数の学生から寄せられました。大人数の堅苦しい講演形式のセミナーではない点が評価されているようです。

●第3位 全日本空輸(ANA)
・社員一人ひとりがすてきな笑顔で接してくださり、あらためてANAの偉大さを実感した(中堅私立大、文系)
・働いている社員が楽しそうだった(上位私立大、文系)
・社員の方々とお話しする機会を多く設けてくださっていたからです(上位私立大、文系)
・じかに社員の方とざっくばらんにお話しすることができる機会を設けていたから(旧帝大クラス、理系)
・人事の方の対応が優しかった(その他私立大学、文系)
・社員の方の何気ない会話が優しかった(早慶クラス、文系)

――セミナーに登場した社員の印象が、学生の志望度に影響を与えることが分かります。また、緊張した状態で参加している学生に対しては、人事や社員からの“何気ない”声掛けも効果的です。

●第4位 三菱東京UFJ銀行
・丁寧だった。時間をかけて丁寧に話してくれた。自分の経験などについても話してくれた(中堅私立大、文系)
・行員の方の雰囲気がよかった。あまりガツガツした雰囲気ではなく、落ち着いた雰囲気でした。仕事とプライベートを充実して生活していらっしゃることをお話しいただき、志望度が高まった(上位私立大、文系)
・セミナーの時間が余裕を持って取られており、クオンツ業務に関して十分に理解がはかどった(旧帝大クラス、理系)
・働くイメージがわきやすかった(上位国公立大、理系)
・何回もさまざまな職域でセミナーが開催されていた(上位私立大、文系)
・毎回ノートをもらえた(上位私立大、文系)
・学生にすごく気を遣っていたし、お客としてみていた。毎回ペンやお茶など粗品をもらえた(上位私立大、文系)

――こちらもノートやペンなどのグッズに言及する声が複数ありました。また、慌ただしい詰め込み型のプログラムではなく、時間的に余裕を持ったプログラム構成も考慮する必要がありそうです。

●第5位 NTTデータ
・説明会で行ったゲームが面白かった。また、そのゲームの中で、ビジネスモデルについて理解することができたから(旧帝大クラス、文系)
・NTTデータグループ合同説明会は、子会社の違いについて知るにはよかったです(中堅私立大、理系)
・会社説明会では社員への質疑応答の時間をしっかりと設けていただき、その社員の方々も多様であったため(旧帝大クラス、理系)
・人事の方の説明が分かりやすかった(中堅私立大、理系)

――「分かりやすさ」を挙げる声が複数ありました。「分かりやすさ」は、プレゼンターの話術によるところもあるでしょうが、伝え方の工夫次第でも大きく変わってくるものです。
  こうして見ていくと、説明会やセミナーにできるだけ幅広い職種の社員に登場してもらい、学生とのコミュニケーションが可能なプログラムがよさそうですね。企業側からの一方通行の講演形式では学生は受け身になりがちで、学生自身がセミナーに“参加した感”を持つことは難しいと言えます。ただ聞くだけでなく、参加者同士、あるいは学生と企業(人事・社員)の間でコミュニケーションが取れる仕掛けを用意して、学生に「聴講者」ではなく「参加者」になってもらうことが大切です。

 次回は、3月末に実施する採用担当者向け、就活学生向けの両調査結果について速報をお届けしたいと考えています。お楽しみに。
  • 1

この記事にリアクションをお願いします!