人員配置において業務負荷の高さは、課題の一つと言えるだろう。勘と経験に頼った人材マネジメントの効率の悪さを改善するためには、従業員データの適切な活用が必須だ。これらの課題を解決すべく、株式会社NTTドコモは2024年4月、人事AIレコメンド基盤「Job-Voyage」を社内向けにリリース。2万人超の社員と1万超のポストのAIマッチングを可能にし、人員配置の最適化と業務効率化を進めている。今回、その取り組みが評価され第10回 HRテクノロジー大賞にて「イノベーション賞」を受賞した。本記事では、総務人事部 人事戦略 担当部長 郡 康之氏と、同 人事戦略 HRTech担当の田中 宏昌氏にお伺いした取り組みの概要や課題のほか、社内からの反響やプロジェクトを通じた学びなどについてお届けする。

第10回 HRテクノロジー大賞『イノベーション賞』

株式会社NTTドコモ

人事AIレコメンド基盤「Job-Voyage」による最適配置と自律的成長支援

2万人超の社員と1万超のポストの大規模マッチングをAIで実現した革新的な人材配置システム。社員の希望・スキル・職歴を分析し、最適な異動先をAIが提案することで、個人のキャリア探索時間を大幅に短縮しつつ、組織全体の人材活用を最適化する画期的な取り組み。仕事と自身の理解を深め、公募等の挑戦促進など自律的キャリア形成へ寄与しているほか、年間約1,200時間の業務効率化を達成し、データドリブンな人事運営により適材適所と生産性向上を実現。人材マネジメントの高度化に寄与する優れた取り組みであると高く評価されました。

プロフィール

  • 郡 康之 氏

    郡 康之 氏

    株式会社NTTドコモ
    総務人事部
    人事戦略 担当部長

    株式会社NTTドコモに新卒で入社。人事運用、人事制度、給与制度など本社、地域支社の各人事セクションを経験し、2025年7月より 総務人事部 人事戦略担当部長に着任。
    AIファーストの人事業務に向けたHRシステム改革をリードし、人的資本経営の推進に取り組む。

  • 田中 宏昌 氏

    田中 宏昌 氏

    株式会社NTTドコモ
    総務人事部
    人事戦略 HRTech担当

    2018年にNTTドコモの先進技術研究所に新卒で入社し、AIや機械学習に関する様々なプロジェクトに参画。業務の傍ら組織論の工学的アプローチからの研究で博士号を取得。現在はその専門性を活かしてHR領域でのAIを用いたプロダクト開発をリード。

「人材の最適配置」と「社員の自律的成長支援」を実現――NTTドコモが取り組む人事AIレコメンド基盤「Job-Voyage」

AIが社員に向けて「ポスト」を、人事には「ポストに最適な人材」を提案

――はじめに、今回受賞された「人事AIレコメンド基盤『Job-Voyage』による最適配置と自律的成長支援」の取り組み概要を教えていただけますでしょうか。

郡氏:
我々は、社員の方々に成長や活躍の機会をより多く提供することが人事の役割だと考えていますが、多くの社員に対して人事担当が一人ひとりに最適な配置を決めるのは難しく、属人的な考えやバイアスが働いてしまう事実があります。これに対し、AIやデータを活用して多様な機会の提供を促進するというのが取り組みのコンセプトです。私がプロジェクトのマネジメントを担当し、システムの企画や構築は田中が中心となって実施しています。

人事AIレコメンド基盤「Job-Voyage」は端的に言うと、希望に合った人材または機会の情報をAIが提案するシステムです。人材の情報というのは、「スキル」や「経験・実績」、「行動特性」、「本人のキャリア形成における希望」などで、機会は、「職場」や「ポスト」、「研修」などの情報です。社員向けにはポストの提案、人事担当者向けには各ポストに適性がある社員を提案しています。今後は、社員に対して適切な研修や次に進むべき部署を対話型でレコメンドするという、AIエージェントの機能を付加する予定です。
「人材の最適配置」と「社員の自律的成長支援」を実現――NTTドコモが取り組む人事AIレコメンド基盤「Job-Voyage」

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