博報堂DYホールディングスは2025年8月4日、若手社員が経営層にAI活用を指南する、「AIメンタリング制度」の運用を開始したと発表した。同制度は経営層を起点とした全グループ社員のAI活用促進とエイジダイバーシティ推進を目的としており、AIを使いこなす現場社員のナレッジを経営に橋渡しする取り組みは、単なるデジタル教育の枠を超え、エイジダイバーシティや社内の相互成長にもつながる試みとして注目されている。

HRプロ会員なら、会員限定の記事や『HR総研』調査報告/そのほか多数のコンテンツが無料で利用可能!
<<メールアドレスだけの無料会員登録をする>>
経営層こそ“生成AIリテラシー”が鍵に──博報堂DYグループが若手主導の「AIメンタリング制度」を導入

若手が経営層を“指導”、AI活用の相互メンタリング制度を導入

生成AIの活用がビジネスの現場で急速に進むなか、企業の経営層がどれほどその変化に追いつけているかが問われている。

博報堂DYホールディングスが新たに導入した「AIメンタリング」は、生成AIの実践知を持つ若手社員がメンターとなり、経営層に対してツールの使い方や活用の工夫を指南する制度だ。単なる一方通行のレクチャーではなく、経営層は自らAIを操作し、業務との親和性を探る実践型のプログラムとなっている。

一方で、メンター側の若手社員は、経営層から経営視点や意思決定の知見を得られるため、相互補完的な成長機会が提供されている。メンターにはエンジニアではなく、営業、マーケティング、メディア担当など現場の第一線でAIを活用している人材が選出されているのも特徴だ。


HRプロ会員なら、会員限定の記事や『HR総研』調査報告/そのほか多数のコンテンツが無料で利用可能!
<<メールアドレスだけの無料会員登録をする>>

若手のAI活用力と経営層の実行力をつなぐ「現実的な打ち手」

今回の取り組みは、若年層ほどAIリテラシーが高く、経営層を含むミドル・シニア層との間に活用の“ギャップ”が存在するという実態を背景に生まれたものだという。

同社の先端AI研究機関「HumanCentered AI Institute(HCAI)」が実施した社内調査では、50代以上のAI活用度が1割程度にとどまっていることが明らかになっている。これに対し、若手は日常業務において生成AIを積極的に使いこなしており、その知見を経営レイヤーに伝える仕組みが必要とされていたようだ。

制度の導入により、同社の経営層の月間AI利用回数は3倍に増加。ツール活用による業務時間の短縮だけでなく、意思決定における新たな視点の獲得や、クリエイティビティの拡張といった副次効果も報告されている。

社内共有を通じて、組織全体のAI活用意識を底上げへ

同制度は単なるトレーニングにとどまらず、実施後には経営層の感想やAI活用の様子を動画にまとめ、社内で広く共有することで“AIは経営に不可欠”というメッセージを組織全体に浸透させていく狙いもあるという。

今後はテストケースにとどまらず、博報堂DYグループ全体へ制度を拡大予定。全社員のAIリテラシーの底上げと専門知識の獲得を推進し、マーケティング支援業務におけるAI実装の高度化を本格化させる意向だ。
業務効率化やクリエイティブの補助としてAIを使う動きは広がりつつあるが、それが本当に経営レベルでの変革につながるには、経営層自らが手を動かし、理解を深める姿勢が欠かせない。博報堂DYホールディングスの「AIメンタリング制度」は、若手の技術的知見と経営層の判断力を結びつけることで、組織全体をアップデートしていく取り組みの一例といえるだろう。今後、他社でも同様の“逆メンタリング”型のAI教育施策が拡がる可能性も高い。

出典:https://www.hakuhodody-holdings.co.jp/news/corporate/2025/08/5771.html


【「人材育成・研修」関連ニュースを一覧でチェック】
●人材育成・研修全般の人事トレンドニュース一覧

HRプロ会員なら、会員限定の記事や『HR総研』調査報告/そのほか多数のコンテンツが無料で利用可能!
<<メールアドレスだけの無料会員登録をする>>

この記事にリアクションをお願いします!